WRC史上初の3カ国開催イベントがチェコで開幕。ヌービルがデイ1首位、タナクが続き勝田は6番手
2023年10月27日(金)13時5分 AUTOSPORT web

10月26日、WRC世界ラリー選手権第12戦『セントラル・ヨーロピアン・ラリー』の競技初日“デイ1”が行われ、ヒョンデ・シェル・モビスWRTのティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組(ヒョンデi20 Nラリー1)が総合トップに立った。日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は首位と10.1秒差の総合6番手につけている。
ドイツ、チョコ、オーストリアという隣接する3つの国を跨いで開催されるセントラル・ヨーロピアン・ラリーは、半世紀の歴史を持つWRCでも史上初の試みとなる3カ国開催イベントだ。このターマック(舗装路)ラリーの拠点となるサービスパークはドイツ南東部の都市パッサウに置かれ、25日に行われたシェイクダウンもパッサウ近郊で実施されている。
一方、26日のセレモニアルスタートはWRC初開催となるチェコの首都プラハで行われ、選手たちはそのまま同国の競馬場内に設定されたSS1“ヴェルカー・チュクレ”に臨んだ。
ターマックと一部がグラベル(未舗装路)のミックスサーフェスとなったSS1でトップタイムをマークしたのは、前戦チリで今季2勝目を挙げたオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)だ。今季限りでのMスポーツ離脱を発表している2019年王者は、ライバルたちとは異なるソフトタイヤ4本の選択でオープニングを制し総合トップに。0.7秒差の総合2番手にトヨタのセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)、さらにコンマ3秒おくれてヌービルが続いた。
日没直前からのスタートなったSS2“クラトビー”は小雨が降り始めるなかでの実施に。ここでもタイヤ選択が分かれ、結果的にはウエットタイヤではなくドライ用のソフトタイヤを選んだクルーが正解を引き当てた。このステージで全体ベストを刻みタナクを逆転したヌービルは、最後の最後までタイヤチョイスに頭を悩ませたという。
彼は湿り気を帯びた全長8.92kmのアスファルトステージを走破したあと、「最高のステージではなかった」と語った。
「(状況的には)ウエットとソフトタイヤの中間のような感じだったと思うけど、最後の最後でソフトにしたんだ。アンチカット装置が(ライトの)光を反射するせいで(コースが)よく見えなかったけど、クリーンな走りができたと思う」
SS1と同様にソフトタイヤを選択したタナクは総合順位をひとつ落としたものの、来年ふたたびチームメイトとなるベルギー人とのギャップは、わずか1.2秒だ。SS2でトップから6.1秒おくれ、総合では5.8秒差の3番手となったオジエはウエットタイヤでの走りに不満を漏らした。
「いいフィーリングではなかった」と8冠王者。「2本目のステージは暗く、いいリズムを感じることができなかった。明日の朝は、もっといいフィーリングを得られるように努力しなければならない」
■タイトルを争うエバンスがSS2でオーバーシュート
そのオジエの後方には、現王者であり今大会でシリーズ2連覇を決める可能性をもつカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)がコンマ1秒差で続き、SS2で23歳のチャンピオンに逆転を許したテーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー1)が総合5番手に。
今大会は非ワークスノミネートとなる勝田は、スニネンと1.8秒差の総合6番手で初日を完走。0.3秒後方にはベンジャミン・ヴェイラスとの新コンビで登場したピエール-ルイ・ルーベ(フォード・プーマ・ラリー1)が続き、さらにコンマ3秒差の総合8番手に選手権ランキング2位につけているエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が入った。ウェールズ出身のドライバーはSS2のジェンクションでオーバーシュートがあり、若干のタイムロスを喫している。
トップから13.6秒おくれての総合9番手となったエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)はSS1でのジャンプスタートが悔やまれる結果に。この件での10秒ペナルティがなければ3番手につけていたためだ。トップ10リザルトの最後のスロットに入ったグレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマ・ラリー1)はハンドブレーキの不具合によってタイムを失い、デイ1終了時点でトップから15秒の後れを取っている。
10月27日(金)の競技2日目は、パッサウのサービスパークを起点にSS3からSS8までの計6ステージすべてがチェコの国内で行われる。このデイ2は、各3本のステージを走行する午前と午後のループ間にミッドデイサービスは設定されず、選手たちはタイヤフィッティングゾーンでの作業だけで合計121.80kmの競技区間を走り抜けなければならない。大会最長の一日であるこの日はリエゾン(移動区間)を含む総走行距離も524.13kmと長距離の移動が待っている。