同時に5軒の事故物件を借り、5年で死ぬ男・松原タニシ! 本物の怪談を求めて恐怖体験…村田らむが新刊『死る旅』インタビュー

2021年7月22日(木)10時0分 tocana


——樹海のスペシャリスト村田らむが事故物件住みます芸人松原タニシをインタビュー
 松原タニシさんの初の著書『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房)がベストセラーになり、映画化されたのは記憶に新しい。
 昨年には『事故物件怪談 恐い間取り』の続編である『事故物件怪談 恐い間取り2』(二見書房)が発売された。
 タニシさんは事故物件シリーズとは別に、『異界探訪記 恐い旅』(二見書房)という心霊スポットや事件現場をめぐる旅本も上梓している。
 7月9日に発売される新刊は、旅本の二冊目にあたる『死る旅』(二見書房)だ。


 ちなみにタニシさんは現在も事故物件に住んでいる。今から向かう新居も事故物件だ。


 


■同時に5軒の事故物件を借りる男、5年以内に死亡




「新しい部屋が13軒目の事故物件になります。現在同時に5軒の物件を借りてます。月の家賃は20万円を超えています」


 と笑顔で教えてくれた。月20万円の家賃って、新宿で家族向けの豪華2LDKが借りられる値段である。
 感心しているうちに小さい鉄筋コンクリート製のアパートに着いた。このアパートでは1階で1人亡くなっていて、2階で殺人が起こっているという。タニシさんの住む部屋でも詳細は分からないが人が亡くなっていると言われている。
 ヘビーないわくつきの部屋だが、室内は少し狭いもののとても綺麗な状態だった。
 室内には、寝袋が一枚とトイレットペーパーとティッシュが落ちているだけだった。タニシさんは寝袋にくるまりトイレットペーパーを枕に寝ているという。
 なんぼなんでも質素すぎる生活である。


 そういえば先日タニシさんが
「今年がラストイヤーです」
 と言っているのを耳にした。


「5年前に写真を撮ったら僕の顔だけ黒く写ったんですよね。その写真を三木大雲和尚に見せたら
『5年後に全てを失う』って言われたんです」


 正確には『登った上で、全てをなくす』と言われたそうだ。
 ここ5年間でタニシさんはベストセラー作家になり、テレビやラジオでもよく見かけるようになった。
 つまり“登る”ところまでは当たっている。
 占いどおりにいけば、今年全てを失う。
 つまり命を失うという意味かもしれない。


「今思えば『5年で死ぬ』って言われたのはすごく助かってますね(笑)。その時に死を意識したからこそ、強く死に興味を持てたんだと思います」


 今回の新刊『死る旅』は、まさに死について見つめる一冊だという。


「心霊スポットをめぐって怪談を集めるのに飽きてしまって、旅をしながら本を書きながらテーマを見つけていきました。より深く死に向き合っていくようになりました。『死ぬってどういうことなんだろう?』というのが本質的なテーマになっています」



 


■松原タニシ&らむ、タイで恐怖体験


 本書で、タニシさんは、『赤水門』『いもんた』『サムハラ神社』『弓削神社』『クマヤ洞窟』などなど有名な心霊スポットから、知る人ぞ知る場所まで足を運んでいる。全ては死にまつわる場所だ。本をめくっていくと、タニシさんがタイ旅行をしている話があった。実は、この旅行では僕(村田らむ)とタニシさんはタイで合流している。
「僕は台風で到着が遅れたので、楽しみにしていたシリラート病院の死体博物館には行けなかったんですよね。あと地獄寺も行けなくてとても残念でした。タイで一番怖かったのは、路上に子供が寝ていたのと、ニューハーフが包丁を振り回していたことでしたね」


 そう言われて、記憶がドッと蘇った。タニシさんとニコ生の木村さんと、タイの深夜の心霊スポットを散策した。
 最初人が亡くなった場所を巡ったのだが、正直あまり怖いとは思わなかった。その後、中国人のお墓に行ったのだがここはとても怖かった。ただ心霊的に怖いのではなく、雰囲気がスラム街チックで怖かった。
 日本人がタイのスラム街を深夜にウロウロするのは非常によろしくない。
「これはヤバいですぞ〜」
 と心がヒリヒリしたのを覚えている。
 ドキドキしながら角を曲がると、歩道の真ん中に少女が倒れていた。僕もタニシさんも心底ギョッとした。ひょっとして死んでいるのかもしれないと少女をジッと見た。 彼女がくるまっている薄汚れたサンリオのマイメロディの毛布がゆっくり上下に動いているのを見て、ホッとした。
 彼女の黒く汚れた顔は、今でも脳裏に焼き付いている。



 そして、取材を終えて歓楽街ナナプラザで自動車を降りたところ
「ワー!!」
「ウワー!!」
 と大騒ぎになっていた。


 僕は配信用のカメラを渡されていたので、何が起こっているのかとキョロキョロと見回してみた。原因はすぐに分かった。女性(おそらくニューハーフ)がブンブンとナイフを振り回しながら走っているのだ。


 脳内に、


「逃げろ!!」


 という命令と、


「撮れ!!」


 という命令が交錯した。


 職業柄、撮影を継続してしまった。
 


 結局、女性は白人男性に向かって包丁を振り回したが、切りつけることはなかった。彼女は、包丁を持ったまま勢いよくこちらに戻ってきた。タニシさんに「らむさん逃げましょう!!」と言われ、ハッ!! とした。
 ほうほうの体で逃げ出した。


 ナイフを持った人間がこちらに走ってくる場面を思い出して、背筋がゾクッとした。


 その後に心霊スポットだと言われるホテルに行ったが、ちっとも怖く感じなかった。結局『実際に死にそうだ!!』という恐怖の前には、心霊の恐怖は打ち消されてしまうのだ。



 



「一人旅は怖いですよね。ワンミスでゲームオーバーですから(笑)」


『異界探訪記 恐い旅』にはタニシさんが大阪の山を取材していたところ、イノシシらしき獣と遭遇してしまい、川を背に延々と隠れ続ける話が印象的だった。新刊でも、命の危険はあったのだろうか?


「岡山にある古代山城『鬼ノ城』に行った時はかなり怖かったですね」


『鬼ノ城』は桃太郎伝説のルーツという説もある。


「基本的に徒歩で行く場所じゃなかったんです。雨が降る中何時間も歩いて心が折れてしまったんですね。そんな時『降りると下の道に出られます』という看板を見つけました。これは行くしかない、と進んだんですが……ほぼ崖でした」


 タニシさんは、深夜にスマホと懐中電灯と傘を持ったまま崖を降りた。崖は雨でツルツル滑った。さすがに配信は続けられないとスマホはポケットにしまったそうだ。
 踏み外したら死ぬ崖をなんとか降り、帰路についたという。


 そう言えばタニシさんと一緒に、知多半島の中之院、通称たぬき寺に行った時も死にかけた。


 3月の寒い山道を4時間以上歩き、目的通り軍人像を写真に撮ることができたのは良かったが、帰りのバスが来るのは何時間も後だった。ジッとしていたら、凍死してしまいそうだったから、ひたすら歩いて帰還した。
 人が歩いていると思っていないから、トラックがスピードを落とさずにビュンビュン通り過ぎていく。
 2人とも一言も喋らず、海岸線の道をひたすらテクテクと歩いたのを覚えている。


「今でも、つらいことがあるとあの時のことを思い出しますね。やっぱり人間つらい経験があると強くなるのかもしれませんね(笑)」


 とタニシさんは語った。
 もちろんタニシさんは、こういうリアルな命からがらの話だけではなく、いわゆる霊的に怖い話も集めている。だが、それは飽くまでオリジナルのエピソードにこだわりたいと思っているという。


「すでに世にある怪談を確かめに行くだけの旅は嫌なんですね。その怪談って誰かが意図を持って広めたものも多いわけで、それって言わば『本物じゃない胡散臭い怪談』なんです。それを広げるのに手を貸すのもイヤです。僕は、現場に行って自分だけのオリジナルな話を見つけたいと思っています」



 最後に、もしトカナで自由に経費が出るなら(たぶん出ないけど)、どんな旅がしたいですか? と伺ってみた。


「そう言えば鹿児島県の『熊襲の穴』という場所に行ったんです」


 この場所は、女装したヤマトタケルノミコトがカワカミタケルを殺害した場所だと言われている。現在は誰が描いたか派手派手な現代アートで彩られているが、とても古い洞窟だ。


「後から知ったんですが、この場所って手塚治虫の『火の鳥 ヤマト編』に登場していたんです!! それを知って、ちょっと興奮してしまいました。『火の鳥』に登場した場所をめぐる旅、とか面白そうですよね? 阿蘇山に登って『ここに火の鳥いたな〜』とか思いたいです(笑)」


 手塚治虫の漫画には具体的な場所が出てくる作品も多いから楽しそうだ。
 僕は『三つ目がとおる』に登場した場所を巡る旅がしてみたい!! トカナさん、いかがでしょうか?


 そんな松原タニシさんの『死る旅』。ダークツーリズムが好きな人には是非、読んで欲しい一冊だ。

tocana

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