「僕たちのことだけ考えよう」順位ダウンを回避すべくピットインを懇願したルクレール【F1第7戦無線レビュー(2)】

2025年5月23日(金)12時29分 AUTOSPORT web


 2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP。レース前半にはエステバン・オコンがストップしたことでバーチャルセーフティカーとなったが、後半に入ってアンドレア・キミ・アントネッリが止まると、セーフティカーが出動した。するとこのタイミングでのピットストップをめぐり、フェラーリでは激しいやり取りが繰り広げられた。エミリア・ロマーニャGP後半を無線とともに振り返る。


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 レース中盤の33周目、ルイス・ハミルトン(フェラーリ)は7番手まで順位を上げ、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)を追う展開だった。


ハミルトン:ここでフィードバックもらえると嬉しいかな。
リカルド・アダミ:コーナー進入を少し早めに。ペースはいいぞ。


 そして34周目にアントネッリを抜いて、6番手に上がった。


アダミ:P6だ。素晴らしい。コース上で一番速いドライバーだ。



2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP ポジションを争うルイス・ハミルトン(フェラーリ)とアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)

 ハミルトンと初めて組んだ担当エンジニアのアダミ。最初は噛み合わないことも多かったが、少しずつコンビの体をなしてきた感じだ。


 ハミルトンはさらに、アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)を射程距離に捉えていた。


35周目
ピエール・アムラン(→アジャ):オーバーテイクを仕掛けてくるぞ。モード8でバッテリーを使おう。


 しかしあっさりと抜かれていった。


アダミ:P5だ。最高だ。
ハミルトン:この2台を抜くのに、だいぶタイヤ使ったけどね。



2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP ルイス・ハミルトン(フェラーリ)がアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)をオーバーテイク

 この時点でアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は表彰台圏内の3番手を走行していた。しかし30周目にニュータイヤに履き替えたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)が、1周1秒近く速いペースで猛追し、あっという間に1秒以内に迫ってきた。


39周目
ジェームズ・アーウィン:ピアストリがDRSを使ってくるぞ。
アルボン:わかっている。ブレーキングで刺されそうだ。


 アルボンはなすすべもなく抜かれ、4番手に後退した。


トム・スタラード(→ピアストリ):グッジョブ。P3だ。


 後方ではハードタイヤでステイアウトしたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がジリジリと順位を落とし、44周目には13番手まで下がっていた。


クリス・クローニン:チェッカーまで22周あるが、VSCが出たらミディアムに履き替える。
アロンソ:これは拷問だよ。世界で最高に不運なドライバーだ……。作戦が全然うまく行ってない。セーフティカーが出ても、何も助けにはならないよ。
クローニン:いろいろな可能性を考えている。まだ諦めないぞ。





 45周目、8番手を走っていたアントネッリがトラブルに見舞われた。


アントネッリ:問題が出た。
ピーター・ボニントン:了解。スロットルコントロールを失ったようだ。





アロンソ:セーフティカーでも赤旗でも、何でもいい。早く出てくれ。


 レース前半でのエステバン・オコン(ハース)のリタイアの際にはバーチャルセーフティカー(VSC)だったが、今回はセーフティカー(SC)が導入された。


ジャンピエロ・ランビアーゼ:セーフティカーが出た。
マックス・フェルスタッペン:なぜ今回はセーフティカーなんだ?
ランビアーゼ:よくわからない。



2025年F1第7戦エミリア・ロマーニャGP アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)がストップし、セーフティカーが出動

 アロンソと担当エンジニアのクローニン、そしてシャルル・ルクレール(フェラーリ)とブライアン・ボッツィの間で、ピットインすべきか激しいやり取りが行われた。


クローニン:ステイアウトだ。
アロンソ:いや、ボックスだろう。
クローニン:今入ったら、渋滞にハマる。
アロンソ:このままだと周回遅れだ。ボックスだろう。
クローニン:いや、ステイアウトだ。


ルクレール:タイヤ交換した方がよくないか。
ボッツィ:いや、ステイアウトだ。最後まで走り切れるタイヤがない。
ルクレール:ソフトでいいだろう。
ボッツィ:まだ17周あるんだぞ。17周だ。
ルクレール:ミディアムで何周走った?
ボッツィ:11周だ。


ルクレール:僕らにはソフトのニュータイヤがあるよね?
ボッツィ:ハミルトンはまだピットインしない。
ルクレール:そんなことはどうでもいい。僕たちのことだけ考えようよ。
ボッツィ:確かにソフトの新品がある。それにしたいのか? 今すぐ答えてくれ。
ルクレール:イエスだ。
ボッツィ:よし、ボックスだ。いや、待つんだ!
ルクレール:どうして?! ルイスはピットインしたよね? だったらその後ろで待って、ポジションを失いたくないんだけど。
ボッツィ:わかった。ステイアウトだ。





 結局アロンソは主張を通して46周目にピットイン、ルクレールはステイアウトとなった。今回もそうだったが、ボッツィは自分で最適解を判断するより先に、まずルクレールの希望を聞く傾向がある。多くの場合、状況をより広くわかっているのは担当エンジニアのはずなのだが。


 54周目、ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)を攻め続けた角田裕毅(レッドブル)が、ミスの誘発に成功し10番手に上がった。


リチャード・ウッド(→角田):いい感じだぞ。


 この時点でピアストリは2番手まで上がっていたが、46周目にタイヤ交換したランド・ノリス(マクラーレン)にみるみる差を詰められていた。


ノリス:チームメイトのタイヤ、ちょっと古いよね。スワップを要求してるわけじゃないけど。


 58周目、ノリスがピアストリを攻略し、2番手に上がった。





スタラード(→ピアストリ):あと5周。後ろにいるのはルクレールとアルボン。アルボンはニュータイヤだ。


 60周目、アルボンはルクレールに仕掛けるがグラベルに押し出され、ハミルトンにも抜かれていった。


アルボン:フェアじゃない!
アーウィン:同感だ。タイヤは大丈夫だ。


 ハミルトンは次の周にはルクレールをかわし、4番手に上がった。


アダミ:表彰台のポテンシャルがあるぞ。
ハミルトン:あと何周だ?
アダミ:3周だ。


 確かにピアストリよりペースはよかったが、この時点で2秒以上離れていた。3位表彰台を口にしたのは、ハミルトンへの励ましと取るべきだろう。


 ここでルクレール陣営で、最後のドタバタが発生した。


62周目
ボッツィ:アルボンに順位を譲るんだ。ペナルティを取られないように。
ルクレール:これはジョークだよ。何か悪いことをしたのか?





 納得のいかないルクレールだったが、最終周に6番手に下がった。しかしスチュワードは、ルクレールとアルボンの攻防はお咎めなしの裁定を下した。


 そしてフェルスタッペンが第3戦日本GPに次ぐ今季2勝目を挙げた。


ランビアーゼ:ナイスジョブだ。
クリスチアン・ホーナー代表:レッドブル400戦目を勝利で飾ってくれたね!
フェルスタッペン:素晴らしい週末だったよ。





 12番グリッドから4位まで上がったハミルトンも、歓喜を隠しきれない。


ハミルトン:クルマも戦略も最高だった。(イタリア語で)みんな、ありがとう!!





 ルクレールも6位入賞を果たしたとはいえ、ハミルトンのように喜んでいないのは明らかだった。

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