ラーメン官僚が教える静岡県の本当においしいラーメン店|『Noodle Dishes粋蓮華』(焼津市)

2025年4月20日(日)19時30分 食楽web


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●年間700杯以上を食べ歩く“ラーメン官僚”こと田中一明氏が、日本全国のローカル・ラーメンの最新事情&行く価値のある名店をご紹介。今回は静岡県のラーメンシーンに迫ります。

 静岡県はラーメンの実力店・人気店が全域に隙間なく存在する“ラーメン激戦県”。一般に静岡県は大きく〈東部〉、〈中部〉、〈西部〉の3つに分けられる。

 具体的には、熱海市・三島市・沼津市・富士市・富士宮市などが〈東部〉、静岡市・焼津市・藤枝市・島田市などが〈中部〉、菊川市・掛川市・袋井市・磐田市・浜松市などが〈西部〉に属する。

 以下、この3つのエリアごとのラーメンシーンの特徴と代表店舗をご紹介していこう。

東京・神奈川の影響がみられる東部のラーメン

 関東圏から近い〈東部〉には、東京・神奈川のラーメンシーンの影響を強く受けた店が目立つ。例えば、10年以上にわたり〈東部〉の覇者として名声を轟かせた実力店『めん処 藤堂』 (三島市・2017年閉店)は、神奈川県の名店『中村屋』の出身だ。ちなみに、『藤堂』のDNAは、『麺屋 みのまる』(三島市 ※本店は神奈川県)や『麺や 一徳』(伊東市)といった人気店へと受け継がれている。

 そのほか、魚介を駆使した淡麗ラーメンの『中華そば うお静』(熱海市・2023年開業)や、県内外のラーメンマニアの注目の的となっている『一条流中華そば 智颯』(三島市・2024年開業)は、共に都内からの移転組だ。神奈川が生んだ日本ラーメン界のエース『らぁ麺 飯田商店』も、沼津市に店舗を展開している。

〈東部〉の代表的なラーメン店は以下の通り。

・『雨風本舗』、『わんたんや』、『麺匠うえ田』(すべて熱海市)
・『福々亭』(伊東市)、『一匹の鯨』(伊豆の国市)
・『鈴福』、『めんりすと』、『味のなかむら』(すべて三島市)
・『らーめん専門やくみや』、『真 卓郎商店』、『春来軒』(すべて沼津市)
・『田島ラーメン』、『札幌ラーメン北道』(共に富士市)
・『麺屋ブルーズ』(富士宮市)

焼津・藤枝・島田の3市が激アツ。静岡中部のラーメン

〈中部〉には、古くから、藤枝市、焼津市、島田市を中心に“朝ラーメン”文化が存在するのが大きな特徴だ。1919年創業という老舗中の老舗『マルナカ』 (藤枝市志太)は、日本で初めて“朝ラーメン”の提供を始めた店で、同店の味を模した“志太系(マルナカ系)”と呼ばれるご当地麺が藤枝市志太エリアを中心に広がっている。

 そしてここ10年ほどの間に、その“朝ラーメン”文化が地域全域へと急拡大。現在、〈中部〉のラーメン店の大半は「朝営業-中休み‐昼営業」の営業形態を採っており、夜営業を行うラーメン店が極めて少ない。

 加えて〈中部〉は、ラーメンマニアからの注目度が高い実力店が、県内で最も多く揃うエリアでもある。

・『麺や厨』、『ABE’s』、『らぁ麺もち月』(共に静岡市)
・『麺屋 才蔵』、『麺行使 伊駄天』、『粋蓮華』、『麺創房LEO』(すべて焼津市)
・『ちっきん』、『麺屋 花枇』、『麺屋 八っすんば』(すべて藤枝市)
・『らぁ麺 めん奏心』、『麺屋燕』、『ラーメン ル・デッサン』(すべて島田市)

 など、開業から10年、20年を経た錚々たる実力店と、ここ数年の間にオープンし、現在メキメキと頭角を現しつつある新進気鋭店とが切磋琢磨し合っている。

 とりわけ、2025年現在、焼津市、藤枝市、島田市の3市は、ラーメン的に“激アツ”としか表現しようのない熱狂のさなかにあり、この3市を制せずして静岡のラーメンシーンは語れない状況だ。

西部のラーメン

〈西部〉は、〈中部〉と質的には似ている。〈中部〉から“朝ラーメン”文化がじわり浸透し、朝昼営業の店が急増した。なお、名店が集中する浜松市は静岡ラーメンシーンを語るうえで決して外すことができない“最重点攻略エリア”だ。代表的なラーメン店は以下の通り。

・『麺屋さすけ』(掛川市)
・『menya787』、『ラーメンこころ』(共に菊川市)
・『麺屋 破天荒』、『麵や 向日葵』、『らーめんユタカ』(すべて袋井市)
・『いこい』(磐田市)
・『麺屋 龍壽』、『僕家のらーめん おえかき』、『浜田山』、『日歩未』、『青空キッド零壱』、『AMORE』、『荒野のラーメン』、『つけめん京蔵』、『浅草軒分店』(すべて浜松市)

 以上、見てきたとおり静岡県は東西155kmにわたり、少なく見積もっても数十軒もの必訪店が点在する。他の県にも増して頻繁かつ定期的に足を運び、腰を据えて攻略を進めようとする強固な意志がなければ、全容把握は難しいだろう。

『Noodle Dishes粋蓮華』(焼津市)のラーメンの魅力とは?

 今回、ご紹介するのは静岡県〈中部〉における一大ラーメン激戦エリア・焼津市の『Noodle Dishes粋蓮華(すいれんか)』。2009年5月に『麺’S食堂 粋蓮』として開業し、2021年10月、屋号を変え現在地に移転した一軒だ。

 店舗の場所は、焼津港からほど近い、住宅街のド真ん中。ここでラーメンを食べる、という明確な目的意識がなければ、およそたどり着けないような場所に佇んでいる。

 同店の営業開始時刻は10時。「朝ラーメン」の本拠地のひとつである焼津市の土地柄に準拠し、やや早めの時間帯に設定されているが、それでも、この地域のラーメン店の平均的な営業開始時間に比べれば、スタートは遅いほうだろう。

 なお、同店は、18時〜20時半まで夜営業も実施している。昼までにその日の営業を終えてしまう店舗が圧倒的多数を占める中、同店ほどの実力店が、夜間も店を開けてくれることは、食べ手にとってはこの上ない僥倖だろう。

 現在、同店が提供する麺メニューは、「地鶏Noodle」、「和風Noodle」、「柚子Noodle」、「醤油」及び「塩」など。それ以外にも、メニューリストを一瞥しただけでは、全容が把握し切れないほど夥しい種類の「限定メニュー」が用意されている。人気の理由のひとつが、潤沢な「限定メニュー」の存在であることは、疑いようがない事実だ。


「地鶏Noodle醤油」は“かけ”で登場。トッピングは別皿が特徴[食楽web]

 定番中の定番である「地鶏Noodle醤油」は「かけ」スタイルで供され、トッピングは別皿で提供される仕様。麺とスープだけでも、十分、食べ手を満足させることができる。そんな自信があるからこそ、なし得る業だ。

 まずは、スープをひとすすり。スープ中に大量に含まれる地鶏の穏やかで上質なうま味が、香り豊かな鶏油と呼応し、味蕾と鼻腔をしっとりと潤してくれる。飲み干し際、喉元でグンと伸び上がるカエシの風味も秀逸で、食べ手に息つく暇(いとま)を与えない。

 このスープに合わせるのは、店内に設置された製麺室で丹念に打ち込んだ自家製麺。スープに馴染むにつれて右肩上がりにしなやかさが増し、風雅な香りが立ち上がる、すすり応えのある長尺ストレート麺だ。スープとの相性もこの上なく良好で、トッピングを一度も丼に投入することなく、麺とスープだけで、ペロリと完食してしまった。

 丼全体から漂う厳かな「和」の趣も、食べ手のテンションを盛り上げる“触媒”として有効に機能。焼津市を代表する実力店が、腕によりをかけて創る渾身の1杯。是非一度、ご堪能あれ。

●SHOP INFO

Noodle Dishes粋蓮華

住:静岡県焼津市田尻北1548-1
営:10:00〜14:30(14:00LO)、18:00〜20:30(20:00LO)
休:金曜(木曜は昼営業のみ)
※カウンター10席
※駐車場あり(計16台)

●著者プロフィール

田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店開拓・知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンをエリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。

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