<老けない肉ベスト10>は?脂質の高い肉は「老ける」「太る」の原因に。寿命を延ばすには「高タンパク質な肉」を【2025編集部セレクション】

2025年4月24日(木)10時0分 婦人公論.jp


笹井さん「脂質の高い肉は、一言で言うなら『老ける』『太る』ほうに傾く」(写真提供:Photo AC)

2024年上半期(1月〜6月)に『婦人公論.jp』で大きな反響を得た記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年01月18日)
******2021年に内閣府が高齢者向けに行った調査によると、普段、食生活について気になっていることは「栄養のバランスがとれていない」ことだと答えた人は約2割いたそう。「見た目の若さには、日々の食事が関係している」と話すのは、『老けない最強食』(文春新書)を著したジャーナリストの笹井恵里子さん。さらに笹井さんいわく、「脂質の高い肉は、一言で言うなら『老ける』『太る』ほうに傾く」とのことで——。

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人生後半には「高タンパクな肉」を


抗加齢医学の国際的権威であるクロード・ショーシャ博士から指導を受け、高齢者医療に約30年関わってきた和田秀樹医師(ルネクリニック東京院院長)は「健康な日本人は、まだまだ肉によってタンパク質を摂らないといけない」と指摘する。

「アメリカ人の一日あたりの肉の摂取量は約300g。死因トップが心疾患で、だから『肉が動脈硬化の原因』のように言われます。けれども日本は心筋梗塞で亡くなる方の10倍、がんで死んでいます。アメリカ人と同じ土俵ではないのです。

肉は免疫機能の役割を高め、血管の材料になります。かつては上の血圧(収縮期血圧)が160mmHgくらいで脳卒中が起きましたが、今は栄養状態がよければ200mmHgに達してもそう簡単には血管が破れません。

それは動物性のタンパク質の摂取増によって脳血管が丈夫になったからです。肉の不足は、例えるとゴムの入っていないタイヤみたいな、破れやすい血管になってしまいますね」

IARCでは全世界地域での赤肉の一日摂取量を「約50〜100g、200g以上の地域も含む」としているが、和田医師が言うように日本人の一日あたりの摂取量は赤肉50gと世界的にも低い。

国立がん研究センターは「日本人の平均的な摂取量であれば、リスクは無いか、あっても小さい」とコメントしている。

肉なら何でもいいわけではない


それどころか肉は、日本人の長寿に貢献してきたといえよう。

今から100年前の日本では大豆などの植物性タンパク質を摂取するばかりで、平均寿命は30代後半だった。欧米諸国に比べて10歳以上の差を付けられていたのだ。

それが肉などの動物性タンパク質の摂取量増加とともに、日本人の平均寿命は1980年代、世界トップクラスに達する。

日本ポリフェノール学会理事長の板倉弘重医師(東京アスボクリニック名誉理事長)は「肉は良質なタンパク質の重要な供給源。そしてタンパク質は体の組織をつくるもととなる栄養素です」と説明する。


『老けない最強食』(著:笹井恵里子/文藝春秋)

「肉に含まれる豊富なタンパク質は、細胞膜や細胞骨格をつくり、体の筋肉や皮膚などを構成します。ほかにもビタミンB12、亜鉛、ビタミンB1、ナイアシン、ビタミンB6などが肉に多く含まれますが、これらの栄養成分が足りなくなると筋肉や免疫機能の低下、アミノ酸不足が引き起こす神経性症状などが起こり、老化に拍車がかかります。筋肉が維持できないということは、若さを保つどころか、要介護状態に陥ってしまうのです」

肉に含まれるタンパク質は消化管でアミノ酸などに分解されて肝臓に送られ、全身に運ばれる。各組織に送られたアミノ酸は、筋肉や血液、皮膚、髪の毛など、それぞれの組織の構成成分になる。タンパク質が不足すると新陳代謝がスムーズに行われない。

その上60歳を過ぎると、血液中のアルブミン、コレステロール、ヘモグロビンという栄養状態を表す数値がどんどん下がっていく。血液中のこれらの栄養成分が落ちていくと、同時に体重が減ってしまう。

中年でメタボと言われて脂肪が増えている間はまだいい。しかし人生の後半、自然に体の脂肪が減ってきたら、それは老化の始まりだ。そこで効率的に血液中の栄養状態を表す数値を上げるスタミナ食が、肉なのである。

しかし、肉なら何でもいいわけではない。肉はおよそ5〜7割が水分。残りが「タンパク質」や「脂質」から構成される。

その割合によって肉の柔らかさや栄養素量が変わってくるわけだが、老けないためには同じ1 0 0gあたりの肉を比較した時に「タンパク質の割合が高い肉」を選ぼう。

脂質が多い肉を食べたほうが、肌がツヤツヤしそうなイメージを持つ人もいるかもしれないが、脂が皮膚を作るわけではない。

新しい皮膚の再生に必要なのは、あくまでタンパク質だ。脂質の高い肉は、一言で言うなら「老ける」「太る」ほうに傾く。

日本臨床栄養協会理事の大和田潔医師(あきはばら駅クリニック院長)も、「農作業や工事の作業員など日常的にものすごく体を動かす人なら、脂質が高い肉もエネルギー源になるでしょう。しかし、普通の体格の人が脂質が多い肉を摂ると、カロリー過多になって蓄積されます」と解説する。

老化物質AGEの蓄積を阻止


下の「老けない肉ベスト10」を見てほしい。

ランキング1位である「鶏肉」は、高タンパクで低脂質、ビタミンがたっぷりという若返り食べものの代表格。

鶏肉に含まれるカルノシンという物質が酸化と糖化を強力に抑えることがわかっている。牧田善二医師(AGE牧田クリニック院長)も、「鶏肉は老化物質であるAGEの蓄積を阻止してくれる」と太鼓判を押す。

「渡り鳥が長い距離をノンストップで飛べるのは、運動によって大量に発生する活性酸素を消去してくれるカルノシンを持っているためと考えられます。パワーが持続するということは、すなわち老けないこととイコールです。人の体にも骨格筋や脳、神経組織に多く含まれていますが、年齢とともに減少してしまうので外から補給することをお勧めします。また、カルノシンには抗糖化作用があることも最近わかりました」

鶏肉に含まれるビタミンB6も、体内でタンパク質と糖質が合成するのをブロックしたり、AGEが発生するプロセスを初期の段階で抑えてくれるという。

体を動かした後も鶏肉がいい。管理栄養士の早川麻理子氏(名古屋経済大学准教授)の話。

「ウォーキングなどの運動をしてから1時間以内に、市販の『サラダチキン』(蒸し鶏を密封パックしたもの)を摂ると、筋肉合成につながります」

コラーゲン、アミノ酸


鶏肉の中でも4位の「皮つき」はどうだろうか。

管理栄養士で調理師の堀知佐子氏(老舗料亭「菊乃井」常務取締役)によると、「皮なしのほうが圧倒的にカロリーが低いですが、皮には若返りに必須のコラーゲンがたっぷり含まれている」という。

コラーゲンは動物の皮膚に多く含まれるが、豚や牛の場合は毛を落とせないため食べられない。

「コラーゲンが不足すると肌にたるみができたり、かさつく原因になりますから、老けないためには鶏肉の皮を邪険にしないほうがいいと思います。冷たいフライパンの上に皮目を下にして鶏肉をのせ、強火でなく弱火でじっくりパリパリになるまで焼くと鶏肉の余計な脂が取れ、コラーゲンは肉の中に残ります」(堀氏)

前出の板倉弘重医師は、ランキング2位、5位、10位につける「ヒレ肉」を勧める。

「筋肉を強化する『ロイシン』、神経伝達物質セロトニンの原料である『トリプトファン』など、体内で作られないさまざまな必須アミノ酸が肉のタンパク質には含まれます。とりわけヒレ肉はロイシンやトリプトファンが豊富で、筋肉量の低下を予防し、心を前向きにするセロトニンを生みだして老化予防に影響を与えるとされています。脂身が多い肉ほどロイシンやトリプトファンの比率が少なくなってしまいます」

※本稿は、『老けない最強食』(文藝春秋)の一部を再編集したものです。

●腸内環境を整え、アンチエイジングにもなる「老けないおやつ」は?「太りにくいおやつ」との違いも

●起床後1時間以内のタンパク質摂取で、筋肉が衰えるのを防ぐ。朝に食べることで吸収率がアップする食材とは?

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