「年金制度は崩壊する!」「未納者が多い!」専門家が<年金のよくある誤解>を徹底解説。「払い損になる可能性はとても低い。むしろ…」【2025マネー記事セレクション】
2025年5月2日(金)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
2024年に『婦人公論.jp』で反響を得た「マネー」に関する記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年10月5日)
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厚生労働省の資料「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度の厚生年金の平均受給月額は14万3973円だったそうです。少子高齢化や「老後2000万円問題」などで、老後の資金に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんななか「無理な投資をしなくても、公的制度を賢く利用すれば<減らない財布>が手に入る」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんです。今回は、長尾さんの著書『投資ゼロで老後資金をつくる』から一部引用、再編集してお届けします。
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年金に頼らずに、何に頼るの?
老後の生活を安定させるには「収支のバランス」が重要で、それは年金の収入を中心に考えます。
しかし、年金に不信感を持っている人が多いのも事実です。「年金なんて頼りにならない」「本当にもらえるの?」「年金は払い損だ」といった声も聞きます。
では、年金は当てにならないという人にお尋ねします。老後の生活で年金を頼らないのであれば、何を頼りにするのでしょう。
それまで貯めてきたお金を老後資金にするなら、どのくらい必要か計算したことがありますか。
総務省の「家計調査(2023年)」によると、65歳以上の夫婦世帯の生活費は月額平均で約28万円かかります。老後生活が30年間だとすると、必要額は約1億円になります。
単身者の生活費は月額約16万円かかります。老後生活が30年間だとすると、必要額は約5800万円です。
もし、年金に頼れないというのなら、夫婦世帯ならば65歳の時点で約1億円が準備できていなければなりません。もしくは、ずっと働き続ける必要があります。
実際には、年金を受け取ることができるので、1億円近いお金を準備しなくてよくなるのです。
老後において、重要な収入源となる年金です。だからこそ、正しく理解し、うまく使いこなせるようにしたいものです。
年金については誤解も多いと感じます。よくある誤解を解き明かしていきましょう。
「年金は崩壊する」だから信用しない
「年金制度はいずれ崩壊するから信用しない」という話をよく耳にします。
年金制度が崩壊したらどうなるかを想像してみてください。
『投資ゼロで老後資金をつくる』(著:長尾義弘/青春出版社)
高齢者の約4割が年金だけで生活しています。年金が崩壊すると、その人たちの暮らしは成り立ちません。もし生活保護の対象になったら、生活保護者が急激に増えます。
生活保護の財源は、国が4分の3、地方自治体が4分の1を負担しています。生活保護の受給者が増えれば、税金の負担がさらに増します。
ちなみに、年金の主な財源は、毎月の給与から引かれている社会保険料が大半を占めています。
年金制度が崩壊すれば、生活保護のために税金の負担が大きくなるわけです。政府としてはこの事態を避けたいので、年金制度を崩壊させることはありません。ただ、年金の受給額などは、調整が行われます。
年金は払い損になるので、払うだけムダ
「年金は払った額以上はもらえない。払い損になるから、できれば年金保険料を払いたくない」という意見もあります。
とは言っても会社員の場合は、「年金は給与から天引きされているのでしかたがない」なんて考えていませんか? 本当に「払い損」なのでしょうか?
では、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人がすべて加入する国民年金で検証してみます。
国民年金の2024年の保険料は月額1万6980円(年額20万3760円)です。40年間納付すると、年金は満額を受け取れます。総支払額は815万400円です。
受け取る金額は、月額6万8000円(年額81万6000円)です。10年間受け取ると816万円になります。65歳から10年間、つまり75歳まで受け取ればほぼ元が取れるわけです。20年で約2倍、30年で約3倍の金額を受け取れます。
したがって、払い損になる可能性はとても低い。むしろお得な制度です。
たしかに10年以内に亡くなれば、損だとは言えます。ただ、死後にお金は必要ありません。使わないのですから、損得も関係ないのです。
しかし、長生きしたときにお金がないと困ります。
年金は長生きのための保険なのです。
保険料を払っていない人が多いらしい。やっぱり危ないのでは?
厚生労働省の令和4年度の国民年金の加入・保険料納付状況によると、年金保険料の未納者は約1割います。
「1割もの人が保険料を払っていない? やっぱり年金制度は危ないのでは?」
不安になる気持ちはわかります。
以前は35%の人が未納だったそうです。それに比べればかなり改善はされましたが、1割は多いですね。でも、この1割は国民年金の未納者です。
第2号被保険者の会社員など厚生年金の加入者は、給与から天引きされるため、未納者はほとんどいません。
また、第3号被保険者の専業主婦などは、そもそも保険料の納付がないため、未納にはなりません。
第1号被保険者のうちの約1割が未納者です。ただ第2号被保険者を含めた全体で見れば、年金の未納者は1%未満ですので、これによって年金の財源が傾くとは考えにくいのです。
※本稿は、『投資ゼロで老後資金をつくる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
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