少子高齢化だから年金制度は崩壊する?誤解されがちな<年金の仕組み>を専門家が解説。「不調な時だけニュースになるが、23年度の収益はなんと…」【2025マネー記事セレクション】
2025年5月3日(土)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
2024年に『婦人公論.jp』で反響を得た「マネー」に関する記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年10月6日)
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厚生労働省の資料「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度の厚生年金の平均受給月額は14万3973円だったそうです。少子高齢化や「老後2000万円問題」などで、老後の資金に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんななか「無理な投資をしなくても、公的制度を賢く利用すれば<減らない財布>が手に入る」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんです。今回は、長尾さんの著書『投資ゼロで老後資金をつくる』から一部引用、再編集してお届けします。
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年金の財源は大丈夫なのか
高齢者に給付されている年金の総額は、58兆円です。
この財源は、40.9兆円が公的年金の加入者(第1号、第2号被保険者)の年金保険料です。およそ4分の3ですね。
4分の1の13.7兆円が国庫負担、つまり税金からの拠出になります。これだけでは足りないので、残りの3.4兆円は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の積立金から取り崩しています。GPIFとは、簡単に言うと年金の積立金を運用しているところです。
「毎年3.4兆円も取り崩したら、そのうち底をついてしまうんじゃない?」
「GPIFの運用はうまくいっていないのでは?」
心配する声も聞こえますが、大丈夫です。
かつて、GPIFの運用がうまくいっていないというニュースが何度か流れました。そのため、運用状況が悪いままだという印象を持っている人が多いのですが、これは誤解です。
不調なときだけニュースに取り上げられるのであって、実際はプラスの運用ができています。
2023年は、なんと約45兆円の収益が出ています。運用開始以来の累計では約154兆円の黒字です。運用開始以来でみると、年率約4%の運用成績を上げています。
取り崩しはしていますが、運用が上回っているため元本は減っていません。現在の運用資産額は約246兆円です。
この運用資産額は、年金財政の中の1割です。全部を運用しているわけではありません。そこについても誤解が多いようです。
ですので、現状では年金破綻は心配はいらないでしょう。
少子高齢化だけれど、維持していけるの?
「現状では大丈夫なことはわかった。でも、この先少子高齢化で、高齢者はドンドン増えていく。それでも年金制度は続けていけるの?」
少子高齢化はたしかに心配でしょう。
2023年、人口に占める65歳以上の高齢者の割合は29.1%です。2040年には、34.8%になる見込みです。
しかし、このままずっと高齢者が増え続けることはありません。団塊ジュニアが高齢者になる2040年までは上昇していきますが、それ以降は横ばいが続くと予測されています。
『投資ゼロで老後資金をつくる』(著:長尾義弘/青春出版社)
とはいえ、現役世代が減っていく中で、増加する高齢者を支え切れるのでしょうか。
1980年には騎馬戦型で支えていたスタイルが、2010年には神輿(みこし)型になり、2040年には肩車、つまり1人の高齢者を1人の現役世代が支えるようになる。年金制度は、よくこんな説明がされます。
ここで使われる数字は、分母が20歳から64歳までの人口、分子が65歳以上の人口です。
ですが、単純に人口で割った数字なので、実態とは少し違ってきます。分母は本来、就業者の数になるべきです。
なぜなら第3号被保険者は保険料を払っておらず、また、いまや65歳以降も多くの人が働いているからです。
<『投資ゼロで老後資金をつくる』より>
分母を就業者、分子を非就業者に変えると、ほぼ肩車の図式が何年もずっと続いてきていることがわかります。
女性や高齢者の労働参加が増加
高齢者は増えているものの、昔に比べて女性の労働参加が急激に増えました。
専業主婦の割合は共働き家庭の2倍でしたが、いまでは逆転して共働き世帯が専業主婦の2倍以上になっています。
また、60歳が定年でも、ほとんどの人が65歳まで働いていますし、70歳まで働いている人は全体の17%以上います。高齢者の労働参加も増えているのです。
この先も、少子高齢化によって、すぐに年金制度が崩壊するとは考えにくいと言えるでしょう。
年金制度は、5年に1回財政検証が行われ、その都度見直されています。
ヒューリスティックな考えが誤解を呼ぶ
年金制度は誤解されている部分が多いと感じます。
年金制度について正しい知識を持つことは、非常に重要です。なぜなら、老後生活では絶対に必要なお金(収入源)だからです。
「少子高齢化」「財源が危ない」、だから「年金制度は崩壊する」「年金は当てにならない」と、直感的に判断してしまうことがあります。
これを行動経済学では「ヒューリスティック」と呼びます。
「ヒューリスティック」とは、意思決定をする際に論理的にひとつひとつを検証するのではなく、経験則や先入観によって直感で判断することです。
年金についても、ヒューリスティックな考え方で、誤解している人が多いのです。
※本稿は、『投資ゼロで老後資金をつくる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
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