初バリで体験したミュージックセラピー。日本人の特異性と可能性…日本人はDNAに幸せ遺伝子を持っている?!

2024年4月26日(金)12時0分 婦人公論.jp


楽器を奏でるシャービンさん(写真提供◎中脇さん)

Perfumeきゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に携わり、アーティストやクリエイターの成功とメンタルの関連性について研究を続けている音楽プロデューサーの中脇雅裕さんの連載「美しくそして健康に 音楽のあるHappy Life」。第27回は「バリで感じた日本人の特異性と可能性!日本人はDNAに幸せ遺伝子を持っている?!」です。

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初バリで体験したミュージック セラピー


先日、バリに行ってきました。初バリ!もちろん仕事です。シャービン ボロリアン(Shervin Boloorian)

という世界的なミュージック セラピスト(音楽療法士)の友人がいるのですが、彼のワークショップを見に、彼の拠点であるバリに行ってきたのです。

シャービンのミュージック セラピー(音楽療法)は様々な楽器と声を使って、今、海外で大流行している心地よい音楽にただ身を任せて癒される「サウンド バス」というスタイルでヒーリング・癒しを提供するものでです。

仕組みとしてはお鈴の様な楽器=シンギングボウルやガラス製の大きなボウルを叩く楽器=クリスタルボウル、それに小さい琴の様な楽器などの楽器演奏と歌声、そしてバリという自然の音も豊かに響いている中で「ハイパー ソニック エフェクト」という聞こえない音の効果を使って心身の癒しを提供するものだと思いました。

この「ハイパー ソニック エフェクト」は20Khz以上の人間の耳では感知できない超高音を聴覚ではなく肌で感じることで、前頭葉の血流が上がって脳の働きが活発になることをいいます。美しさ・快さ・感動などの感覚を強く感じることができたり、免疫力も上がり、ウィルスなどからの感染に強くなったりして、心身の健康が全体に上がるとされています。国内外で様々な研究がなされていて、私も様々なアプローチでこの効果の研究をしています。

特にこの「ハイパー ソニック エフェクト」が面白いのは、脳の快楽を司る部分も活性化させるとされていることで、人間を幸福な状態に導く効果があると言われ、とてもリラックスするという研究結果もあります。

この効果を得るには、実際に自然の中に身を置くことが一番と言われています。これは自然の音、いわゆる、鳥の囀り、虫の声、川のせせらぎ、木々のざわめきなどの音に20Khz以上の耳では感知できない超高音が含まれているからです。その他にも、鈴や鐘などの金属からできている楽器やパイプオルガン、尺八、そして人の声になどにもその高い周波数は含まれていて、それらの音を生で聞くことで「ハイパー ソニック エフェクト」は発現すると言われています。


バリの自然の中で

ワークショップで感じた違和感


シャービンのワークショップはバリという素晴らしい自然の中で行われていることが、大きなヒーリング効果を生んでいるように思えましたし、シャービン自身も「自然との繋がりが一番大事だ」と言っていましたので、その自然環境が生み出す効果はしっかりと意識しているのでしょう。
このシャービンのワークショップには世界中から参加者が集まっていました。ニューヨーク、アイルランド、ニュージーランドなどなど。インドネシア、バリのローカルの方は一人もいなかったのです。
そして、このワークショップは年に6回行われ、それぞれが1週間という期間にも関わらず、すぐに予約がいっぱいになってしまうのだとか。

このワークショップに2日間参加して気がついた事がありました。

参加者の皆さんは1つのプログラムが終わると、それぞれが感想を述べて参加者全員でシェアします。つまり、何を感じたか感想を発表し共有するわけです。私も昨年、アメリカで3度メディテーションのイベントをしましたが、イベント終了後、必ず感想・意見をシェアする時間がありました。「欧米人は意見をシェアすることが好きだから、その時間を取りましょう」と必ず言われたものです。


シャービンさんと私

このシャービンのワークショップでの感想のシェアですが、どんなプログラムの後でも、皆、大体同じことを言います。

それは「みんなと気持ちが一つになったと思う」「Loveを皆とシェアできた」「一体感を感じた」こういう様な意見です。

最初は何も思わなかったのですが、どのセッションが終わった後も、皆、同じようなことを言います。私は段々この発言に違和感を感じ始めました。

「この人たちは、そんなに参加者の皆で共感していることを、いちいち確かめたいのか?」

私が参加したワークショップは6日間の内の4、5日目です。ずっとその間、参加者は一緒なわけですから、共感や一体感が生まれていても当然かと思いますが、それでも逐一、確かめるように「みんなと気持ちが一つになったと思う」「Loveを皆とシェアできた」「一体感を感じた」という感想をシェアするわけです。


バリの美しい緑と苔むした石像

日本人の「集合的無意識の強さ」


さて、話は変わりますが、日本について海外の方々が驚くことがいくつかあります。

まず一つは、大きな災害が起こった時、その被災地で略奪や盗みが起きないことです。確かに、日本では被災地で物資が無い中でもコンビニなどで人々がちゃんと並んで入店を待つ光景が当たり前のように報道されていたりしますが、これは海外の方々にとっては信じられないことの一つだそうです。

フォローワーが1330万人(2024年4月現在)いる世界的に人気のユーチューバーであるナス デイリー(Nas Daily)が日本を紹介している動画があるのですが、ここでも「日本では1200ドルのバックを道に置いておいても誰も盗まない。自転車や携帯電話、現金を放置していても誰も盗まない。本当に安全!」と言っています。
あと、「日本では自動販売機がいろんなところに置いてあるが、日本以外の国だったら、壊されて中身とお金を持ってかれる」とよく海外の方々から言われます。

日本の治安の良さを世界の人々は称賛してやみませんが、我々にとっては至極当然のことですよね。凄く頑張って安全をキープしているわけではありません。日本という国自体が、こういう性格を持っているのです。

このことと、シャービンのワークショップで「一体感を感じた」と言い続ける欧米人の感覚。

そこに私は日本人の特異性を感じたのです。それは日本人の「集合的無意識の強さ」です。
我々日本人は「コミュニティー意識がとても強い」と言い換えたら分かりやすいかもしれませんね。

因みに「集合的無意識」とはユングが唱えたもので「人の行動を支配することの多い無意識の力のうち、本能的傾向ならびに祖先の経験した行動様式や考え方が遺伝的に受継がれてきたものをさす。個人的な経験が抑圧されたものを個人的無意識というのに対して、普遍的・超個人的な無意識といえる。」(ブリタニカ国際百科事典より)
私はこれを集団の「雰囲気」や「キャラクター」を作りだすものと思っています。


美しいハスの花

欧米、中国などは「個人主義」が強い


例えばみなさんが通っていた中学校。「1年1組」と「1年2組」なんか雰囲気が違っていませんでしたか。
その他にも、町の雰囲気、会社の雰囲気、趣味のコミュニティー、夫婦、家族、友達のグループなど、人が2名以上集まると、それぞれの独自の雰囲気が出来ますよね。特に打ち合わせとか話し合いで決めなくても、その雰囲気は作られてしまいます。これは「集合的無意識」が作るものだと思っています。
「集合的無意識」は「集合意識」とか「超意識」などとも言われています。

人の意識は、先ず「顕在意識」があり、その奥に「潜在意識」があると言われていて、さらにその奥にあるものが「集合的無意識」や「集合意識」「超意識」ということになります。

説明が長くなってしまいましたが、日本人はこの「集合的無意識」がかなり強いと思うのです。

日本以外の国、特に欧米、中国などは「個人主義」が強いと言われています。陸地で他国とつながり、様々な民族・言語の人々が交わり、場合によっては争う中で、また厳しい自然環境の中で生き残るために、人々は先ず自分自身に重きを置かなくては生きていけなかったと思います。

もちろん、そんなに単純な話では無いことは重々承知しておりますが、日本は島国ということで侵略も少なく、単一言語の民族の中で、さらに、この豊かな自然と共存していました。

縄文時代が1万年以上の間、人を無闇に傷つける事なく平和に暮らしていたことは最近話題になっていますが、これも「自然と共存し、皆が全てを分かち合って暮らしていたから」と言われています。縄文時代には土地を所有するという意識もなかったと言われています。「全ては自然からの授かりもの」という考え方であったのです。
これは豊かな自然の恵みがあったからこそ、出来上がった意識であったかもしれません。
言語にも、このことは現れています。日本語は主語がなくても成立し理解できる言語です。しかし、多くの他の言語は主語がなくては意味が通じません。つまり「誰が」がとても大切なのです。日本はそれを察することができるのです。つまり「集合的無意識」が強いので、何となく雰囲気で理解できるのです。

日本人と他国の人々は「集合的無意識」に差がある


つまりシャービンのワークショップで参加者が、何度も「一体感を感じた」と意見を言うことに私が違和感を感じたのは、日本人の私にとって、毎回、一々「一体感を感じた」と言葉で確認することは不要なことで、それは感覚的に感じるもので、言葉で確認するものでは無いものと思ったからです。

このことを、30年以上、アメリカに住んでいらした私の大先輩のプロデューサー松居和さんに伺ったところ「そうなんだよね。彼らは日本人の感覚を100%は理解できないと思うよ」とのことでした。

さて、こんな話をして何をお伝えしたいのかというと、日本人と他国の人々、特に欧米人の方々とは「集合的無意識」と言う切り口においてかなりの差があると言うことです。
と言うことは欧米で生まれて発展したコーチング、メンタル コントロール、更には心理学の方法論は日本人には当てはまらない事も多いのでは無いかと思ったのです。

私もコーチングや心理学を学んだ中で、この「音楽のあるHappy Life」でもいろいろなメンタル コントロールやストレス解消のお話をさせて頂きました。
それらは勿論、有効であると今でも思っていますが、バリでの経験を通してもう一歩進んだ日本人に合うメンタルコントロールの方法があるのでは無いかと思ったわけです。


バリの寺院

「今」に集中できる人は幸福感を得られる


そして、たまたま面白い論文を読みました。それは「A multivariate twin study of the genetic association between present moment attention and subjective wellbeing」(「今」に対しての注意力がどのように個人の幸福感に影響するのか、そしてそれが遺伝的にどの程度関係があるのかを双生児を用いて科学的に分析する)と言うもので、内容は「今」に集中できる人は幸福感を得られる人が多い。そしてその能力は遺伝的な部分がある程度左右していると言うことを研究したものです。

この「今」と言う感覚。過去もなく未来もなく、ただ「今」があるだけ。時間とは「今」の連続でしか無い。この考えも日本においては神道の中で「中今」と言う言葉で伝えられてきました。

「過去と未来の真ん中に今があり、その今にだけ意識を合わせて生きる」と言う考え方。過去のことは変えられないし、未来のことは誰にもわからない。過去の後悔、未来の不安はどうにもならない。今を生きることに集中することで幸せにいられるのではないか…。

我々日本人は今、世界の人々が求めている「強い集合的無意識」と「今を生きる」と言う考えを古来から、ひょっとしたらDNAレベルで獲得しているのではないかと思うのです。

勿論「日本人であるから幸せである」と言うような単純な話ではないことではありますが、日本人は現代に生きる必要な要素「強い集合的無意識」と「今を生きる」と言う感覚を古来から持ち得ていたのです。
つまり、日本人的にはその感覚を呼び起こすことをすれば良いわけで、我々はそれに見合うトレーニングをすればいいのかと思ったわけです。

「強い集合的無意識」と「今を生きる」を呼び覚ますトレーニング


またシャービンの話に戻りますが、彼と話している中で「アーバン シャーマニズム」と言う考え方を教えてもらいました。
昔、人は否が応でも自然と向き合って暮らす必要があり、その中で世界の各地で自然と共存するためのシャーマニズムが生まれました。しかし現代ではネットがあり、スマホがあり、古の時代とは全く様相が違います。古のシャーマニズムは効力がありません。我々が都会で生きている中では、鳥の囀りや虫の声も無いような中で自然音にハイパーソニックエフェクトの効果を期待することもできません。もちろん、薬草を自分たちで摘むことも難しいです。

少し前になりますが「西の魔女が死んだ」という梨木香歩さんのベストセラーの映画化の折に、その映画の主題歌を手嶌葵さんで制作させて頂きました。この映画は引きこもりになった中学生の主人公が、魔女と名乗る自分のおばあちゃんと暮らしながら魔女修行をする話です。その魔女修行とは、規則正しい生活であったり、自分が摘んだ果物からジャムを作る事だったり、ラベンダーの木の上にシーツを干すことでその香を移す事であったり…。つまり自然との触れ合いを魔女修行として教えられるのです。シャーマニズムの原点とはそういう事だと思うのですが、現在の都会ではそれをなかなか実践できません。

さて、そこで私が考える「強い集合的無意識」と「今を生きる」を呼び覚ますトレーニングは2つ。
一つはやはり自然の中に身を置くと言うこと。都会に住んでいてそれが難しいと感じる方も多いと思うのですが、多分、みなさんのお近くの神社やお寺には素晴らしい森があるのでは無いでしょうか?
寺社の役割の一つは、森という自然環境の提供なのかなと思ったりします。その森の中を散歩するだけでも前述の「ハイパー ソニック エフェクト」の効果を体感することが出来るはずです。そしてさらに、自然との一体感、共生感を感じることが出来れば「自然と共に全てが助け合って生きている」と言う良い意味での「強い集合的無意識」を実感出来るようになるのではと思います。

そして、もう一つは、中今を意識する瞑想、つまり、マインドフルネス瞑想です。ただし、一般的に言われている呼吸を意識してその数を数えるマインドフルネスから一歩進めて、常に「今」を意識する瞑想をしてみてはいかがでしょうか。それは「呼吸をしている自分という存在が今、確かに生きていると言うことを意識する」このような瞑想意識を20分ほど続けてみると、マインドフルネスの効果であるストレスの軽減、集中力のアップ、睡眠の質の向上が期待できます。これらの効果の他に「過去のことを後悔しても仕方がない。未来の不安はどうにもならない。今を生きることに集中する」ことで、先ほどの論文にもあった幸福感が得られると思うのです。

そこで今回は「中今を意識するマインドフルネス瞑想」の動画コンテンツをYouTubeにアップいたします。
リンクを掲載させて頂きますので是非ご活用ください。

前回「エンヤにU2、リバーダンス、ガリヴァー旅行記、ラピュタのもとになった物語も…アイルランドの魅力とは」はこちら

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