金丸夢斗を引き当てた中日は“充実”のA評価 こだわりを見せた巨人とDeNAの指名には“疑問”も【24年ドラフト総括/セ・リーグ編】
2024年10月27日(日)6時0分 ココカラネクスト

1年目から2桁勝利を期待できる金丸。この左腕を巡る複数球団による競合を制した中日は大いに評価できる。(C)産経新聞社
派手さはなかった阪神への評価は?
10月24日に行われたドラフト会議。昨年に続いて今年も抽選による1位指名が多く、会場は大きな盛り上がりを見せたが、果たして良い指名ができた球団はどこだったのか。
将来性、即戦力、補強ポイントにマッチしていたか。その3点をA、B、Cの3段階で採点してみたいと思う。今回はセ・リーグの6球団についてだ。
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【巨人】
将来性:B
即戦力:B
補強ポイント:C
昨年は支配下で大学生2人、大学卒の社会人3人という即戦力に振り切った指名を見せた巨人。今年は1位指名で金丸夢斗(関西大)を外してから方針転換。高校生ナンバーワン野手の呼び声高い石塚裕惺(花咲徳栄)を指名した。今ドラフトで即座に1軍で通用するという本当の意味で即戦力と言える投手は、金丸と中村優斗(愛知工業大)くらいしかいないことを考えると、この指名は理解できる。
2位では大学球界屈指のショートである浦田俊輔(九州産業大)、3位でも強打者タイプの荒巻悠(上武大)を指名し、野手の底上げに成功。ただ一昨年は門脇誠、昨年は泉口友汰に続く3年連続の即戦力候補となるショートの指名で、さらに中山礼都もいることを考えると浦田というチョイスは少し疑問が残る。二遊間をどう整理していくかが、今後は重要になるだろう。
【阪神】
将来性:B
即戦力:B
補強ポイント:B
巨人と同様に1位で金丸夢斗(関西大)を外した阪神は、同じ左腕で社会人屈指の実力者である伊原陵人(NTT西日本)を指名。2位では高校ナンバーワン投手の今朝丸裕喜(報徳学園)、3位では社会人の本格派右腕の木下里都(KMGホールディングス)と投手を充実させる結果となった。
昨年も投手指名は大学生、独立リーグ、社会人の選手だったことを考えると、もう少し高校生を狙っても良かったように見える。だが、素質十分の今朝丸を指名できた結果から将来性をBとした。4位と5位ではレギュラー格の不調が目立ったキャッチャーとショートを指名。ともに独立リーグの選手という点は意外だったが、危ういポイントを補った対応という意味では理解できる。全体的に派手さはないものの、ハッキリと強化ポイントを押さえた指名だったという印象だ。
【DeNA】
将来性:C
即戦力:B
補強ポイント:B
1位で金丸夢斗(関西大)を外しても「即戦力」にこだわった指名を展開した印象だ。
ただ1位の竹田祐(三菱重工West)は大学卒3年目で力をつけたものの、いきなり一軍のローテーションで活躍できるかは疑問。2位の篠木健太郎(法政大)についてもなかなか勝ち切れない試合が多く、同様のことが言える。また、4位の若松尚輝(高知ファイティングドッグス)、6位の坂口翔颯(国学院大)も一軍のレベルに到達するには、ある程度の時間がかかるように思える。
投手陣が苦しいというチーム事情はあるが、上位指名のどちらか1人は将来性を見越した高校生を狙っても良かったのではないだろうか。育成ドラフトで高校生3人を指名して補っているという意見もありそうだが、育成から戦力となる道のりはなかなかに険しく、過剰な期待はかけづらい。早く使える投手にこだわるあまり、少し近視眼的な指名となった印象を受けた。

金丸競合を避け、同じく即戦力の中村の単独1指名に成功したヤクルト。この戦略も見事だった。(C)産経新聞社
金丸の指名権を得た中日は文句なしのA
【広島】
将来性:B
即戦力:B
補強ポイント:B
1位では指名を公言していた宗山塁(明治大)を外したが、続いて指名した佐々木泰(青山学院大)は貴重な右の強打者タイプ。長打力不足に悩むチーム事情からも補強ポイントにはマッチした指名だったように感じる。2位では大学生屈指の左腕である佐藤柳之介(富士大)を指名。佐々木と佐藤については1年目から一軍の戦力になる可能性も秘めている。
ただ3位から5位で指名した3人についてはいずれも順位が1つずつ高いように感じた。3位の岡本駿(甲南大)は大学生ながら3年目くらいに戦力になり得るという印象で、5位の菊地ハルン(千葉学芸)も典型的な未完の大器タイプ。4位の渡辺悠斗も打撃は魅力だがまだ粗さが残るためプロでは苦労する可能性は小さくない。補強ポイントはある程度抑えたものの、全体的にはややリスクも高い指名のように見えた。
【ヤクルト】
将来性:B
即戦力:A
補強ポイント:B
何よりも大きいのは中村優斗(愛知工業大)を単独1位指名だ。試合終盤にも150キロ台中盤をマークする球速は間違いなくアマチュア球界でトップ。痛打を浴びて失点するケースが目立ち、投げる以外のプレーにも不安はあるが、1年目から先発としてイニングを稼ぐ計算は十分にできる。
また3位の荘司宏太(セガサミー)も球威と決め球のチェンジアップのコンビネーションは抜群で、リリーフとして1年目から期待できる。また、将来性で大きいのが2位のモイセエフ・ニキータ(豊川)。打者としてのスケールの大きさは今年の高校生でもトップクラスだ。もう少し高校生投手にも目を向けても良かったが、ある程度狙い通りの指名ができたと言えそうだ。
【中日】
将来性:B
即戦力:A
補強ポイント:A
1位で4球団が競合した金丸夢斗(関西大)を見事に引き当てた。春に痛めた腰の影響で秋はリリーフでの登板に終わったのは少し不安だが、実力については疑いようがないレベルにある。コンディションさえ整えば、1年目から2桁勝利も期待でき、それだけでも即戦力はA評価をつけられる。
2位の吉田聖弥(西濃運輸)は高卒4年目で金丸と学年は同じだが、活躍したのは今年だけであり、“準”即戦力と印象を受ける。ただフォームに目立った欠点がなく、将来性の高さも感じられるのも魅力だ。
下位指名の高校生投手2人も将来性は豊かで、まず補強したかった投手についてはほぼ満点をつけられる。また3位の森駿太(桐光学園)は左の強打者、4位の石伊雄太(西濃運輸)は早くから使える捕手ということで補強ポイントにもマッチしている。12球団でも最も狙い通りの指名だった。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。