【共通テスト2024】東大生が数学IAと数学IIBを解いてみた

2024年1月14日(日)22時54分 リセマム

試験会場に向かう受験生たち

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2024年1月13日・14日にかけて、大学入試共通テストが実施された。センター試験から共通テストへと変更されて4回目だが、その中身はどのようなものだったのだろうか。

 今回、東大生10数名が各科目を解き、例年との比較を行った。今回は、14日に実施された数学I・数学A、数学II・数学Bに関して、その結果を共有したい。

 まず今回の数学で顕著だったのは、記述を意識した問題の増加だった。

 数学の試験なので、センター試験時代からほとんどの問題が、「A+B=『?』。『?』に当てはまる数字は?」というように、計算の結果やその過程での「数字」を求めさせ、それを答えさせる問題だった。しかし今回は、「4つの日本語の文の選択肢のうち、どの記述が正しいか答えよ」というような、数学の記述式問題を意識した問題が出題された。

 特に数学IA第1問[2]では、どのような理由で何が成り立つのかを選ばせる問題が出題されていた。これは、数学の問題というよりも国語のような問題であり、記述での表現ができるかどうかを問うものであった。例年も多少似たような問題の出題はあったものの、今回の問題は特に顕著だったと言える。

 これらの問題は、国公立大学の二次試験の数学の対策に慣れている人であれば難しくはないものではあるが、しかし従来型のセンター試験・共通テスト数学では問われないような能力が問われるようになったと言えるだろう。東大生も、「こんな問題が出題されるなんて」というコメントをしている人が多かった。

 文部科学省は、新学習指導要領で「思考力・判断力・表現力」の3つの能力にフォーカスをしていたが、これらの問題は「表現力」に照準が合わせられていた。マーク式のテストであっても記述力を求められる入試が共通テスト、ということなのかもしれない。

 また、「設問の設定自体の難易度が、以前よりもかなり高くなっているのではないか」というのが東大生たちが解いてみた感想だった。

 以前の問題に比べて、条件や設問の設定自体が複雑化しており、「二次試験対策で見たことのあるような問題が、共通テスト数学で出題されていたので、かなり驚いた」という意見もあった。

 もちろん、共通テストの数学では二次試験の問題と異なり、誘導がついており、その誘導に乗っていけば解けるように作られている。しかし、逆に東大生の中には、「誘導に乗って問題を解かなければならないのがストレスで、時間がかかってしまった」という人もいた。

 ただ、難易度は例年やセンター試験時代に比べて上がったのかというと、そうとも言い切れない面もある。

 「考える問題が増えて、計算量自体は例年よりも少なくなっているのではないか」という意見もあった。確かにセンター試験時代には膨大な量の計算を求める問題があったが、今年はそういった問題はあまり見られなかった。

 「センター試験のときは、回答欄に数字が当てはまらなくて、どこで計算ミスをしたのかを考えなければならないことが多かったが、今回のものではそういったことはなく、答えまでの道のりが見えたらそのままそれが答え、ということが多かった」という意見もあった。

センター試験時代の数学の傾向:問題設定が比較的簡単だが、計算量が多い
今回も含め、共通テストの数学の傾向:問題設定が比較的難しいが、計算量は少ない

 実際、理系文系問わず、東大生は「昔より難しい」という感想をもちながらも、みんな高得点だった。「難しく感じるが、実際に蓋を開けてみると、本質的な勉強してきている人であれば点数は確実に取れる」ように作られていると言える。

 そして理由は、「気付く人であれば気付けるちょっとした誘導のヒント」にあると考えられる。ここについてもう少し詳しく説明すると、今回の数学I・数学A、数学II・数学Bは共に、問題文の中に多くのヒントが散りばめられていた。

 たとえば、数IIBの大問2(3)の途中では、「対称であるから、〜」という記述があったが、この「対称」という言葉をヒントとして捉えれば次の問題は簡単に解ける。しかしこのヒントを見逃してしまうと、計算が増えてしまい、かなり難しくなってしまう、という問題だった。

 このように、ちょっとした言葉が大きなヒントになっており、見逃してしまったり、使い方がわからないで解けなかったという受験生も多いだろう。

 共通テストになってからの全体的な傾向だとも言えるが、たとえ数学という科目であっても、問題を正しく読解する読解力・ヒントをヒントとして捉えて理解する能力が求められていると言える。東大生はここの部分をヒントとして捉えることができたから、得点としては高かったのだと考察できる。

 また、一部の問題では、来年から出題される科目である「情報」を意識しているかのような問題が散見された(数IA 第4問のn進数について触れられた問題や、数IA第2問[2]のデータの分析の問題の一部など)。これから求められる数学的思考のヒントになると考えられるので、注目するべきだと感じる。

 そのほかに注目するべき点として、数I Aの第5問では、文章で図形の説明をした後、参考として図1を提示した上で、その描かれている図1とは少し異なる設定が追加されていた。説明で文として書かれている内容と、その少し前に参考として描かれている図とでは、長さや寸法が少し異なっている。これは、センター試験の時代から良くあるテクニックだった、「与えられた図を目分量で見て、『おそらくこれは30度くらいだから答えは30だろう』『この長さとこの長さの比は、与えられた図的に1:1だろう』と判断して答えを出す」というものを使わせないようにするためのものだったと言える。受験生が小手先のテクニックに頼ってしまわないような対策がどんどん行われていて、その傾向はこれからも続くものだと考えられる。

 総評として、「ただ計算ができれば良い」「誘導に乗っかって問題を解いていけば計算力さえあれば解ける」というようなものでは決してない中身になってきており、より本質的な数学力が求められるようになっていると言える。今後も注目するべきだと考える。

リセマム

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