伏兵現る。ライバルを驚かせたアルピーヌとBMW、イモラでの今季初表彰台に導いた戦略の妙
2025年4月21日(月)19時50分 AUTOSPORT web

BMWとアルピーヌは、4月20日(日)に行われた『イモラ6時間レース』において、それぞれ最後から2番目のピットストップを短縮するという戦略的決断が、WEC世界耐久選手権でともに今季初となった表彰台獲得の決め手になったと語った。
レネ・ラスト、ロビン・フラインス、シェルドン・ファン・デル・リンデのトリオは、イモラ・サーキットでの今季第2戦で20号車BMW MハイブリッドV8を駆り、優勝した51号車フェラーリ499Pに次ぐ総合2位を獲得。フレデリック・マコウィッキ、ジュール・グーノン、ミック・シューマッハー組の36号車アルピーヌA424は3.960秒差で3位に入った。
前述のとおり両ブランドにとって、これは2025年シーズン初のトップ3フィニッシュであり、いずれも昨年の富士6時間レース以来のポディウム獲得となっている。
レース後の会見でBMW MチームWRTのラストとアルピーヌ・エンデュランス・チームのグーノンは、それぞれのチームが最後から2番目のフューエル・ストップを短縮するという決断を下したことにより、トラックポジションを上げると同時に軽量なマシンでさらなる挽回を図ることができたと説明した。
「それが目標であり、今日の成功のカギだったと思う」とベテランのラストは語った。
「シェルドン(・ファン・デル・リンデ)が全開でプッシュし、他のドライバーをアンダーカットしていた最後から2番目のスティントが非常に良かった。そのおかげで良い結果を得ることができた」
A424をドライブしたグーノンもアルピーヌを代表して同様の説明を行い、タイトで曲がりくねったエミリア・ロマーニャのサーキットではオーバーテイクが困難だったため、フランスのチームがこのアプローチを選択したと述べた。
「チームは、『このコースではトラックポジションが重要』と考えたということだ」とグーノン。
「自分より1秒遅いクルマの後ろに張り付いていたとしても、ここでは追い抜くことはできない。そこで、最後のスティントを短く2回に分けて走ることにした。いずれにしても1スティントでは最後まで燃料が保たないことは明白だったためだ」
「フル給油して最後に飛ばすのではなく、18周と24周を走るようにした。そうすることでマシンが非常に軽くなった」
「僕たちのクルマは、一般的なフューエル・ストップを行った他のマシンと比べて軽かったので、この2スティントで素晴らしいペースを維持することができた。それがリカバリーできた理由だ」
グーノンはまた、残り38分でのセバスチャン・ブエミとアントニオ・フォコの接触も表彰台に立てた要因のひとつだと指摘した。この接触は8号車トヨタGR010ハイブリッドと50号車フェラーリ499が別の戦略でレースをリードし、表彰台争いにも加わっていた際に発生した。タンブレロで両者が接触したのだ。
「トヨタとフェラーリのバトルは、言うまでもなく僕たちにとって大きな助けになった」と彼は語った。
「我々は彼らとバーチャルでバトルをしていたし、彼らも激しくバトルをしていた。そして接触があったからこそ、僕たちは彼らをパスすることができた」
注目すべきは、アルピーヌの表彰台獲得への戦略的なルートがBMWとは重要な点で異なっていたことだ。36号車はソフトコンパウンドタイヤを多用していた。
「僕のスティントもそうだったが、基本的に我々が最初にソフトタイヤを履いたチームだった」とグーノンは語った。
「他の皆がミディアムタイヤを履いているなか、僕はソフトタイヤを使っていた。路面温度がかなり高かったため、最後まで何時間もソフトタイヤを履き続けたが、正直に言って難しい判断だった」
「それにもかかわらず、かなり早い段階でソフトタイヤを履こうとしていた。そして、それがミック(・シューマッハー)の助けになったと思う。最後にソフトタイヤを履かせる絶好の機会になったためだ。というのも、僕たちは路面温度に対してタイヤの内圧やデグレーション(劣化)がどう反応するかを理解していたからだ」
「(レース中盤の)あの時間帯にソフトタイヤを履いていた僕の2スティントは、かなり難しかった。しかし、雲が出て路面温度が下がってきた。最初は28℃あったが最後は22℃まで下がった。最後にソフトタイヤを履いたのはチームの素晴らしい判断だったと思う。それが僕たちを表彰台に導いたんだ」
ラストは、路面温度の低下にともないBMW MチームWRTもソフトタイヤへの切り替えを検討していたことを明かした。
しかし、残り2時間強でバレンティーノ・ロッシ(46号車BMW M4 GT3エボ)とサイモン・マン(21号車フェラーリ296 GT3)が接触し、バーチャルセーフティカーが導入されたことで、その計画は頓挫した。
「雲が湧き上がり、どんどん気温と路面温度が下がってきていたので、スイッチすることを考えていた」とラストは語った。
「ソフトタイヤが合うかもしれないと思った。実際にソフトタイヤを準備していたところにバーチャルセーフティカーが導入されたんだ。それで、『バーチャルセーフティカーの後にはセーフティカーランになるからミディアムタイヤにしよう』と決断した」
「タイヤを温める時間があるという判断だった。それが最後にまたミディアムタイヤに戻した理由だ」