母の愛が生んだ悲劇… 娘の遺体を1年以上自宅に保管、車椅子で街中を運ぶ

2025年2月5日(水)16時0分 tocana


 英ロンドンで、高齢の母親が亡くなった娘の遺体を1年以上自宅に保管し、車椅子に乗せて街を移動するという衝撃的な事件が発生した。発覚のきっかけは、住民からの「耐え難い悪臭」と「大量のハエの発生」という苦情だった。


母は娘の死を受け入れられなかったのか

 事件が明るみに出たのは2023年11月7日。住民の通報を受け、住宅管理会社の職員がロンドン北東部ウォルサムストウのアパートを訪れた。しかし、当時77歳だったジョーン・キャスリーン・ターネルは立ち入りを拒否。娘のトレイシーが生きていると見せかけるため、彼女の遺体に赤いコートをかけ、車椅子に乗せて外に連れ出した。


 しかし、不審に思った職員が後を追い、車椅子から漂う異臭を察知。すぐに警察に通報し、ターネルが人目につかない駐車場に入ろうとしたところで制止した。警察官が赤いコートのフードをめくると、そこには激しく腐敗した遺体が横たわっていた。検視官のグレアム・アーヴィンは、「発見時には、既に遺体の腐敗が進んでいた」と証言している。


 発見直後、ターネルは警察官に対し、「なぜ放っておいてくれないの? 私たちは大丈夫だったし、私は彼女の世話をしていた」と訴えた。


社会から隔絶された母娘の暮らし

 検視結果によると、ターネルは重度の精神疾患を抱えていたことが判明した。長期的な悲嘆障害(prolonged grief disorder)に加え、脳腫瘍も患っていたという。


 彼女の供述によれば、トレイシーの死因は不明。ターネルは「私は娘を殺していない。彼女の死因は分からない。救急車を呼ばなかったのは、助からないと分かっていたからだ。トレイシーを手放すことができなかった。私は彼女をあまりにも愛していた」と述べている。


 ターネルは娘の死亡時期について、「正確な日付は覚えていないが、2022年9月頃だったと思う」と語った。その日、母娘は午後に映画を観ていた。映画が終わった後、ターネルが話しかけてもトレイシーは反応しなかった。彼女の目は一点を見つめ、瞳孔が開いていたという。


 遺体は激しく腐敗していたため、検視では正確な死因を特定できなかった。しかし、トレイシーは生前、重度の側弯症(背骨の湾曲)や変形した腕を抱えており、車椅子生活を送っていた。友人もおらず、恋人もいなかったとされる。


 検視官のアーヴィンは「トレイシーは母親に完全に依存していた。彼女の人生は、母親なしでは成立しなかった」と指摘している。


 この母娘は、政府機関に登録されておらず、インターネットも使用していなかった。トレイシーは携帯電話すら持たず、警察は彼女の写真を1枚も発見できなかった。最終的にDNA鑑定によって身元が確認された。


 警察がターネルの自宅を調査したところ、虫やネズミがはびこり、床には排泄物が散乱しているという劣悪な環境だった。


司法判断と残された課題

 ターネルは、娘の合法的な埋葬を妨げた罪には問われなかった。しかし、今回の事件は、社会から孤立した人々が適切な支援を受けられていない現実を浮き彫りにしている。


 家族を失った悲しみが、時には現実を直視できなくなるほど深くなることがある。この母娘の悲劇は、孤立する人々への支援の必要性を改めて考えさせるものとなっただろう。


参考:Daily Star、ほか

tocana

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