〈寝食を忘れてゲーム〉〈デート中にSNSが気になる〉ダメとわかっていることをしては「いいわけ」を重ねて…統計のプロ・サトマイ「人は本命ではなく代替の行動に時間とお金を浪費して、満足したフリをする」
2025年5月8日(木)12時30分 婦人公論.jp
依存していませんか?(写真提供:Photo AC)
「なぜ大人になると時間の流れが早くなるのか?」「1年たつのが早くなった」そう感じている全ての大人へ、統計のプロが教える「時間の正体」。仕事や家事に忙殺されて「満足したフリ」をしていませんか?データ分析・活用コンサルタントであり、登録者38万超『謎解き統計学サトマイ』YouTubeチャンネル運営している、佐藤舞(サトマイ)さんが、充実した時間の取り戻し方を提案する著書『あっという間に人は死ぬから「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方』より一部を抜粋して紹介します。
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コーピングとは?
死、孤独、責任には、不安が伴います。目に見えるものではないので、底知れぬ「漠然とした不安」として、心理的な苦痛(ストレス)が生じ、この不安を何かで紛らわそうとします。
心理学では、ストレスに対する意図的な対処のことを「コーピング」といいます。3つの理に対するコーピングの例を見てみましょう。
《3つの理の不安を紛らわせる行動》
(1) 死の不安:何かに没頭したり熱中して悩まないようにする
(2) 孤独の不安:友人やパートナーを求めて寂しさを紛らわせる
(3) 責任の不安:他人に決めてもらうことで責任を回避する
これらはよく見られる、いたって普通のコーピングです。人は、日頃からこのようなコーピングを繰り返すことで漠然とした心理的苦痛を回避しています。
人生をやりすごすための合理的コーピングといえるでしょう。
良くない結果をもたらしてしまうコーピングも
しかし、中長期的な人生の質を悪化させてしまう、良くない結果をもたらしてしまう非合理的なコーピングもあります。
(1) 死の不安:何かに没頭したり熱中して悩まないようにする⇒ゲームに夢中になって日常生活に支障をきたす
(2) 孤独の不安:友人やパートナーを探して寂しさを紛らわせる⇒寂しさから浮気を繰り返す
(3) 責任の不安:他人に決めてもらうことで責任を回避する⇒他人の評価で一喜一憂する
このように、不安を消そうとしてやったことが、やってもやっても満たされない依存・中毒状態を引き起こし、人生に長期的な悪影響を与えてしまうことがあります。
依存症とまではいかないけれど、寝食を忘れてゲームに熱中してしまった、ガチャに大量課金してしまった、デート中なのに、さっきSNSに投稿したポストのいいね数が気になってしまう—という経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
ダメだと分かっているけどやってしまう
これらは、多くの場合「ダメだと分かっているけどやってしまう」もので、比較的分かりやすいものですが、本人もダメだと気づかない行動もあります。
(1) 死の不安:何かに没頭したり熱中して悩まないようにする⇒ワーカホリックになる
(2) 孤独の不安:友人やパートナーを探して寂しさを紛らわせる⇒浮気を疑って何度もスマホをチェックする
(3) 責任の不安:他人に決めてもらうことで責任を回避する⇒周囲に同調して自分の意見を言わない
これらの行動の特徴は、不安を消すという意図以外に、本人にとってこれらの行動をとることの正当な理由付け(ウソ、いいわけ)ができる、ということです。
ワーカホリックになる=仕事をしないと家族を養えないから
浮気を疑って何度もスマホをチェックする=疑われるようなことをする相手が悪いから
周囲に同調して自分の意見を言わない=自分の判断に自信がないから
このように、自分の偏見や信じていることを肯定するような証拠を見つけて、自分の行動を正当化したり、自分で自分にウソをつく行為を、「自己欺瞞(じこぎまん)」といいます。
ワーカホリックになってしまう(写真提供:Photo AC)
「本物のようなウソ」を自分や他人につき続ける
人は、自分にも他人にもウソやいいわけをすることに多大な時間を使っています。しかし、ウソなのか本当なのか、自分にも他人にも分からないことも多いのです。
「まるで本物のようなウソ」を自分にも他人にもつき続けることによって、自分の本心を見失います。
他人を効果的に欺くには、自分も騙されている方が都合がいいからです。私たちは、生きていく上で自分が豊かになる選択をしているつもりでいますが、実際は違います。
・旅行資金が溜まったら海外に行こうと仕事を頑張って、すでに5年経っている。
・最高のパートナーが欲しいけど自信がないので、とりあえず身体を鍛えて早1年。
・ビジネス書やセミナーで勉強し続けて、万年起業準備中。
・やりたい事探しをずっとし続けているが、これというものがない。
あなたは、本命の行動ではなく、「代替の行動」に時間とお金を浪費して、満足した「フリ」をしているために、いつまでも本命にたどりつけないのです。
そして死に際にやっと思い出すのです。「ああ、あれをしておけばよかったな……」と。
※本稿は『あっという間に人は死ぬから「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
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- 83歳のパワフル訪問看護師。看護学校教員として1000人以上の看護師を世に送り出し、60歳で故郷の山村にUターン。介護施設を次々と立ち上げて