誤食で食中毒も!? フキノトウに似た有毒植物「ハシリドコロ」に注意

2025年4月19日(土)20時45分 All About

【薬学部教授が解説】フキノトウと見た目が似た「ハシリドコロ」は有毒植物で、誤食すると食中毒のリスクがあります。誤食してしまった場合の症状、対処法、フキノトウとの見分け方のポイントをご紹介します。

冬の終わり頃、雪解けと共に芽を吹き出す「フキノトウ」は、春の山菜の代表格です。独特な香りと苦みがあり、天ぷらや和え物、おひたしなどにして食べると、おいしいですね。
意外と知られていませんが、「フキノトウ」は植物の名前ではありません。漢字では「蕗の薹」と書き表される通り、日本原産の「フキ(蕗)」の花のつぼみのことです。
フキは、土の中で地下茎を横に伸ばしながら成長し、春になると花茎を地表に出して「フキノトウ」となります。中に小さい花がいくつもかたまっているのが特徴で、その外側にあってレタスの葉のような部分は「苞(ほう)」または「苞葉(ほうよう)」と呼ばれます(葉のように見えますが、葉ではありません)。

フキノトウに似た有毒植物「ハシリドコロ」による食中毒

フキノトウに見た目が似た「ハシリドコロ」という植物があります。ハシリドコロは有毒植物で、フキノトウと間違えて食べてしまったことによる食中毒事件も発生しています。
ハシリドコロは、ナス科の多年草です。フキと同じように地面の中で地下茎を伸ばして春先に芽を出します。地上部が伸びて、多くの葉をつけると、フキとはまったく違う見た目になるのですが、新芽の葉の丸まり方や色はフキノトウに似ています。
苞がまだ開かずミニキャベツのような見た目のフキノトウだと勘違いし、ハシリドコロの新芽を採ってしまうことがあるようです。
ハシリドコロは、葉や花など草全体に強い毒性を持っており、新芽にも毒成分が含まれています。具体的な毒成分として知られる化合物は、ヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどです。
これらの毒は、ゆでたり油で揚げたりする程度の加熱では分解されません。食べてから1〜2時間後に、嘔吐や下痢、腹痛などの消化器症状に加え、めまいや幻覚、異常な興奮といった神経症状を含む中毒症状を起こします。
食べた量が多いと命にかかわることもあるので、もし中毒症状が出て誤食に気付いた場合は、すぐに病院を受診しましょう。適切な治療を受けて、1日以上経過して症状がおさまれば大丈夫です。
とはいえ、ハシリドコロの誤食の報告数は多くはありません。厚生労働省のデータによると、近年の発生数は平成27年から令和6年までの10年間で2件で、3人が体調不良を訴えたと報告されています。死亡例の報告も幸いありません。

フキノトウとハシリドコロの見分け方・違い

ハシリドコロを誤食しないために、フキノトウとの見分け方のポイントとして、以下の2点を知っておくとよいでしょう。
・フキノトウの新芽の苞には毛が生えているが、ハシリドコロの新芽の葉には毛が生えていない
・フキノトウの新芽は苞が開くと中に花のつぼみが多くかたまっているのが見えるが、ハシリドコロの新芽には花のつぼみがない
安全に気を付けて、ぜひ春の山菜を楽しんでください。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

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