学生トップランナーが履いているモデルは?東洋大の梅崎&石田、名城大の谷本&米澤が語る「シューズの履き分け」

2024年11月29日(金)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


名城大の谷本と米澤が着用するシューズ

 紅葉に染まる軽井沢で「NIKE RUNNING MEDIA CAMP 2024」が開催された。ナイキプロダクトの説明、NRCコーチによるランニングセッション、ミニ駅伝などを堪能したが、スペシャルゲストとして登場した東洋大と名城大の監督・選手のトークセッションが面白かった。そのなかでひとつのテーマになったのがシューズの「履き分け」だ。選手たちは、トレーニングでどんなシューズを着用しているのか。

 昨年の全日本大学女子駅伝で7連覇を達成した名城大。主将の谷本七星(4年)とエース的な存在である米澤奈々香(3年)はレース時で着用するモデルが異なっている。

 谷本は駅伝などのレース時は前足部にエアが搭載されている『アルファフライ』だが、米澤は『ヴェイパーフライ』を履いているのだ。

 ジョグはともに『ペガサス』が中心で、谷本は『ペガサス プラス』も併用している。

「ジョグは最も基礎的な練習になるんですけど、練習状況や体調に応じて、キロ6分から速くてキロ4分を切るぐらいのペースで行います。集団走は少し速くなることが多いですね。そのなかでクッション性を意識したいときは『ペガサス プラス』を履いています」(谷本)

「名城大はトラック、ロード、人工芝で練習するんですけど、ケガを予防する意味でもクッション性のある『ペガサス』がいいなと思って愛用しています。反発力があるので、速いジョグで意識的に動きを変えられるのも好きな部分です」(米澤)

 ポイント練習はともにレースと同じモデルを使用することが多いようだ。なおトラックシーズンのスピード練習はともにスパイクの『ドラゴンフライ』を着用している。

「ペース走はより実践的なレースをイメージした練習になるので、フォームもジョグと変わってきますし、レース時と同じ『アルファフライ』を履いています。スピード練習もレースをイメージしているので、トラックシーズンは『ドラゴンフライ』でピンがトラックに引っかかる感覚を養い、駅伝シーズンは『アルファフライ』の反発を太腿裏やお尻など大きな筋肉で受けて、推進力に変えることを意識しています」(谷本)

「駅伝シーズンの1カ月前くらいからペース走とスピード練習は『ヴェイパーフライ』を履いています。練習時からレースの感覚を磨くことで、本番でも生かされると考えているからです。私は『アルファフライ』も試したんですけど、反発力が凄くあるため、自分の動きではちょっときつさが出るように感じたので、しっくりきた『ヴェイパーフライ』を履いています。あとレースでは『軽さ』も自分のなかで大きな要素です」(米澤)

 ナイキは『アルファフライ』と『ヴェイパーフライ』がレーシングシューズの最上位モデルになるが、選手たちは自分の感覚にフィットする方を選んでいるようだ。

 なお名城大は2日間連続でポイント練習するときは、1日目に400m×10本のインターバル、翌日に12000mのペース走などを行うという。そのペースもかなり速い。

「30年前、日体大でコーチをしていましたけど、当時は男子がキロ4分00秒で16〜30kmをやっていたんですよ。いまは女子がキロ3分45秒で10000〜16000mぐらいを走るんです。シューズの性能が良くなり、練習のペースはかなり上がっています」(名城大・米田勝朗監督)

 また東洋大・酒井俊幸監督は、「距離走は3分30〜40秒ぐらいで、ペース走は3分20秒ぐらいからです。姿勢が大切なので、ペース走もレース用シューズを履いて、その動きを定着させることを意識させています」と話していた。


『アルファフライ』で勝負する梅崎と石田の練習モデル

 学生駅伝でも活躍している東洋大の梅崎蓮と石田洸介(ともに4年)。鉄紺のエースたちはともに駅伝で『アルファフライ』を着用しているが、練習で履くモデルはかなり異なっている。

 ジョグは梅崎が『ペガサス』で、石田が『ボメロ』。集団走や速いジョグはともに『ペガサス プラス』で石田は『ズーム フライ』も使用している。

「ジョグはクッション性があって反発もある『ペガサス』を履いていて、ソールが厚くないので脚作りにもいいのかなと思っています。速いジョグはより反発力のある『ペガサス プラス』を使用しています」(梅崎)

「ジョグはゆっくり走るときもあればペースを上げることもあります。『ボメロ』はどちらのシーンでも安定して走れて、故障を防げるようなクッション性もあるので気に入っていますね。『ズーム フライ』は『ペガサス プラス』より厚みがあるので、厚底シューズを慣らすという意味合いもあり、距離走で使用することもあります」(石田)

 ペース走は梅崎が『ストリークフライ』で石田が『ヴェイパーフライ』。スピード練習は梅崎が『ストリークフライ』と『アルファフライ』で、石田が『ヴェイパーフライ』と『ペガサス プラス』を使い分けている。

「中足部のみカーボンプレートが入った『ストリークフライ』は厚くもなく、薄くもないので脚作りにもいいですし、レースの感覚も養うことができるシューズです。ペース走だけでなく、スピード練習でも使用していますが、強度が高い練習や試合直前はレース時の感覚をつかめるように『アルファフライ』を履いています」(梅崎)

「ベース走はレースの動きを作る意味でも大事な練習です。かつ厚底シューズをレースで最大限活用するために『アルファフライ』より反発が少しやさしい『ヴェイパーフライ』を使用しています。スピード練習も同様ですが、『ペガサス プラス』はキロ3分00秒ペースぐらいまで使えるので、脚作りの目的でも履いています」(石田)

 ふたりともレースは『アルファフライ』を着用しているが、石田は梅崎と異なり練習で“勝負シューズ”をほとんど使用していない。逆に本番で『アルファフライ』の恩恵を最大限受けられることを意識しているという。

「ナイキのなかで一番反発が強いのが『アルファフライ』です。使いこなすのが難しいですけど、ちゃんと使いこなせればいつも以上のパフォーマンスを発揮できる。その反発に慣れすぎるとレース時に特別感が湧かないので、試合の直前や新しい『アルファフライ』をおろしたときに、少し使う程度です」(石田)

 本番で心身ともにピークを合わせるために、練習時のシューズ選びはメンタル面でも考えているようだ。

筆者:酒井 政人

JBpress

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