美輪明宏 「人をいたわるには、相手の見えない部分を見る必要がある。想像力が必要です」
2025年3月10日(月)11時0分 婦人公論.jp
歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。
3月号の書は「いたわり」です。
* * * * * * *
《いたわり》には想像力が必要
いたわりとは、人の苦労や悲しみを察して、やさしく慰めること。「思いやりの心で接する」と言い換えてもいいかもしれません。
この人は、何を思い悩み、なぜつらい気持ちでいるのか。無理やり聞き出すのではなく、その人の言動や状況、気配から察し、「だったら、こうしてあげよう」「こんなことを言ってあげよう」と気を配る。それが、いたわりです。
人をいたわるには、相手の見えない部分を見る必要があります。つまり、想像力が必要なのです。たとえ自分が経験していないことでも、想像力を働かせたら、相手の経験してきたことを感じ取ることができ、相手がそこで得た感情を共有できます。ひとことでいうと、「相手の身になって考える」ことができるのです。すると、今、この人には何が必要か、おのずと見えてくるはずです。
「どうしたの?」などとずけずけと相手のプライバシーに分け入るのは、いたわりの精神に反します。そういった無神経な態度は、相手の心の傷を広げたり、場合によっては恥をかかせることになりかねません。ときには、何も言わずただそばにいてあげる。相手が話す気になるまでこちらからは何も聞かず、美しい音楽が流れる部屋でおいしいお茶とお菓子を振る舞うーーそんなさりげない振る舞いが、何よりのいたわりになる場合もあるのです。
想像力を鍛えるには上質な本を読み、映画や芝居を観るなどしてさまざまな人生を追体験するのも役に立ちます。自分が経験できる物ごとの量はたかが知れていますが、栄養をたくさん吸収することで、人の心に対して敏感になれるはず。心の栄養を十分にとって、想像力を養い、いたわりの心を育てましょう。
●今月の書「いたわり」
関連記事(外部サイト)
- 美輪明宏 「15歳まで過ごした長崎には、国境を越えた美しい歌の世界があった。皆さんの心の故郷、魂の本籍地は?
- 美輪明宏 「〈お気楽〉に生きるため、明日の朝、目が覚めなかったとしても、後悔しないと思える毎日を送ろう」
- 池畑慎之介「72歳ひとり暮らし、海の見える秋谷の家を手放して、エレベーター付きの安全な終の住処を建設。新居では、ご近所さんと親しい仲に」【2024年下半期ベスト】
- 池畑慎之介「72歳ひとり暮らし。終活にとらわれず、新たに2ヵ所の家を手に入れて。《やりたいこと》リストが常にいっぱいだから、寂しさを感じる暇はない」
- 江原啓之×丸山敬太 初対面から45年「敬太」「プーヤン」と呼び合う仲。高校の同級生、青春時代を語る