相場展望5月22日号 米国株: トランプ関税ショック忘れ株高⇒マイナス面思い出し下落局面か 日本株: 日経平均は大きく出戻るも⇒足元の悪さで調整局面か

2025年5月22日(木)11時12分 財経新聞

■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
 1)5/19、NYダウ+137ドル高、42,792ドル
 2)5/20、NYダウ▲114ドル安、42,677ドル
 3)5/21、NYダウ▲816ドル安、41,860ドル

【前回は】相場展望5月19日号 米国株: 米国債格付け1段階下げ・トランプ関税一時停止後に注目 日本株: 決算発表終了、EPS低下、主要株が軟調⇒慎重さが求められる

●2.米国株:トランプ関税ショックを忘れ株高⇒マイナス面を思い出して下落局面か
 1)NYダウはトランプ関税ショック前の高値を上回って上昇、楽観が過ぎ⇒反落へ
  ・NYダウの推移
    3/25  42,587ドル
    4/08  37,645  : ▲4,942ドル安
    5/19  42,792  : +5,147ドル高
    5/21  41,860  : ▲932ドル安

  ・まるで「トランプ関税ショック」がなかったような戻りの勢いであった。しかし、「トランプ関税」は各国と「上乗せ部分」について協議中である。トランプ氏は、相互関税のうち基本税率10%は協議対象外としている。鉄鋼・アルミニウムの25%、自動車の25%も維持したままである。

   ・英国とはトランプ関税について協議し合意したと言うが、米国にとって英国は貿易黒字国である。英国は、本来のトランプ氏による貿易赤字解消の交渉対象国ではない。よって、事実上、米国の貿易赤字対象国との協議成立はまだ1カ国も合意できていない。
   ・インドとも合意が近いと米国政権は伝えたが、これは各国に合意に向けて圧力をかけたに過ぎない、トランプ閣僚のパフォーマンスである。
   ・ベトナムも、トランプ家族のベトナム投資容認や米国製戦闘機購入など、自国が有利に収まるように、したたかな交渉を繰り広げている。
   ・韓国とも合意が近いと、米閣僚の発言が伝えられたが、その後、続報がない。
   ・EU(欧州連合)は米国と対等に渡り合っている状況が続いたままである。
   ・中国とは関税率をそれぞれ▲115%引下げたと言うが、「大きく吹っ掛けた部分の一部修正に過ぎない」。引下げたと言っても、米国は145%⇒30%にしただけである。鉄鋼・アルミ・自動車・太陽光発電などの高関税率は維持したままである。中国からの少額(800ドルまで)輸入品に対し1個につき100ドルの関税を課すとしているが、維持したままである。以上のような、米国・中国の関税交渉の状況であり、最終合意ではなく、第1次交渉の部分合意とみるべきで、交渉は継続する。

  ・以上のようにトランプ高関税は依然として存在している。  つまり、米国の物価上昇(インフレ)懸念は高水準である。米国のインフレ率が高ければ、FRBは金利を引上げてインフレ退治に乗り出すことになる。「高金利は相対的に株式の割高感を意識」させるため、株式は売られる局面を迎えることになる。

  ・「トランプ関税」⇒「高金利」⇒「株価下落」は免れない。NYダウは5/20から2日間で▲932ドル安となったが、トランプ高関税のマイナス面を思い出して再意識した動きの可能性がある。慎重なスタンスを保持したい。

 2)米国株は5/20〜21に上昇一服か
  ・株価指数の上昇一服要因
    ・米国・国債格付け引下げで金利上昇。
      ・米国政府の財政悪化懸念と信用格付けの引下げを受け、長期金利が上昇し株式の相対的割高感が意識された。
    ・連邦政府の財政悪化を警戒した売り。
    ・1〜3月期決算発表シーズン終了し好材料出尽くし。
    ・利益確定の売り。
      ・3月上旬以来の高値を付け、利益確定売りが出やすかった。
    ・持ち高調整の売り。

 3)トランプ関税による物価上昇(インフレ)本番はこれから
  ・アップルのiPhone16価格をみても高騰が約束されている。トランプ関税と米国内製造により、現行17万円⇒21〜50万円と高値が予想される。

 4)トランプ氏の目標(1)財政赤字の解消(2)債務超過の解消に暗雲
  ・トランプ米国大統領は米国財政赤字を解消すると政策に掲げていた。マスク氏の政府効率化省(DOGE)の司令官として、連邦政府を縮小し▲2兆ドル削減を公約した。

  ・しかし、結果は▲1,600億ドルと当初目標の▲8%減しか達成できなかった。そのマスク氏は5月にテスラ経営に重点をシフトした。

  ・トランプ氏の歳出拡大意欲は強い。
   ・所得減税の延長と恒久化。
   ・軍事予算の膨張。
   ・次世代ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム構想」を打ち出したが、25兆円の巨額支出増となる案である
   ・製造業の回復には、巨額の補助金が必要。特に、造船業の復興には30年単位の補助金政策が必要となる。

  ・トランプ政策により関税収入は大幅増収が見込めるが、国債金利の上昇で金利負担が急増するため、減税などの源泉を賄いきれない。
   ・結果的に、トランプ氏は自らの政策の結果、財政赤字を膨張させることになる可能性が濃厚である。
   ・トランプ氏の目標(1)財政赤字の解消(2)債務超過の解消に暗雲が立ち込めそうである。

●3.トランプ氏、米国の対外援助削減はアフリカに「壊滅的」影響、他国に拠出呼びかけ(ロイター)
●4.メキシコの対米国自動車輸出、平均関税率15%と経済相、軽減措置で(ロイター)
 1)米国の自動車関税率25%のところ、関税軽減措置で15%になると述べた。
 2)米国商務省が認めれば、25%の関税は車両全体の価値ではなく、非米国製部品にのみ適用される。

●5.米国・厚生省、薬価引下げの具体目標を数週間内に業界に通知(ロイター)
●6.トランプ氏、減税案可決へ共和党に団結を要請、反対派の説得に苦戦(ロイター)
 1)同法案の内容
  ・トランプ第1次政権で実施された減税措置の延長。
  ・一部のチップ・残業代への課税免除。
  ・低所得層向けの公的医療保険「メディケイド」適用の厳格化。

 2)この法案により、連邦政府の債務36兆2,000億ドルが、3兆〜5兆ドル増加する可能性がある。

 3)共和党議員の同法案に対する数名の反対者は、債務増加を懸念している。

■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
 1)5/19、上海総合+0.12高、3,367
 2)5/20、上海総合+12高、3,380
 3)5/21、上海総合+7高、3,387

●2.中国4月鉱工業生産は前年比+6.1%と3月+7.7%から鈍化、小売売上高も減速(ロイター)
 1)4月小売売上高は+5.1%伸びたが、前月の+5.9%増から鈍化、予想は+5.5%増だった。
 2)1〜4月期の固定資産投資は前年同期比+4.0%増と、予想の+4.2%増を下回った。1〜3月期は+4.2%増だった。

■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
 1)5/19、日経平均▲255円安、37,498円
 2)5/20、日経平均+30円高、37,529円
 3)5/21、日経平均▲230円安、37,298円

●2.日本株:トランプ関税発表前の高値まで取り戻す⇒しかし、米国との協議は見通せず
 1)日経平均はトランプ関税発表前の高値まで取り戻す⇒しかし、協議は見通せず
  ・日経平均の推移
     3/26  38,027円
     4/07  31,136   :▲6,891円安
     5/13  38,183   :+7,047円高
     5/21  37,298   :▲885円安

  ・日経平均は米国株の上昇を受けて、引上げられてきた。この戻り幅+7,047円の大きさは、トランプ関税ショックを忘れたかのようだ。ここに「危うさ」がある。

  ・米国の物価に、実質的に関税の影響が現れるのは、これからである。米国の輸入企業が在庫を抱えている間は、値上げ実施は遅れる。消費財は夏場から本格的に関税の価格転嫁が進むと予想する。資本財の値上がりは数か月分の在庫がなくなる秋口以降からと推測する。クリスマス商戦あたりから、関税を理由とした値上がりラッシュとなろう。

  ・日本は、トランプ関税の協議は始まったばかりで、3回目は5/23からとなる。日本・米国の関税協議内容は平行線で、妥協点はまったく見えていない。

 2)日経平均の戻り相場に一巡感
  ・騰落レシオ(25日)は5/19に146.29%と高い。
  ・反落リスクが高まっている。
  ・円相場が円高 5/21には143円台に突入した。

 3)長期国債利回りが急上昇、財務省による5/20の20年利付国債入札が不調で
  ・長期金利(10年債利回り)の推移
     5/19  1.490%
     5/20  1.523
     5/21  1.527

  ・30年国債の入札も不調であった。

  ・日本の長期金利が上昇しているが「悪い金利上昇」となる可能性がある。
   ・日本への信頼性が低下すると、政府の資金調達に当たって金利を引上げないと調達できなくなる。
   ・政治の不安定化も日本の金融コスト上昇につながる。

 4)石破政権が弱体化、参院選挙敗色が濃くなる中で、株式市場の独歩高は困難
  ・江藤・農水大臣5/21、コメ巡る発言で責任をとって辞表提出。
   ・農林族であるにもかかわらず、コメ高騰の抑制もできず、更なる高値招く。その中、5/18講演で「コメを買ったことがない。食品庫に売るほどある」などと発言し、総批判された。

  ・石破首相自身も、衆院1年生議員に15万円商品券渡す問題を起こす。
   ・石破首相も農林族議員で農林大臣にもなっている。有効なコメ高騰対策も打つ指揮もできず、江藤・農林大臣の任命責任もある。
   ・懸案のトランプ関税の協議も一向に進展せず。
   ・二転三転の政策対応で、解決に向かうことなく混迷を深めている。
   ・昨年の衆院選挙大敗の責任も論じることなく、首相・自民党総裁を続投。
   ・自民党の中から公然と反対意見がでるなど、党をまとめられない。与党の公明党も独自主張を強めている。

  ・このような混迷を深める政治の下で、株式市場は独歩高を続けられない。
   ・まして、海外勢が日本株式売買の約6割を占めている。海外投資家は、政治の混迷を嫌う習性がある。国内政治で有効な政策を打てない中、日本株は「売り」に回る可能性が濃厚、少なくとも日本株を「買う」理由がない。
   ・決算発表シーズンも終わり、好材料が乏しくなった時期でもあり、株式相場には慎重なスタンスが良さそうだ。

 5)自民党議員は、「世襲議員」ばかりで「守り」しかできず「現状維持」派
  ・新しい時代を切り開くことは、難しい。
  ・いつしか自民党総裁・内閣総理大臣は「世襲議員」でなければなれなくなった。麻生、安倍、岸田、石破首相と、菅を除けば、世襲議員が連なっている。ここに、自民党が国民離れを起こした原因がある。生まれた時から高級国民の子息で、東京育ち。選挙の時だけ「お国入り」。これでは、国民の生活に寄り添った政治はできない。生活実感を感じる場がなく育ち、「話を聞いただけで政治家家業に勤しむ」。
  ・官僚にとっては、識見の低い世襲議員は御し易い
   ・世襲議員の江藤・農林大臣は辞職したが、「コメは買ったことがない。食品庫に売るほどある」とコメ高騰に苦しむ庶民を馬鹿にして、国民を敵にした。
   ・後任の小泉進次郎・議員も世襲議員である。小泉議員は環境大臣の時の成果として「ゴミ袋有料化」を決めたが、悪評だ。発言も小泉構文といわれ意味不明でひんしゅくを買った。彼にはコメ価格の大幅下落が期待されるが、未知数である。脈絡のない発言はするが、コメ価格の下落という実際の成果を得られるだろうか?
   ・岸信千世・衆院議員も岸家の世襲議員であるが、初選挙時に「岸家の家系図」をとうとうと披露して当選した。政治家としての抱負を述べるよりも家系の浸透を優先させた。政治屋が「代々の家業」であることを認めたようなものである。

  ・政治の革新的リーダーシップもあって日本が「富国」になり、自ずと株価は強烈に高騰することを期待したい。

●3.関税導入の米国向け輸出、自動車中心に4ヵ月ぶりマイナス(ブルームバーグ)
●4.日本4月貿易収支は▲1,158億円の3ヵ月ぶり赤字、予想は黒字だった(NHK)
●5.SOMPO、発行済み株式の3.53%・1,050億円を上限に自社株買い(ロイター)
●6.セブン&アイ、セブン銀行株の一部を伊藤忠に売却方向、コンビニ事業に集中(時事通信)
●7.スーパーに届いた備蓄米は放出したコメの7%に過ぎず(FNN)
 1)この量は、国民が消費する1日程度の量である。(TBS)
 2)農水省「広く届いているかと言われれば、届いていない」。(FNN)
 3)業者間で取引されたコメの価格は再び値上がりし、過去最高値となった。
 4)農林省、備蓄米3回目入札結果を公表、JA全農が全体の96.7%を落札(NHK)

 8.ホンダ、EV投資計画10兆円⇒7兆円に減額、市場鈍化や規制緩和で (ブルームバーグ)
  1)燃料電池車比率の目標引下げ、30%⇒20%程度に          (NHK)

 9,イオン、6月から米国産コメ販売へ、国産コメ平均価格より2割安く       (NHK)
  1)販売価格は4キロ税込み2,864円(本体2,680円)で、5キロ換算で3,350円。
  2)5/4までの1週間の国産コメ平均価格より▲864円安い。

IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
 ・6869 シスメックス    業績堅調
 ・7181 かんぽ生命保険   業績好調
 ・7951 ヤマハ       業績好調

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