なぜ<肩こり><腰痛><膝痛>の根本的な治療は難しいのか?専門医「原因不明とされてきたこれらの痛みに共通する原因、実は…」

2025年3月8日(土)6時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

肩こりや腰痛に悩み、病院に行ってレントゲンを撮っても「原因がわからない」と診断されてしまった……という方もいるのではないでしょうか。オクノクリニック総院長の奥野祐次先生によると、このような<ありふれた痛み>の原因は<血管>にあるとのこと。そこで今回は、東京医科大学准教授・遠藤健司先生との共著『こんなに痛いのにどうして「なんでもない」と医者に言われてしまうのでしょうか』から、奥野先生による解説を一部お届けします。

* * * * * * *

なぜ歳だから仕方がない、治療法はないと言われるのか?


肩こりや腰痛、五十肩やヘバーデン結節などと同じありふれた痛みであっても、例えば虫歯はどうでしょう? 虫歯の痛みは歯医者さんに行けば治してもらえますよね? 同じありふれた症状なのに、虫歯はしっかり対処してもらえます。ありふれた関節の痛みと虫歯の違いは何なのでしょうか?

その答えは、「原因が簡単に見てとれるものであるかどうか?」ということがカギになります。

虫歯は痛い箇所を直接観察すれば、歯の表面からエナメル質が溶けて、中の歯髄まで影響が及んでいるなど、どれくらい重症なのかが一目でわかります。レントゲンを撮れば、本来は白く映るはずのところに黒っぽく空洞のようになった虫歯が確認できます。そしてその場所が患者さんの痛みを感じている場所と一致します。

要するに痛みの原因がはっきりとわかっているため対処しやすいのです。閉ざされて細菌が巣食っている病変を開放・洗浄して補強すれば、虫歯の痛みは治まります。

一方で、肩こりはどうでしょうか? レントゲンを見ても、超音波で見ても、MRIで見ても正常にしか映らない。これでは何が悪いのかがさっぱりわかりません。現在の医療の標準的な検査方法では簡単には異常が発見できません。採血でも引っかかってきません。

だからこそ、肩こりはこれだけありふれているのに、治す方法がまだ見出されていなかったと言えます(最近になって新しい画期的な肩こりの治療法が開発されています)。

検査方法の確立が不可欠


つまり、今ある標準的な検査で異常が見出せないとなれば、どんなに症状が強くてもドクターは何も処置することができないということになります。もちろん、いろいろな対症療法は存在します。

例を挙げれば、神経ブロック注射であったり、神経を一時的に麻痺させる注射であったり、生理食塩水を入れる注射であったり、筋肉の緊張を和らげる飲み薬などです。しかしこれらの治療法は肩こりを根本的に治すものではありません。

そうであれば、何が原因なのかを詳しく診ていかなくてはいけないのです。

五十肩も同じです。これだけ多くの人が五十肩になるにもかかわらず、なぜそこまで痛いのかについては最近になるまでわかっていませんでした。

病気を適切に治すには、検査方法の確立が不可欠です。虫歯であれば直接の観察とレントゲンで診断でき、どこまでひどいか(重症度)もわかります。いわゆる盲腸(正式名称は虫垂炎)も、CT検査で確実に診断でき、どれくらい重症なのかがわかります。

心臓の血管が詰まってしまう心筋梗塞も、心電図や冠動脈血管撮影(造影)という標準的な検査が確立しています。

しかし、五十肩の場合、最近になるまでこのような確立された検査方法がありませんでした。レントゲンではまったく可視化できません。MRIによる診断もそこまで標準化されていません(実は専門家が見れば重症度がわかるのですが)。五十肩の画像検査も最近になって解明されつつあります。

ありふれた痛みの原因は?


では、ここから先は、実際にこれまで「わからない」とされてきた、これらのありふれた痛みの原因について迫っていきましょう。

腰痛や肩こりなどの「ありふれた痛み」は、実は単純にひと括りにすることはできない複雑な原因から起こっています。


(写真提供:Photo AC)

21世紀の社会においていまだに解決されずに残っている課題は、そのほとんどが「複雑性のある課題」だと言われています。虫歯や骨折、心筋梗塞などは、そこまで複雑ではありません。なぜなら原因がはっきりと検査で確認できるからです。

一方で、肩こりや腰痛、五十肩や膝痛などのありふれた痛みについては、複合的な要素が多く、また個人差も大きいものです。座り過ぎや、体軸のブレなどが蓄積された痛みもあります。また、骨密度や骨の圧迫骨折、変形も関与してきます。また精神的な要因も深く関与します。

「ありふれた痛み」の共通した原因


では複雑だからといって解決方法がないかというと、そういうわけではありません。

最近になって、これらの「ありふれた痛み」に対する、ある共通した原因が見出されています。それは、痛みの部位に長く生じている異常な血管とその周囲を取り巻いている神経の存在です。

私は2015年にワニブックス【PLUS】新書から『長引く痛みの原因は、血管が9割』という本を出版しました。

肩こりや五十肩、ヘバーデン結節、あるいは膝の痛みや腰痛に至るまで、多くのありふれた痛みの原因の中心にあるのが、その本の中で詳しく解説し、「モヤモヤ血管」と紹介した異常な血管です。これは根本的な痛みの原因として非常に重要なものです。

例えば五十肩は、現在では肩の関節にモヤモヤ血管ができる病気として再定義されています。また、ヘバーデン結節もモヤモヤ血管を減らす治療を行なうことで改善することがわかってきました。

※本稿は、『こんなに痛いのにどうして「なんでもない」と医者に言われてしまうのでしょうか』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

「原因」をもっと詳しく

「原因」のニュース

「原因」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ