【ついに】ブラックホールからエネルギーを取り出す方法判明! 負のエネルギーを使って…リアル『インターステラー』に!
2021年2月2日(火)16時0分 tocana
周囲にあるものすべてを飲み込む“宇宙の墓場”であるブラックホールは、実は無尽蔵のエネルギー源だった!? 最新の研究でブラックホールからエネルギーを抽出する方法が解説されていて興味深い。
■ブラックホールは無尽蔵のエネルギー供給源
地上の草木は太陽からのエネルギーに頼っているし、我々もまた近年になって太陽光発電に本腰を入れはじめている。
宇宙文明の発展度を示す「カルダシェフ・スケール」によれば、最初の段階の「タイプ1」の文明は母星の恒星から降り注ぐすべてのエネルギーを利用できるものとして定義されている。とすれば我々にとってひとまず太陽から地球にもたらされるエネルギーを取りこぼすことなく吸収して、すべてを活用できるようになることが先決といえるだろう。
しかしそこへ思いがけないところから新たな可能性が拓けてきた。なんとブラックホールから無尽蔵のエネルギーを取り出せるとういのである。
さかのぼること1969年、ノーベル賞受賞(2020年)の物理学者、ロジャー・ペンローズ氏は、ブラックホールからエネルギーを抽出できる可能性を最初に指摘している。
それから52年が過ぎた2021年、ペンローズのアイデアをさらに深掘りした新たな研究では、回転するブラックホールの外に位置するエルゴ球(ergosphere)におけるカオス的な磁気活動が、潜在的に収穫される可能性のある大量のエネルギーをどのように生成するかを説明している。そして遠い将来において、恒星ではなくブラックホールのエネルギーを利用することによって人類文明が長きにわたって生き残る可能性を示唆している。
太陽のように我々の天の川銀河に散在する恒星は計り知れない量のエネルギーを生み出している。しかしながら、まさに陰と陽の“陰”であるブラックホールも同様に無尽蔵のエネルギーを放っているのだ。
科学者たちは何十年もの間、恒星が崩壊したときに形成される時空の不可解な領域であるブラックホールからエネルギーを抽出できるかどうかに考えをめぐらせてきた。超凝縮物質であるこれらの領域からエネルギーを吸い上げることが物理的および実際的に可能であれば、深宇宙文明に事実上無限の電力供給を提供する可能性があるのだ。
人類がひとたび宇宙に進出した暁には、太陽などの恒星の光が届かない場所での活動を余儀なくされるケースもあるのかもしれない。そういった場合にブラックホールをエネルギーの供給源にできることになるわけで、人類の深宇宙探査に大きな希望が持てる話題になるだろう。
■人類の宇宙開発に明るい希望
では具体的にどうすればブラックホールからエネルギーを取り出せるのか。
ブラックホールの“玄関”となる「事象の地平線(event horizon)」のすぐ外側の領域は「エルゴ球(ergosphere)」と呼ばれている。すべてを飲み込むブラックホールの事象の地平線まで到達してしまうと、もはや戻ってくることはできないのだが、このエルゴ球の領域であれば戻ってこられるチャンスは残されている。
2021年1月にアメリカ物理学会の学術誌「PhysicalReview D」に掲載された今回の研究でコロンビア大学の物理学者、ルカ・コミッソ氏とフェリペ・アセンホ氏は、ブラックホールからエネルギーを抽出する別の方法として、ブラックホールの磁場にフォーカスを当てている。
「ブラックホールは通常、磁場を運ぶプラズマ粒子の熱い“スープ”に囲まれています」とコミッソ氏は「Columbia News」の取材で語る。
回転するブラックホールのエルゴ球では、磁力線は絶えず断絶と再接続を高速で繰り返している。研究者たちは、これらの線が再接続すると、プラズマ粒子が2つの異なる方向に放出されると理論づけた。粒子の1つの流れが、回転するブラックホールの方向に向かって飛び出し、最終的にブラックホールに飲み込まれる。しかし、もう一方の流れは反対方向にスピンアウトし、ブラックホールの引力から逃れるのに十分な速度を得る可能性があるのだ。
研究者たちは、磁力線の断絶と再接続が負のエネルギー粒子を生成する可能性があることを主張している。そしてこの負のエネルギー粒子がブラックホールに飲み込まれると、理論的には正の粒子が指数関数的に急増する。
「マイナスカロリーのキャンディーを食べると体重が減るようなものです」とコミッソ氏はわかりやすく説明する。
もし本当の意味での“やせ薬”や“減量食品”があるとすれば、それはすなわち“ネガティブエネルギー”である。ネガティブエネルギーを取り込めば、そのぶんのポジティブなエネルギーが体外に排出される。その排出されたエネルギーを拝借して活用するのが、ブラックホールをエネルギー供給源にするメカニズムだ。
実は映画『インターステラー』(2014年)でこれに近いケースが描かれているという。深宇宙ミッションでの燃料不足に直面した宇宙船が、ブラックホールのエルゴ球に入り、宇宙船の一部を捨てて、そのぶん大量のエネルギーを伴ってブラックホールから“弾き出される”ことによって最後の推進力を得ているのだ。
「今から数千年または数百万年後、人類は恒星からのエネルギーを利用せずにブラックホールの周りで生き残ることができるかもしれません。それは本質的に技術的な問題です。私たちの物理学においてそれを妨げるものは何もありません」(コミッソ氏)
人類の深宇宙探査はまだだいぶ先のことにはなるが、エネルギー供給源としてブラックホールを活用できるのだとすれば随分と心強いものになるだろう。着々と進む人類の宇宙開発に明るい話題がもたらされたようだ。
参考:「Big Think」、「Columbia News」ほか
文=仲田しんじ