不妊治療に自治体7割が助成、公的保険に上乗せ…読売が90自治体調査
2025年5月8日(木)5時0分 読売新聞
体外受精で誕生した子が全体の1割に上る中、増加する体外受精などの不妊治療に対し、都道府県や政令市、東京23区の約7割が助成を行っていることが、読売新聞の調査で分かった。不妊治療には2022年に公的医療保険が認められたが、費用の負担軽減には不十分だとして、多くの自治体が上乗せして支援している実態が浮かび上がった。
不妊治療には精液を子宮に注入する「人工授精」や、体外で受精させ受精卵を子宮に戻す「体外受精」などがある。21年に厚生労働省が発表した実態調査では、1回あたりの治療費は平均で人工授精が約3万円、体外受精が約50万円。国は22年4月以降、少子化対策のため負担軽減を図るとして人工授精や体外受精に公的医療保険を認め、自己負担額は原則3割となった。
ただ、体外受精の保険適用には年齢・回数の要件があり、治療開始時に女性が40歳未満なら6回まで、40歳以上43歳未満は3回までと規定されている。このほか保険適用外の「先進医療」をオプションとして受ける人もいる。治療は複数回にわたり長期に及ぶことも多く、公的医療保険が認められた後も重い費用負担が課題となっている。
調査は24年12月に都道府県、政令市、東京23区の計90自治体を対象に行った。47都道府県と19政令市、22区の計88自治体から回答があり、先進医療などに62自治体が助成していた。
不妊治療への助成のうち、〈1〉先進医療の自己負担分に対する助成を実施しているのは41自治体〈2〉保険適用後の自己負担分への助成が18自治体〈3〉年齢・回数の要件を超えたため保険適用外となり、全額自己負担となった人への助成は9自治体(〈1〉〜〈3〉の自治体は一部重複)——だった。
23年度の助成実績(延べ人数)が多かったのは〈1〉は東京都1万2520人、大阪市2068人、三重県1295人、沖縄県993人、鹿児島県790人。〈2〉では京都市2273人、岐阜県2096人、山口県1021人、東京都渋谷区653人、福井県608人など。
流産などを繰り返す不育症については全都道府県が検査や治療の費用を助成していた。
調査では、公的医療保険の範囲を広げることや、保険適用の対象外の場合も含めて治療を望む全ての人への経済的負担の軽減などを国に求める声が寄せられた。
◆先進医療=公的医療保険の対象外の治療や検査であっても、保険診療と併用できる制度。不妊治療では、体外受精でできた受精卵の染色体異常を調べる「着床前検査」や、培養器で受精卵を観察して子宮に戻す適切な時機をうかがう「タイムラプス」などがある。