『クローズアップ現代』で《子どもの発達障害》特集。グレーゾーンの子を前に大人は「発達が遅れているだけ」「追いつくのでは」と考えがちだけど…特別支援教育専門家「初期対応は<反対>に考えてみて」

2025年4月15日(火)18時51分 婦人公論.jp


早めに見つかれば…(写真提供:Photo AC)

2025年4月15日の『クローズアップ現代』は、「『子どもが発達障害と言われたら…』拡大する“5歳児健診”」がテーマ。児童精神科医・神尾陽子先生がその最前線に迫ります。そこで特別支援教育の専門家・前田智行さんが<子どもの発達障害>について解説した、2024年10月03日公開の記事を再配信します。
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500名以上の子どもの支援に携わってきた前田智行氏は、「実は私自身幼いころから問題行動が目立つ子どもでした」と言います。当事者であり支援のプロフェッショナルだからこそわかる、「今本当にすべきこと」とは?「子育ての突破口が見えた!」と共感・感謝の声が多数の著書『「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ! 発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方』から一部を抜粋して紹介します。

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医療は一生もの


昔は、病院は病気になったら行く場所であり、治ったら終わり、という関係性でした。

しかし、高齢化が進み、生活習慣病などが増えている現代では、定期的に病院に通いながら生活する、という生活スタイルが増えています。

発達障害の子どもは、自律神経が不安定だったり、風邪をひきやすかったり、アレルギーやその他疾患にかかりやすいことが知られています。

そのため、発達障害、そしてその他の病気を含めて、定期的に病院や福祉施設を利用しながら生活するスタイルが求められます。

現在は、児童発達支援事業所や、放課後等デイサービスも増えています。 そして、今、医療福祉は、「困ったときに行くもの」ではなく、生活の一部とみなして、生涯つきあっていく生活を構築することが、発達障害の子を取り巻く環境で求められています。

早く対策できたらラッキー


発達障害の行動を一部持っているが診断はおりない。あるいは知能指数がIQ71〜84で、支援を必要とする場面が多いものの、支援制度が少ない状態の子ども。

彼らは「グレーゾーン」の子どもと呼ばれています。正式な診断名ではありませんが、園や学校では行動面で課題が大きく対応に悩んでしまうことも多く、相談が増えています。

グレーゾーンの子どもを見ると、大人としては、「たまたま発達が遅れているだけではないか?」「少ししたら追いつくのではないか?」と考えて、様子見としてしまうこともよくあります。

このような、初期対応については、反対に考えてみることをおすすめしています。

たとえば、「もう少し様子を見ましょう」ではなく、「グレーゾーンであれば、早めに見つかってよかったですね。よければ療育に参加してみませんか?

今のうちに発達を促せば、周囲に追いついてくるかもしれません」というように考えたほうが、将来のリスクを減らすことができます。

すっからかんになると、話を聞く力が発達する


発達障害の子どもは、話を聞く力の苦手さを持つことが、多い傾向があります。

これは、こだわり行動や、途中で話を忘れる不安などから、自分の話を止めることができず、聞く体制へ切り替えができないためです。

この状態で、「相手の話を聞きましょう」と指導するのは特性的に厳しいですし、本人にも不満やストレスが溜まります。

そこで、基本的に子どもの話は「最後まで聞ききる」ことがおすすめです。「最後まで」というのは、何分、何時間でも聞くということです。

話が止まったら、「もっとないの?」「続きは?」とさらに追求してみましょう。そこで本人が、「もうないよ!」と言って、頭の中がすっからかんになれば、そこで初めて「相手の話を聞く」という姿勢に切り替えられます。

このようにして、聞く経験を積んでいくと、話す聞く=100:0だった割合が、徐々に50:50に近づけることができます。

なお、大人は話を聞き続けるのは大変なので、複数人で分担して、協力して話を聞くことがおすすめです。

後ろから少しずつ教える


未就学の時期は、着替え、歯磨き、トイトレ(トイレトレーニング)など覚えることがたくさんです。そのため、特別支援が必要な子の中には、嫌になって投げ出す子もいます。

そんなときは、後ろから教えてみるのがおすすめです。

後ろからというのは、はじめから子ども1人でさせるのではなく、大人が一緒にすべての動作のガイドをしながら、最後のステップだけを子ども本人にさせるということです。

たとえば、パンツやシャツ、ズボン、靴下、帽子を身につけてほしい、と思ったときは、パンツやシャツ、ズボン、靴下までを一緒に手伝いながら身につけさせ、最後の帽子だけは、子どもが自分で被るようにうながします。


後ろから少しずつ教える(写真提供:Photo AC)

1つの動作をすると、「完了」となるので、それが子どもの成功体験になります。次に、パンツやシャツ、ズボンだけを一緒に行い、靴下と帽子を自分でやってもらいます。

このように、完成の一歩手前から、少しずつサポートを減らして、できる部分を増やしていきます。

大人は手伝う箇所が多く、少し大変かもしれませんが、子どもは最初の段階で、成功体験を多く積めるので、モチベーションが継続しやすく負担が少ない教え方です。

いろいろな場面で応用が可能な「逆行連鎖」


また、この、「後ろから教えていく」考え方は、行動分析学では逆行連鎖といいます(前から教えていくのは順行連鎖)。この考え方は、いろいろな場面で応用が可能です。

たとえば、不登校の子どもの支援場面では、再登校の際に、いきなり1時間目から登校しようとすると、3時間目あたりでエネルギーが切れて、「やっぱりダメだった」と失敗体験になってしまいます。

しかし、後ろの6時間目から再登校すれば、6時間目を頑張って帰りの会で帰宅、という形で成功体験として終えられます。

そこから、5時間目から登校、給食時間から登校、4時間目から……と徐々に逆行して登校時間を伸ばしていけば、成功体験を積みながらできますので、自己肯定感も高まりますし、メンタルへの負担を最小限に抑えられます。

このように、この方法はさまざまな場面で応用が可能です。

※本稿は『「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ! 発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方』(大和出版)の一部を再編集したものです。

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