井上尚弥の“誘い”を蹴ったグッドマン 母国メディアは陣営の判断を称賛「状況は実にシンプル。12月に日本のスターとやる」

2024年5月30日(木)7時0分 ココカラネクスト

井上との対戦が流れたグッドマン。その決断は賛否両論を巻き起こしている。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 実現まで秒読み段階と見られていた交渉は暗礁に乗り上げた。

 現地時間5月28日、ボクシングのIBF&WBO世界スーパーバンタム級1位に立つサム・グッドマン(豪州)は、来る7月10日にWBC同級8位のチャイノイ・ウォラウト(タイ)と調整試合を行うと正式発表。9月の対戦が有力となっていた世界4団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥(大橋)とのタイトルマッチは、事実上実現不可能な事態となった。

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 急転直下で事態は覆った。

 グッドマンは陣営を引き連れ、井上が5月6日に東京ドームで実施した世界2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)との防衛戦を来日して視察。リングに招かれた試合後には6回TKOとドラマチックな勝利を飾った“モンスター”の前に立ち、「(試合を)やろう。あんたはベルトを返上するか、俺と闘うかだ」と挑戦状を叩きつけていた。

 井上陣営と水面下で交渉を続けていた豪興行大手『No Limit Boxing』のジョージ・ローズ氏も、「今は日付の調整をしている段階だ。彼(グッドマン)のキャリアの中で最大の給料を得る日になる」と声高に話していた。

 9月開催という条件付きではあったものの、王者側が“ゴーサイン”を出している。そんな状況で、グッドマン側は7月開催を譲らず。母国で開催される今回の興行を優先する判断をした。

 無論、「もう1試合必要だった」という本人を含めてグッドマン陣営は井上戦実現の望みは捨てていない。さらに井上のプロモートにも携わる米興行大手『TOP RANK』のボブ・アラム会長も「サムの態度には感銘を受けた。彼は年内のどこかでイノウエとやる」と公言。12月にサウジアラビアの王族で、娯楽庁の長官であるトゥルキ・アラルシク氏が主催するサウジアラビアの興行で対戦する可能性が囁かれている。

 ゆえにグッドマンの母国メディアは、井上の誘いを蹴る決断を「貴重な準備期間」として好意的に捉える。日刊紙『Herald Sun』は「俺は他の連中みたいに、ただただイノウエと戦うためにここにいるわけではない。勝つためにここにいるんだ」という本人の強気なコメントを紹介したうえで、「グッドマンが置かれた状況は実にシンプルだ。7月にタイのKOアーティストを倒せば、12月に日本のスーパースターとの対戦権を得る」と指摘した。

 グッドマンが7月の試合を決めたことで、井上の次期防衛戦の相手は、大橋ジムとの関係も深まっている元IBF世界同級王者のテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)が有力となった。ただ、彼も37歳と最盛期は過ぎている。2団体で1位に立ち、着実な成長曲線を描いてきている25歳の豪戦士と比べると役不足の感は否めない。

 さらに言えば、12月の対戦も実現するのかは不透明だ。

 豪メディアは対戦が「決定的」という見方を崩さないが、フェザー級の戦士たちからも熱視線を向けられる井上には、前WBA&IBF世界同級王者で、WBA1位に立つムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との対戦にも関心が注がれる。そうしたなかで筆頭候補者から一歩後退したグッドマンに手が差し伸べられるかは分からない。

 ウォラウトとの試合に向けた会見で「俺は『弱い』と思う奴とは戦わない」と漏らしたグッドマン。もし、断行した“調整試合”で足元をすくわれるようなことがあれば、井上戦の夢は夢のまま終わってしまうのは間違いない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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