BMWのLMDhプログラムは、元フォーミュラEとDTMのスタッフで構成。80〜100人が“失業”を免れる

2021年10月28日(木)11時47分 AUTOSPORT web

 BMW Mモータースポーツのディレクター、マイク・クラックによれば、BMWのLMDhプログラムは同社がかつてファクトリー・プログラムとして取り組んできたABB FIAフォーミュラE選手権とDTMドイツ・ツーリングカー選手権に携わったスタッフによって、サポートされるという。


 ドイツ・ミュンヘンを拠点とするBMWは、ベースシャシーのコンストラクターであるダラーラと協力し、2023年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権で走らせるLMDh車両を開発している。


 BMWは、クラス1車両からGT3車両によるシリーズへと2021年に生まれ変わったDTMに引き続き参戦しているものの、かつてのファクトリーチームではなく、インディペンデントチームによる運営に代わっている。


 また、同社はアンドレッティ・チームへのパワートレイン供給は続けているが、2020/2021シーズン限りでフォーミュラEへのワークス参戦を終了している。


 今年9月、元DTMプログラムのボスであるマウリツィオ・レスキウッタがLMDhのプロジェクトリーダーに指名されたが、開発チームの残りの陣容については、これまで明らかにされていなかった。


「DTMとフォーミュラEを止めてからも、BMWにはまだたくさんの優れた人材がいる」とクラックはSportscar365に対し語っている。


「我々はこのふたつのグループからリクルートした。また、一部の人員を解雇する必要があり、人数を削減した。LMDhプログラムのスタッフは、主にフォーミュラEからのもので、何人かはDTMをバックグラウンドに持つ」


「M6に関わっていたGTのスタッフは、M4(GT3)の開発を続けていたので、そのスタッフを連れ出すことはできなかった。今後は新しいGT4も登場するので、彼らはそこに留まらなければならない」


「ただ、完全に分離されているわけではない。人員の交流は重要だが、我々が学んだのは、フォーミュラEがLMDhのハイブリッド時代にとって良い方向性を与えてくれる、ということだ」


 プロトタイプのプログラムを立ち上げることによって、BMWはファクトリー・レーシングスタッフの大部分を維持することができた。プログラムに関するドキュメンタリー・シリーズの第2話において、BMW Mのマーカス・フラッシュCEOは、同社の取締役会が夏の始めに行ったLMDhの提案を拒否した場合には、「さらに80〜100人を手放さなければならなかった」と説明していた。

2020/21シーズンのフォーミュラEでは、マキシミリアン・ギュンターとジェイク・デニスを起用したBMW i アンドレッティ・モータースポーツ


 クラックによる概算では、スタッフのおよそ4分の3がフォーミュラEから来ており、残りがDTMからであるという。


「フォーミュラEでは、シャシーにコア・デザインはない。シャシーはただ、外から入手するものだ」とクラックは語っている。


「だから、我々はリヤエンドのパワートレインに開発の照準を絞っていた。LMDhにおいては、BMWのスタイリング要素を用いたシャシーのコア・デザイン、そしてボディワークのコア・デザインが必要だ」


「これは、(フォーミュラEとは)ちょっと異なるものだ。一定の比率を設定しているわけではないが、すべて以前のプロジェクトに携わった人々で構成されている」


 BMWは、2022年の半ばに新型プロトタイプマシンをロールアウトすることを目標にしている。このような短期間での開発について、クラックは“エラー”の余地がほとんどないことを認めている。


 2023年からル・マン・ハイパーカー(LMH)あるいはLMDhカテゴリーに参加することを表明したのは、時系列でアウディ(2020年11月)、ポルシェ(同12月)、アキュラ(2021年1月)、フェラーリ(同2月)、BMW(同6月)、キャデラック(同8月)という順番であり、BMWは2番目に発表タイミングが遅い。


「エンジンの準備、ロールアウト、ヨーロッパでのテスト、そして最初のレースがデイトナとなることから、アメリカでのテストなどについて、それぞれをいつ行うかという計画がある」とクラックは述べている。


「そこから逆算しなければならない。ホモロゲーション期間について変更しなければならなかったが、シャシーの設計プロセス全体はスケジュールどおりに進んでいる。これはダラーラとの共通計画だ」


「CFDでは多くの作業がなされてきた。風洞テストも始まっている。そういった観点では、オンタイムに進んでいる。ただ、時間的には本当にタイトで、大きなマージンはない。もし問題が発生した場合には、すぐに時間が問題となる」


「たとえばスペック(共通)パーツの納品や機能など、予測できないものもあると思う。ただ、他のマニュファクチャラーがすでに使っているものでもあるので、それが(開発スケジュールに)大きなリスクを及ぼすと言ってるわけではない」


「ポルシェは今年、マシンをロールアウトするようなので、彼らは多くの問題を取り除くだろう。だが、ギヤボックやハイブリッドシステムの納品にわずかでも遅れが生じるような場合は、もっとも厳しいスケジュールとなり、もっと大きな影響を我々とすべての関係者に及ぼすことになるだろう」


 DTMにおける元ファクトリーチームであるRMGは、現在開発中のBMW M4 GT3の場合と同じく、LMDh車両におけるヨーロッパでの開発とテストをサポートする予定となっている。BMWは現在のところフル参戦という観点では(北米シリーズである)IMSAのみにコミットしているため、RMGが将来LMDhでレースに出場するかどうかは不明だ。

2020年まで、クラス1規定車両でレースが行われていたDTM。このワークスプログラムを経験したBMWのスタッフもLMDh開発に携わっている


 ただし、将来のル・マン24時間レースとWEC世界耐久選手権への参戦可能性は排除されておらず、BMWはLMDh車両がこれらのイベントに出場することを望んでいるものと理解されている。


 しかしながらクラックは、ACOフランス西部自動車クラブがWECへのフルシーズン参戦車両のみに対してル・マンへの参加を許可する可能性について「注意しておく必要がある」と示唆している。


「(ル・マンに)参加するためには、おそらくまずはWECフルシーズン参戦をしなければならず、おそらくは2年間、きちんとした形で参戦しなければならない」


「だが、我々はそれを無理矢理やりたくはない。強制されるのであればそこに参戦しなければならないが、いい仕事はできない。我々はM8 GTEから教訓を学んだ。もしフル参戦するのであれば、我々はそれをきちんとやりたいのだ」


「以前は、IMSAとWEC/ル・マンの両方にきちんとした形でできるかどうか分からなかったので、『OK、まずはIMSAを最初にやる』と言った。いまは、どこかで決断しなければいけない段階に来ている」

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