上沼恵美子「失敗は誰でもする。それでも、力のある人は必ず返り咲く。裏切りも孤独も経験したけれど、〈今に見とれ!〉の負けん気に背中を押されて」

2025年2月17日(月)12時30分 婦人公論.jp


「私には実力とは別に、負けん気の強さがあるんですよ。これほど自分を前に押してくれる力はありません」(撮影:下村亮人)

姉妹漫才コンビ「海原千里・万里」での大ブレイク、タレントとしての活躍——そして現在は歌手の顔も持ちつつ、ユーチューブにまで活動の場を広げる上沼恵美子さん。数々の願いを叶えた今、感じることは(構成:社納葉子 撮影:下村亮人)

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心の底からマグマが湧き、「誰が死ぬか」と


私、強運のように見えますか? そんなことありません。裏切りも孤独も経験しました。財は得ましたが、失ったものもたくさんあります。寂しいもんですよ。

時間をかけて大切に築いたと思っていた関係も、崩れるのは一瞬です。とくに最近は、ネットで炎上したら一発で姿が見えなくなります。

でも、それは力がないから。人間だからそりゃあ失敗しますよ。力のある人は必ず返り咲くんです。

大昔ですけど、当時の男性マネージャーにギャラの使い込みをされました。私は被害者なのに、「上沼恵美子、申告漏れ」と、まるで私がごまかしたみたいに週刊誌に書かれたんです。

その時に料理番組のプロデューサーが励ましてくれましてね。「あなたは這い上がる力があるから、見せしめで書かれるんだよ。こんなことでは終わらないから大丈夫」と。どういう意味やねん、と思いましたけど、彼の言った通りになりました。

この時に自分を奮い立たせたのが、「今に見とれ!」という負けん気です。私には実力とは別に、負けん気の強さがあるんですよ。これほど自分を前に押してくれる力はありません。これは私だけじゃなくて、誰もが持ってはる力やと思います。

同じ負けん気でも、貧乏神がついてくるような負けん気はあきません。ママ友にもいました。不幸の塊みたいなことばっかり言うんですよ。彼女をじーっと見てたら、「不幸のひっつき虫」が周りを飛んでましたもん。やっぱり寄ってくるんでしょうね。

「死んで思い知らせてやる!」というのも無駄です。意外とみなさん、「自分のせいで死んだ」なんて考えない。薄情やなと思いますが、これが現実です。

私も長年大事にしていた番組が思いもよらない形で終わった時には、ものすごく傷つきました。白浜の別荘にこもって、目の前に広がる海に愛犬と一緒に飛び込もうと何度思ったことか。

ただ、落ち込みながらも頭をカーッと回転させて考えました。最初は「消えたい」「逃げたい」。だけど2、3日経つと心の底からマグマが湧き上がってきて、「誰が死ぬか」と。

そして、「私も思い上がってたんやな」という感情も生まれました。腹を立てるのも、次に進むために必要なことなんやと思います。

あの時、「暴露本を出しませんか」と言ってくる人もいましたが、そんな妙な本を出しても何にもなりません。むしろ私を貶めた人たちの思う壺。「堕ちるとこまで堕ちたな、あのおばちゃん」てなもんです。

私は人の悪口をたくさん言うてきました。誰かにこう言われたことがあります。「人の悪口を言うあなたも、人に言われてるんですよ」と。その通りです。だから罰が当たったんでしょう。

ただ、私はテレビで言う悪口は必ずユーモアに変えようという努力をしています。ただの悪口だけならここまで使ってもらえなかったはず。

人や世間を恨みっぱなしで陰気な人に、幸運は転がってきません。人は明るくないといけないんです。

人が楽しむ姿を見ることが幸せ


「上沼さんは何でも持ってるじゃないですか」と、よく言われます。確かに別荘を何軒も持ちましたし、ダイヤの指輪を10本の指にはめたこともあります。

でも私は、自分のために何かするより、みんなが楽しそうにしている姿を見るのが大好き。それが私にとっての幸せなんです。

40代半ばでハワイに別荘を買ったのも、ハワイが大好きな夫のため。鍵を受け取った時の夫の顔といったら! 後にも先にもあんな笑顔は見たことがありません。もうね、爽やか! まさに『平凡』の表紙を飾っていた昭和のアイドルです。かっこよくて、私も最高に幸せでした。

番組で共演した若い子たちをよく食事に連れて行ったのも、同じです。「キャビアもフォアグラも親に食べさせてもらったことない。全部上沼さんに教えてもらいました!」なんて無気に喜んでくれる。

若い子にいい思いをさせても、私には何のメリットもありません。でも、楽しんで感謝してくれるだけで十分。あれほど奢ってなかったら、マンションがもう1軒買えたと思いますけどね。(笑)

最近は自分のユーチューブチャンネルで、お姉ちゃん(芦川百々子さん)とよく共演しています。有馬温泉や岡山県の倉敷で収録するんですよ。お姉ちゃんと旅行したい、楽しみたいから。お姉ちゃんには莫大なギャラを渡してるので、喜んで来てくれます。(笑)

「次に会う時は葬式」というのが、私は何より嫌なんです。母が死んで姑が死にました。おじもおばも。ふと「次にお姉ちゃんと会うのは、私かお姉ちゃんの葬式?」と思った時、それは嫌やと。だから、お姉ちゃんにも登場してもらうことにしたんです。

最近は街中で「ユーチューブ観てます」と話しかけられるそうで、喜んでます。姉は今、絶対幸せですね。そんな姉を見られて、私も嬉しいです。

私自身の幸せといえば、コンサートで3000人のお客さんが全員私を見て「キャー!」「好き!」と言ってくれること。8000円も払って会いに来てくれるんですよ。ありがたいです。

赤字覚悟でいい舞台をつくって、緞帳が下がっていく時の深い満足感と喜び。それに代わる快感があるものかと思います。

どれもこれも、やっぱりお金じゃないんですよ。もはや物欲もなくなりました。今はダイヤの指輪もお世話になった人たちにあげてひとつも残ってませんけど、何とも思わないんです。

<後編につづく>

婦人公論.jp

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