管理職に就いた途端、遅刻や欠勤が目立つように…環境の変化で発達障害の症状が現れる「グレーゾーン」の特徴とは

2025年3月14日(金)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

何度注意しても遅刻がなおらない、場の空気を読むことが苦手……。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの総称である「発達障害」という言葉が一般的に浸透してきています。そのようななか、1万人以上をカウンセリングしてきた公認心理師の舟木彩乃さんは、発達障害の傾向がありながら診断がついていない「グレーゾーン」の人たちがいることも指摘しています。そこで今回は、舟木さんの著書『発達障害グレーゾーンの部下たち』より一部を抜粋してご紹介します。

* * * * * * *

発達障害はグラデーション


発達障害という言葉が一般的に浸透している中で、「自分は発達障害かもしれない」と思って、意を決して医療機関を受診する人が多くなっています。しかし、診てもらってもはっきりした診断名がつかず、「発達障害の傾向がありますね」とか「グレーゾーンですね」などと曖昧なことを言われることがあります。

医療機関では、発達障害の診断は、問診(現在の困りごとや幼少期の様子、場合によっては家族の話や学生時代の成績表など)や検査(知能検査や心理検査など)などによって総合的に行われます。

発達障害の分類やそれぞれの疾病(しっぺい)の名称には、アメリカ精神医学会によって作成されている「DSM─5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,DSM-5)」が、日本を含めて世界的に使われています。なお、改訂版として、『DSM─5─TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』(邦訳2023年6月)があります。

また、世界保健機関(World Health Organization, WHO)による国際疾病分類の「ICD─11(International Classification of Diseases 11th Revision The global standard for diagnostic health information)」というマニュアルも、広く利用されています。

分類、診断基準は1つではない


DSMやICDという複数のマニュアルがあるように、疾病の分類や診断基準も1つではありません。

時代とともに疾病に関する考え方も変容していくことから、両書ともに改訂版が出されると内容も変わります。


『発達障害グレーゾーンの部下たち』(著:舟木彩乃/SBクリエイティブ)

「発達障害」の診断基準も、絶対的なものがあるというわけではないのです。

人には、適応できる環境(あるいは時代)と適応できない環境があり、環境によって、発達障害の症状が現れたり現れなかったりします。そのような例を1つ紹介します。

環境の変化によって症状が現れたAさん


ある企業の研究部門に専門職として入社したAさん(男性30代)は、結果も出しながらいきいきと仕事をしていましたが、その成果が認められて管理職に就いた途端、仕事に集中できなくなり遅刻や欠勤が目立つようになりました。

のちに、Aさんには、発達障害の1つである自閉スペクトラム症の“傾向”があることが分かりました。

自閉スペクトラム症には、興味の対象が限られていたり、イマジネーション・コミュニケーションが得意でなかったりという特徴があります。

Aさんの場合は、管理職になって外部の人や部下とのコミュニケーションの機会が増えたことでストレス過多となり、仕事への集中力が切れ、勤怠が乱れるというストレス反応が現れました。環境への適応が難しくなったということです。

「グレーゾーン」の難しさ


『発達障害グレーゾーンの部下たち』のタイトルにある「グレーゾーン」は、Aさんのような発達障害の傾向がある場合を指します。

発達障害をブラック、定型発達(健常者)をホワイトとした場合、両者の間にある領域が「グレーゾーン」になります。発達障害の特性を濃度にたとえるなら、ブラックに近づくほど発達障害の明確な特性となり、ホワイトに近づくほど個性ということになります。

グレーゾーンは、発達障害の特性そのものが明確にあるわけではなく、環境などにより特性が強くなったり弱くなったりします。

グレーゾーンの中でもブラックに近い場合は、発達障害と診断されることもあれば、されないこともあり、それがグレーゾーンの難しさの1つとなっています。

※本稿は、『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

「発達障害」をもっと詳しく

「発達障害」のニュース

「発達障害」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ