<103万円の壁>が引き上げられるのは結局トク?それともソン?ファイナンシャルプランナー「目先の税金や保険料を節約するより、元気で働ける人ならば…」
2025年3月28日(金)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
所得税の課税が生じる年収水準を表す<103万円の壁>を引き上げる改正案が議論されています。税金や年金など、お金に関するさまざまな制度が変わりつつある今、あらためてお金の勉強をしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんがお金の新しいルールを解説した著書『知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール』から、一部を抜粋してお届けします。
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妻の気持ちQ.「年収の壁」って超えたら損ですよね?
先生の答え A.「壁」を超えなければ将来的にジリ貧です
扶養の範囲内で働く妻がずっと気にしてきた「年収の壁」。2024年の秋に突如として「103万円の壁」が話題になりました。控除額が増えれば実質的な減税になり、その恩恵を受ける人が増えることになります。
その一方で、「106万円の壁」をなくし、労働時間のみで判断することになりそうです。こちらは厚生年金に加入する人を増やそうというもの。
社会保険料の負担が増えるとなった途端、
「何が得で何が損なのかわからない!」
「パートのシフト減らさなきゃ」
「いっそのこと働かないほうが得なのでは?」
などと、誰しもが混乱しているように見えます。無理もありません。所得控除や社会保険の仕組みは、[働く夫+扶養される妻・子]という世帯構成を前提にしたものなので、現代にそぐわなくなってきたのです。今は、時代に合わせて制度を少しずつ作り変えている途中です。
本当に得なこととは
現在、30〜40代の人たちと親世代とを比べると、妻の側から見える景色はずいぶん変わりました。
昔はどんな夫でも毎年お給料が上がり、定年まで企業に雇ってもらえましたが、今はそうはいきません。「専業主婦の母が幸せそうだから自分もそうなりたい」と願ったところで無理なのです。
『知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール』(著:井戸美枝/講談社)
コロコロと変わる制度に合わせて働く時間をちょっと減らしたりして、目先の税金や保険料を節約することが本当に得なのでしょうか? 夫の扶養でいることが安心で堅実な生き方なのでしょうか?
元気で働ける人なら、壁を超え、スキルを身につけてステップアップし、自分のお金と年金や社会保険、何よりも自由を手に入れたほうが得なのでは……?
★共働き世帯は1985年から70%以上増え、1200万世帯を超えました。
妻の疑問Q.103万の壁が123万に? それってお得ですか?
先生の答え A.減税なので、すべての働く人が得します
103万円の壁が引き上げられて、123万円になります。給与所得控除と基礎控除がそれぞれ10万円ずつ増えて、実質的な減税に。働く人すべてに恩恵があります。
扶養に入っている妻にとっては、いわゆる「税金の壁」が変わることに。所得税の支払いが生じる年収が123万円になるので、122万円までは所得税の負担なしで働くことができます。
ただ、そもそも2024年時点で、103万円の壁は妻にとってあまり重要ではありませんでした。税金は、壁を超えた途端に重くのしかかるのではなく、超えた分の所得に応じて少しずつかかってくるものだからです。「壁」というイメージは実態に合いませんし、ここを意識して働き控えすることも意味がないといえるでしょう。
103万円の壁が意識されてきたワケ
これまで103万円の壁が意識されてきたのは、妻の所得税よりも夫の配偶者控除の影響によるところが大きかったのではないでしょうか。
かつては、妻の年収が103万円を超えると、配偶者控除を受けられなくなり、夫の手取りが減ってしまったためです。夫の手取りのために妻が収入を制限するというところに「はて?」と思うのですが……。
そんな配偶者控除の壁も、すでに解消されています。妻の年収150万円までは配偶者特別控除を満額受けられるので、夫の手取りが減ることはありません。また、103万円の壁の引き上げにともなって、150万円の壁も160万円に引き上げられます。
今後は、妻の年収が160万円を超えたところから夫の配偶者特別控除が減り始めます。控除が完全になくなるのは201万円で変わりません。
★夫の会社の「扶養手当」の壁が103万円の場合もあります。
※本稿は、『知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール』(講談社)の一部を再編集したものです。
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