トランプ関税後の新NISA、投資初心者はどう対応するべき? -ウェルスナビ利用者の3つのお悩みに回答
2025年4月24日(木)15時22分 マイナビニュース
世界経済に大きな影響を与えている「トランプ関税」。日経平均株価も一時3万1,000円台まで下がるなど、株式市場は混乱した状況だ。そんな中、2024年1月にスタートした新NISAについて、「このまま投資を続けて良いのだろうか」と悩む人も多いだろう。
そこで今回は、預かり資産・運用者数ともにNo.1を誇るロボアドバイザー「ウェルスナビ」主催のウェビナーの様子をご紹介し、トランプ関税後の新NISAについて投資初心者はどう対応すべきかを解説する。
■今は投資を休むべきか、それとも続けるべきか
ウェルスナビセミナー講師・PRチーム 佐藤健氏によると、4月はじめに発動されたトランプ関税の影響によって現在のマーケットは不安定な値動きになっており、ウェルスナビの利用者も不安を感じている状況だという。
そこで今回のウェビナーでは、ウェルスナビ利用者から寄せられた3つのお悩みをもとに、投資初心者は新NISAについてどう対応すれば良いのかが紹介された。
まず、現在のNISAの状況から見ていくと、2024年に新NISAがスタートしたのを機に、NISA口座数は大きく増加している。成長投資枠では日本株が半分近く買われており、また、13%が世界株に投資する投資信託を購入している。
一方、つみたて投資枠では、世界株に投資する投資信託の人気が非常に高い。その中心にあるのがアメリカだが、「S&P500指数」(アメリカを代表する約500社の企業が採用されている株価指数)の推移を見ると、2024年に新NISAがスタートした当初は非常に堅調な滑り出しだったものの、昨年の7月には大幅に下落する局面があった。この時、日経平均株価は過去最大の下落幅を記録している。そして現在は、「トランプ関税後の回復はいつになるか」というような状況下にある。
ウェルスナビでは、創業当初から一貫して「長期・積立・分散投資」の大切さを発信しているが、佐藤氏はこのうち「長期投資」が最も難しいと感じているようだ。
たとえば、利用者からは「足元のトランプ関税のショックを受けて、このまま投資を続けていいのか迷っている」という悩みが寄せられているという。積み上げてきた利益が急に減ってしまった今のような状況下では、「一度投資を休み、回復したタイミングで再開しようか」と考える人が多いようだ。
「しかし、このような状況だからこそ当社では、『淡々と投資を続けましょう』とお伝えしています」と佐藤氏は強調する。そもそも、短期の相場を正確に予測することはプロでも難しい。だからこそ、淡々と長期的な視点で資産運用を続けることが大切なのだ。
その背景には、「全世界のあらゆる資産に分散投資をすることにより、今後の世界経済の成長の恩恵が受けられる」という考えがある。短期的な先行きの不透明感や突発的なショックはこれからも何度も起こりうるが、そのショックを乗り越えて長期的な視点で取り組むことで資産運用を成功できる。また、こうした下落相場だからこそ、いわゆる「ドルコスト平均法」により、安く購入して元の水準に戻った際にプラスの運用成績が期待できるのだ。
それに、たとえばコロナショックのように大きく相場が下がる局面もあるが、その直後に急激なリバウンドが訪れることも往々にしてある。ウェルスナビにおいて「リスク許容度3」の設定で毎月3万円積み立てた場合のシミュレーションを見ると、1年のうちリターン上位5つの月に積立をした場合としなかった場合では、30年間で約1,000万円ものパフォーマンスの差を生み出しているのだ。
「こうしたことからも、地味でも『長期・積立・分散』がやはり資産運用の王道であり、重要な要素であると当社では考えています」と佐藤氏は解説した。
■自身の「リスク許容度」に沿った運用が大切
ウェルスナビ利用者から寄せられるお悩みには、次のような「投資のストレス」に関するものもある。Bさんが投資を始めた昨年冬を起点とすると、自身の大切な資産がプラスマイナスを行き来するような状況であり、「その都度一喜一憂してしまい心が休まらず、投資を辞めたいという心情があったのでは」と佐藤氏は推察する。
このような悩みに対してウェルスナビでは、「ご自身の取れるリスクに沿った資産運用をしましょう」と伝えているという。そもそも投資は「余裕資金で」という前提だが、改めてリターンの裏側にあるリスクにも目を向けることの重要性を佐藤氏は強調する。
ウェルスナビでは、5つの質問に答えることで、5段階のリスク許容度から自身に合うものが選択できる。ただ、佐藤氏によると、これはウェルスナビに限らず、資産運用しているなら誰もが意識すべきポイントだという。
たとえば、安定的な収入がある、働く期間が長くかつ運用する期間も長い、という人はリスクが取りやすく、比較的株式の比率が多いハイリスク・ハイリターンなプランが選べる。一方、リタイアが間近に迫っているなら、リスクは抑えたほうがいい。いずれにしても大切なのは、「値動きの異なる資産を組み合わせて全体のリスクを抑えつつ、かつ自身の取れるリスクに沿った長期的な運用を続けること」だと佐藤氏は話す。
人気の高いアメリカ株のみで構成される投資信託も、ウェルスナビのリスク許容度に当てはめると、リスク7や8といった非常に高いレベルになる。余裕資金で運用する前提で、預貯金もしっかりあるならバランスが取れている可能性もあるが、多くの資産を株式のみが占めているなら、ライフステージによってはリスクを取り過ぎている恐れもある。
今回の株価急落について佐藤氏は、「改めて自身が取れるリスクがどれくらいなのかを体感できた場面ではないか」と語った。なお、ウェルスナビで長期投資をした場合のシミュレーションでは、運用期間中に下落する局面があっても、運用期間が長いほど高い運用益が得られている(下図Cさん)。
「これから資産運用を検討している方、最近スタートした方は、未来のCさんをイメージして淡々と長期的な視点で続けて下さい」と佐藤氏はアドバイスした。
■迷ったら一括投資も積立投資もどちらも組み合わせる
また、現在のような非常時のみならず、普段から「手元の余裕資金を一括で投資したほうがいいのか、それとも分割で投資したほうがいいのか」という質問は多いという。これについて佐藤氏は、「迷ったらどちらも組み合わせてください」と切り出した。
たとえば、2008年のリーマンショックを起点にして元の水準に戻るまで、およそ3年かかっている。一括で投資をしていた場合は、元に戻るのに3年かかったということだが、この期間積立をしていた場合は、+ 23.5%のリターンを得られたことになる。一方、2012年のアベノミクス相場から3年間、一括で投資をした場合は+ 60%以上のリターンが得られたことになるが、積立をしていた場合は+ 26.2%にとどまる。
本来、資産運用を考えるうえでは、余裕資金という前提のもと、一括で投資をしたほうがより長期的な運用ができるため、その意味では一括の方が合理的ではある。しかし、運用期間中にはどうしても迷いが生じる場面があるし、積立と一括、どちらが最終的にリターンが高くなるかは誰にもわからない。だからこそ、迷ったら一括と積立を組み合わせてより長期的な視点で資産運用をするのが有効なのだ。
最後にウェビナー参加者より、「今後のトランプ政権で為替がさらに変動した場合、投資態度を変える必要はあるか」という質問が投げかけられた。これに対して佐藤氏から、「まず、資産と為替は分けて考えるべき」との回答があった。
資産運用をするうえで為替の影響はあるが、長期で運用することでその影響度を下げることはできる。実際、金融資産をドル建てと円建てで保有した場合のシミュレーションでは、運用成績の差はほとんど生じていない。
そして、「相場に合わせて投資態度(ウェルスナビにおけるリスク許容度)は変えるべきではない」と佐藤氏は話す。あくまでも自身の投資の目的に合った資産運用を行うことが大切だからだ。ただし、長期投資を行ううえで、今のリスク許容度では継続が難しいと感じる場合は、リスクを抑える必要があるという。どのような相場であっても、やはり「長期・積立・分散」という資産運用の基本を守ることが投資を成功させるカギとなりそうだ。
武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら