【ヴィクトリアM】「本当にえらい馬」国内G1・2勝目のアスコリピチェーノ、黒岩調教師は安田記念参戦を示唆
2025年5月19日(月)6時0分 スポーツ報知
ゴール寸前で差し切り、G1・2勝目を挙げたアスコリピチェーノ(手前、カメラ・高橋 由二)
◆第20回ヴィクトリアマイル・G1(5月18日、東京競馬場・芝1600メートル、良)
第20回ヴィクトリアマイル・G1(東京)は18日、1番人気のアスコリピチェーノが直線ほぼ最後方から前をひとのみ。際立つ切れ味で接戦を制し、23年の阪神JF以来となるG1・2勝目を挙げた。クリストフ・ルメール騎手(45)=栗東・フリー=は今年初のG1勝利で、牝馬限定G1単独最多となる18勝目となった。
行き脚がつかず最後方になったアスコリピチェーノの姿が映し出されると、スタンドからはどよめきが起きた。府中の坂に入ってもまだほぼ最後方。快調に飛ばすアリスヴェリテの手応えの良さに、一時はG1・2勝目に黄色信号と思われたが、ここからが真骨頂だった。
残り1ハロン付近でようやくエンジン点火。前を行く10頭以上を一網打尽にする末脚で2着クイーンズウォークをわずかに首差とらえた。ルメールは「直線では何回か手前を替えてトップスピードになるのに時間がかかったね。今年はこの馬とG1を勝ちたいと思っていたのでよかった。よく頑張ったし、メンタルが強い」と最後まで諦めなかった愛馬に賛辞を贈った。
「あの位置からどれだけ巻き返せるかと、馬の力とルメールさんを信じて、祈るような気持ちしかありませんでした」と黒岩調教師。道中は得意ではない水を含んだ馬場の影響もあって進みが悪く、ポジションを上げることができなかった。陣営も勝利を確信できた瞬間はゴール前だけだった。
前走はサウジアラビアの1351ターフスプリント(芝1351メートル)を快勝。短距離を使った影響も心配されたが、「帰厩当初に今までより気負う面がなくて、やはり本来はマイルの馬だと思った」と指揮官。14日の追い切りでは美浦・Wコースで6ハロン79秒1—11秒2と攻めた調教を施し、春の目標に定めた舞台できっちりと結果を出した。担当する鈴木助手も「海外遠征後とか特に気にすることはなかったです。本当にえらい馬です」。厩舎のJRA通算200勝というおまけもついた。
ルメールはヴィクトリアマイル歴代最多の4勝目。過去に手綱を執ったアーモンドアイ(国内外G1・9勝)やグランアレグリア(国内G1・6勝)を引き合いに「あの2頭と比べたら同じレベルとは言えないけど、アスコリピチェーノはトップマイラー」と評価した。前走で海外を克服し、今回は国内G1・2勝目と今後の選択肢は多い。黒岩調教師は体調次第としながらも安田記念(6月8日、東京)参戦を示唆。牡馬との一戦で国内マイル最強を証明する。(浅子 祐貴)
◆アスコリピチェーノ 父ダイワメジャー、母アスコルティ(父デインヒルダンサー)。美浦・黒岩陽一厩舎所属の牝4歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算成績は9戦6勝(うち海外2戦1勝)。総獲得賞金は5億8830万6500円(うち海外1億9131万1500円)。主な勝ち鞍は阪神JF・G1、新潟2歳S・G3(ともに23年)、京成杯AH・G3(24年)、1351ターフスプリント・G2(25年)。馬主は(有)サンデーレーシング。
◆アスコリピチェーノの主な記録
▽前走1着馬の勝利 08年エイジアンウインズ以来(前走阪神牝馬S)。昨年まで前走1着馬は【14458】と不振だった。
▽前走海外を使った馬の勝利 09年ウオッカ(ドバイ・デューティフリー=7着)、10年ブエナビスタ(ドバイ・シーマクラシック=2着)、23年ソングライン(1351ターフスプリント=10着)に続く4勝目。
▽ダイワメジャー産駒の古馬でのJRA・G1勝利 14年3月高松宮記念(コパノリチャード)以来2勝目。4歳5月での勝利は最も遅い。
▽4角15番手からの勝利 史上初。これまで最も後ろの位置から勝ったのは10年ブエナビスタの4角12番手。17番枠からの勝利も初。