レトロ可愛い調理機器「アラジン」が愛されるワケとは? ヒット作のトースター&「コーヒーブリュワー」の開発秘話

2025年2月9日(日)10時50分 食楽web


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●焼きたてパンのおいしさを追求する「アラジン グラファイトトースター」に続き、新作「コーヒーブリュワー」も話題の『千石』。最高のトースト&コーヒーを生む開発者の思いとは?

 2015年の発売以来、レトロなデザインとトーストのおいしさで幅広い世代から高い人気を集めている「アラジン グラファイトトースター」シリーズ。わずか0.2秒で発熱する独自の特許技術「グラファイトヒータ®」※を搭載し、外はカリッと香ばしく、中はもっちりとした食パンの絶妙な焼き上がりを実現しています。

※「グラファイトヒータ」は株式会社千石の登録商標です。(登録第5362800号)


開発担当の高橋さん

 この技術を開発した株式会社『千石』は2023年、おいしいトーストにぴったりなコーヒーを抽出できる「コーヒーブリュワー」を発売。コーヒーが苦手な人も驚く「最高の一杯」が楽しめると評判です。日常を豊かにする革新的なアイテムを開発担当する高橋さんに、商品の誕生秘話やそのこだわりについて伺いました。

ストーブから調理機器へ。画期的な「グラファイトトースター」が大ヒット


当初の年間目標1万台を大きく超えて50万台の売上を達成した大ヒット商品「グラファイトトースター」

——アラジンはストーブから始まり、何世代にもわたって愛用されてきました。暖房器具から調理家電へと転換したのはなぜ?

高橋さん:私たちは石油暖房機をメインに開発しており、そこから電気ヒーターへも展開しながら、2012年頃には特許技術である「グラファイトヒータ」を搭載した電気ヒーターを発売しました。その性能は好評いただいたのですが、どうしても暖房機は年間通して生産販売することが難しいんですね。

——確かに、寒い季節だけの需要という印象がありますね。

高橋さん:なので、販売する商品の平準化が大きな課題だったのと同時に、省エネ対応のエアコンの普及により、石油暖房機の市場が縮小気味になりまして、年間通して作ることができる「調理機器」に目を付けました。


瞬時に高温になる特許技術「グラファイトヒータ」を搭載

高橋さん:実は、私たちは大手メーカーのOEM(下請け)で前からオーブントースターを製造していたため、開発のノウハウがあったんです。そこで「グラファイトヒータ」を搭載したオーブントースターの開発を始めました。ただ、グラファイトヒータはとても性能がいい反面、少し高価なんですね。当時は4000円くらいでオーブントースターが買えた時代。それが、これを搭載すると2万円近くなってしまう。そんなに高いトースターが本当に売れるのか? というところでひと悶着ありました。

 しかし、当時10万円超えの炊飯器が登場し、「毎日食べるお米がおいしく炊ける」と話題になっていたので、おいしさが認知されれば、商品が高くてもユーザーさんには分かっていただけるはず、性能が良くておいしかったら2万円で勝負できるのではないかと。そこで、パンのおいしさと早く焼き上げることにこだわったオーブントースターの開発を進めることになったんです。

「ムラなく早く、おいしい焼き上げ」を叶えたアラジントースター


ストーブでもおなじみのカラー、ホワイトとグリーン。ピザ釜をイメージさせる上部のカーブや小窓、調整のつまみでレトロ感のあるおしゃれなデザイン

——2015年に発売された「グラファイトトースター」は今までにないパンの焼き上がりが話題に。機能面でこだわった部分は?

高橋さん:いかに火力を上げるか、というところですね。トーストのおいしさを追求した結果、パンはより早く焼き上げれば、中に水分を保ちながら表面をしっかりカリッと焼けるということがわかりました。それを叶えたのが、0.2秒で1300℃まで温度を上げることができるグラファイトヒータです。ただ、電気ストーブに使っているヒーターは1200℃までしか上がらないので、調理機器に転用するには加熱不足。そこで性能を上げて1300℃まで上がるヒーターを新たに生み出しました。

——100℃上げるというのは、とても大変なことなんですね。

高橋さん:実際に開発をスタートしてから発売するまでに約2年かかり、そのうちの1年間はヒーターの改良に費やしました。例えば、鉄は、1100℃付近を超えると、軟化してしまいます。1000℃というのはその領域の温度です。その領域で1200℃から1300℃に上げつつ、天板が熱くなりにくい構造にするために技術力を投入しています。

レトロで可愛いピザ釜みたいなデザインが高評価


瞬時に高温になるヒーターの熱でパンが部分焼けしないよう、いかに早く均一に熱を伝えるかというところにもこだわったのだそう

——レトロなデザインもかわいくておしゃれだと好評ですね。

高橋さん:正直、開発中はあのデザインにはすごく賛否がありまして……。

——そうなんですか!

高橋さん:上部がカーブしているので、試作品を展示会などに出すと「上に物が置けない形状というのはダメだろう」と言われ続けたんです。ですが、とても画期的で新しい商品ですし、高温でカリッと焼ける「ピザ釜」のイメージを持たせたかったので、私たちとしてはこのデザインで行きたいと半ば押し切る形で出しました。実は、窓の小ささにも賛否ありましたが、小窓から中をのぞく楽しさやレトロなデザインが相まって、最終的に「かわいらしい」と多くの方に評価をいただけました。


当時は少なかった「4枚焼き」を実現した庫内はピザも焼ける広さ。開発途中でグリル調理も可能なことがわかり「グリルパン」を付属


高橋さんのおすすめは専用のホットサンドメーカー(別売品)を使ったホットサンド。「裏返したり火加減を調整する必要がなく、パンの耳までカリッと焼けてすごくおいしいです」

——パンの焼き上がりの確認はどのように行ったんですか?

高橋さん:なかなかアナログなんですよ(笑)。実際に焼いて食べないと分からないので、ヒーターの位置やパワーを変えるたびに焼いては食べ……を繰り返しました。反射板の形状を決める時は、1斤6枚切りのパンを1日大体10斤くらい食べ続けましたね。チューニング期間は半年くらい。焼いたパンのアレンジレシピは、かなり増えました(笑)。

雑味のない旨味を凝縮した最高の一杯を抽出する「アラジン コーヒーブリュワー」


コーヒーのおいしいところだけを取り出すことにとことんこだわった「アラジン コーヒーブリュワー」

——2023年には「アラジン コーヒーブリュワー」が発売されました。

高橋さん:トースターを発売して以降、ユーザーの方たちのご意見をヒアリングしたところ、「パンに合うおいしいコーヒーが飲みたい」という声が圧倒的に多かったんです。それで、おいしいコーヒーとはなんだろう? と私たちなりに考えたところ、苦みがカギになるのではないかと。苦みを分析してみると「雑味」と言われるコーヒーのアクみたいなものが関係することが判明しまして、雑味を入れずすっきりとした、パンの味わいを損ねないコーヒーを目指して「コーヒーブリュワー」を作りました。構想から4年ほどかかっています。

——具体的にどういった技術が生かされているのでしょうか?

高橋さん:コーヒーをドリップすると、最初はコーヒー独自の旨味成分が出てくるんですが、後半になるにつれてアクが出てきます。一番出汁は香りがいいですが、最後は味がなくアクのある出がらしになりますよね、あの感じです。


お湯の温度のコントロール技術を生かして抽出。クリア、マイルド、ストロング、そして「一番出汁」のようなピュアな味のデミタスの4つのモードを搭載

高橋さん:通常、コーヒーをドリップすると、前半も後半も全てがカップに注がれてしまうんです。それを専門メーカーでは、おいしい濃いコーヒーを作る工程と、最後をお湯で割る(お湯を注ぐ)工程に分けて仕上げています。アラジンは独自の「バイパスドリップ」技術でこれら2つを分けることで、雑味を入れないコーヒーを実現しました。コーヒーを抽出するルートと、直接カップにお湯を注ぐルートを設けたのが特徴です。

——そこにヒーターの技術が生かされているんですね。

高橋さん:ただ、私たちはコーヒーについては素人だったので、北海道にある「珈琲きゃろっと」というコーヒー豆専門店の焙煎士さんに試作機を持って行って協力していただき、お湯の温度や抽出スピードなどのレシピをプロのご意見を聞きながら作り上げました。何回も通って、ここでも抽出しては飲む、を繰り返しました(笑)。

——「珈琲きゃろっと」さんとはご縁があったんですか?

高橋さん:そういうのはまったく無くて。そちらでは私たちが目指した「差し湯方式」というのを昔から推奨されていて、私たちの考えととても似ていたんです。代表の方と意見交換して意気投合し、ご協力いただけることになりました。

——開発における一番の山場は?

高橋さん:やはりおいしいコーヒーを作るためには、お湯の温度と抽出のスピードが大事なんですが、機械はどうしても冷えてしまいます。また、豆(粉)の保存状態も人によってまちまち。マシーンというのは一定の温度を維持するのは得意ですが、状態が異なる粉に個別対応するのは難しい。そこをどうクリアするかが課題でした。


アラジンといえばストーブの芯を上げ下げする「ダイヤル方式」が象徴的。その伝統を受け継ぎ、トースター同様、ダイヤルをコーヒーブリュワーの調節にも採用

——確かに保存状態や条件がかなり違いますよね。クリアするためにどのような方法を?

高橋さん:最終的に「予熱」という方法をとっています。お湯を落とす前にスチームを発生させて機械全体を温め、粉にも吹きかけて。アイドリングする感じですね。そうすると粉も活性化して、一定の状態にまで持ち上げてから抽出工程に入るという技術。実はここに辿り着くために、発売を1年延期させていただきました。

——おいしい一杯のために、さらに1年を費やしたんですね。

高橋さん:機器を初めて使う状態がコールドスタート、繰り返し使うのがホットスタートといって、私たちは何回も試飲するので、主にホットスタートで検証を行っていました。その際は「おいしいおいしい」と言っていたのですが、翌朝コールドスタートで飲んでみると、どうも味が変わっていておいしくない。そのことが発売ギリギリで判明し、これではみなさんに「おいしいコーヒーが飲めます」とは言えないと判断して発売を延期し、改良しました。

——豆がどういう状態でもおいしい一杯になるとはスゴい! 商品の反響はいかがですか?

高橋さん:コーヒー好きの方はもちろん、コーヒーが苦手な方から「コーヒーは苦いものだと思っていたけれど、こんなにクリアで飲みやすいんだ」と評価をいただいています。苦みの部分にとてもこだわったので、そういっていただけると何よりうれしいですね


最高を追求した焼き立てのトーストと淹れたてのコーヒーで朝時間が変わる!

——アラジンの今後の展開予定を教えてください

高橋さん:オーブントースターは多くの方に認知していただいていますので、今後も通年商品としてキッチン周りの商品を強化していきたいと考えています。小物やホットサンドメーカーといったアイテムも含め、キッチンに並ぶ調理機器がすべてアラジンブランドになると嬉しいなという夢を持ちながら、これからも一つずつ取り込んでいきたいと思います。

(取材・文◎松永加奈)

●DATA
株式会社千石 https://www.sengokujp.co.jp

アラジンブランド https://www.aladdin-aic.com/

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