初開催で見えてきた「現役ドラフトの穴」 モデルのMLBルール5ドラフトとは構造的に大きな隔たりが

2022年12月13日(火)16時32分 ココカラネクスト

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 出場機会に恵まれない選手たちの移籍を活性化するための「現役ドラフト」が12月9日、初めて開催された。2018年に選手会の要望を受けて、12球団との協議を重ね、ようやく実現した新制度。初年度は12球団12人の選手が移籍した。

 巨人は楽天から、2016年ドラフト1位のオコエ瑠偉を獲得。中日はDeNAから「未完の大器」と名高い細川成也を、そのDeNAは中日から2019年開幕投手の笠原祥太郎を獲得した。

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 広島は巨人の救援左腕として1軍実績が豊富な戸根千明を指名した。西武は同じく代打中心に1軍でプレーした陽川尚将を獲得。1球団が必ず1人を放出し、1人を獲得するシステムで、全球団で選手が入れ替わった。

 とはいえ、移籍した選手たちが新天地でどの程度活躍できるかは未知数なままだ。選手の実力は、所属していた当該球団が一番よく分かっている。その球団が、放出しても構わないとしてリストアップした選手たちが、指名される仕組み。掘り出しものの発掘は容易ではない。

 現役ドラフトにはモデルとしたシステムが存在する。メジャーリーグの「ルール5ドラフト」がそれだ。今年も12月、ウインターミーティングの最終日に実施された。こちらは30球団の戦力均衡化を目的に、選手の飼い殺しを防ぐ趣旨で実施される。

 ルール5ドラフトでは18歳以下で入団して在籍5シーズン、19歳以上で入団した選手では在籍4シーズン以上となった選手が獲得指名対象。その条件を満たし、メジャー40人枠外の選手は全員が指名対象となる。

 最低2人以上をリストアップというNPBの現役ドラフトとでは、指名候補選手の分母が全く異なる。

 もっともルール5ドラフトには強力な「縛り」が存在する。獲得した選手は1軍ベンチ枠となるメジャー26人枠に登録し続けなくてはならない。負傷者リストや制限リスト入りを除き、再調整としてマイナー降格させる際には、ウエーバーにかけなければならない。獲得希望球団が現れなければ、所属元球団へ「返却」しなければならない。また、所属元球団はその返却を拒否することも可能だ。

 飼い殺し禁止目的で門戸は広いが、獲得したからには使い続けることが義務づけられるわけだ。

 NPBの現役ドラフトは、現状では戦力外ギリギリのレベルの選手たちがリストアップされている印象は拭えない。各球団はすでに戦力外通告を終えた後のタイミングとなり、現役ドラフトへのリストアップも念頭に置きながらの通告となっただろう。

 現在のルールでは現役ドラフトリストアップ不可な選手として、外国人選手、複数年契約中の選手、FA権保有者もしくは過去にFA権行使した選手、年俸5000万円以上の選手(ただし1億円未満の選手を1人までリストアップ可)、育成選手、昨季後にトレード加入した選手、今季終了後に育成から支配下になった選手、が定められている。

 まだ第1回が開催されたばかりで、課題は山積している。選手会側が当初臨んでいたシステムとは異なり、「骨抜きにされた」と嘆く関係者の声も聞こえる。それでも第一歩を踏み出したことが大事で、今回の結果を元に検証を重ね、より洗練されたシステムへブラッシュアップしていく必要がある。

 そして何より移籍した12選手の来季の活躍が、制度改革のスピード感を増すには必要不可欠だろう。原石はそこら中にちらばっている、掘り出し物は目を凝らせば見つかる。12球団のフロントの意識がそう変われば、選手会が求める移籍活性化は自然とうながされていくはずだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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