有名バーテンダーに訊いた! 知ればもっと美味しい「王道カクテル」のヒミツ3選

2019年12月24日(火)10時50分 食楽web


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 行きつけのバーがあったとしても、普段、愛飲しているカクテルについて、きちっと説明できる人は、意外と少ないんじゃないでしょうか。「これがベースの、アルコール度数の高いお酒だよね」というようなふわっとした知識はあっても、詳細まではなかなかつかめないもの。それに改めてバーテンさんに聞くのもなんだか恥ずかしい…という人のために、知っていると「むむっ、デキるな!」と思われるカクテルの誕生秘話や豆知識を、プロのバーテンダーさんたちに聞いてきました。

モスコミュール編


『Bar 石の華』の「モスコ・ミュール」1480円。スミノフのウォッカがベース

 世界で愛されるスタンダードなカクテルの一つモスコミュールは、食前・食後を問わず飲めるカクテルです。一般的には、ウォッカをライムジュースで割り、ライムなどのスライスを添えて供されます。度数はベースのウォッカにもよりますが、およそ10〜17度ほど。

 モスコミュールを英語表記にすると「Moscow Mule」。直訳すると「モスクワのラバ」。ラバに蹴飛ばされたように効いてくる、という意味を持ちます。強靭な後脚を持つラバに蹴られたような衝撃を感じるほどアルコール度数が高くて強い、というのが名前の由来。「モスコ」とはもちろん、ウォッカの故郷・ロシアの首都モスクワのことです。

 1940年代初頭に、米国人のバーテンダーが、仕入れすぎたジンジャービアの在庫を処分するために考案したという説や、1946年にスミノフのウォッカの販促のために製造元がレシピを公開して広まったなど、その発祥には諸説あるようです。


国際バーテンダー協会公認の世界大会で優勝したことのある、日本を代表するバーテンダーの石垣忍さん

 そんな話を教えてくれたのは、渋谷にある『Bar 石の華』のオーナーバーテンダー・石垣忍さん。『Bar 石の華』のモスコミュールは、スミノフ・ウォッカにフレッシュジンジャー、フレッシュライム、フレッシュミント、そしてジンジャービアで作ります。そして特徴的なのは銅のマグカップ。カクテルなのにマグカップの理由は?

「諸説ありますが、メーカーであるスミノフとヒューブライン社が、NYでこんなカクテルが流行っている、と全米に広げて流行らせた、という説や、ジンジャービアを売りさばくために、銅のマグカップを使ったなど、様々なストーリーがあるんですよ」(石垣さん)。

 奥深い本物の「モスコミュール」の味を感じたい人は『Bar 石の華』へ足を運んでみてください。

●SHOP INFO

店名:Bar 石の華

住:東京都渋谷区渋谷3-6-2 第2矢木ビル B1
TEL:03-5485-8405
営:18:00〜翌2:00
休:日曜、祝日

スクリュードライバー編


『LAND BAR artisan』の「スクリュードライバー」1500円

 みんな大好きスクリュードライバー。ウォッカのオレンジジュース割りです。由来としては、イランで働いていたアメリカ人の作業員が、お酒をかき回す時に、たまたま持っていたスクリュードライバー(ねじ回し)を使ったのが始まりと言われていますが、新橋にある名バー『LAND BAR artisan』のバーテンダー、伊藤 大輔さんはこの説に異を唱えます。

「私はそうは思わないですね(笑)。例えばですが、アメリカの禁酒法時代に、客が「あれ、飲める?」と店の人に聞きながらジェスチャーで指をくるくる回してオーダーしたとか、何か隠語やジェスチャーからこの名前がついたんじゃないかと私は思っています」。


新橋3丁目、カウンター6席のバー『LAND BAR artisan』の伊藤大輔さん。同店が使用するウォッカは、ポーランドの「ソビエスキー・ウォッカ」

 スクリュードライバーの別名は「レディ・キラー」。無味無臭のウォッカベースなので、度数が高くてもスイスイ飲めて酔っ払うのがその理由。禁酒法時代のアメリカでは、当局の摘発を避けるため、オレンジジュースに見せかけていた、という話もあるように、確かに見た目にはジュースのようにも見えます。

「ウォッカは無味無臭なので、オレンジに限らず、いろんなフルーツのジュースでもスクリュードライバーになります。ザクロのスクリュードライバーや、りんご、桃なども美味しいですね」と伊藤さん。

 様々なカクテルの由来やエピソードを、独自の考察を交えて解説してくれる伊藤さんの作るカクテルは絶品。ぜひ新橋で愛される地下の隠れ家バー『LAND BAR artisan』をのぞいてみてください。

●SHOP INFO

店名:LAND BAR artisan(ランドバー アルチザン)

住:東京都港区新橋3-15-6 村上ビルB1F
TEL:03-3433-4322
営:14:00〜00:00(L.O.)
休:日曜

マティーニ編


「マティーニ」1600円。一般的な割合はジン4、ベルモット1ですが、『bar cafca.(バー カフカ)』ではジン5、ベルモット1

 マティーニといえばジンとドライ・ベルモットを使った「カクテルの王様」。映画や文学にもよく登場します。例えば「007」シリーズでジェームズ・ボンドが飲んでいたり、ヘミングウェイの小説『河を渡って木立の中へ』にも、主人公がバーでマティーニを注文するシーンが出てきます。度数は約35度とかなり強いカクテルです。

 そんなマティーニについてお話を伺ったのは、外苑前『bar cafca(バー カフカ)』の佐藤博和さん。洗練されたカクテルやヴィンテージのウイスキーなどが味わえる、非常に上質なバーです。
「マティーニの由来は諸説あって、このカクテルがマティーニの原型だと言われています」と佐藤さんが作ってくれたのが「マルティネス」。白ワインのような、薄く色のついたカクテルです。


「マルティネス」3500円。1960年代に作られた「ゴードン オールド トム ジン」と貴腐ワインで作ります

「1862年にジェリー・トーマスが出版した、世界で最も古いカクテルのレシピ本『How To Mix Drinks』に登場するカクテルです。元々甘い味だったのですが、そこから味がドライにシフトしていき、スイートベルモットからドライベルモットに変わっていったようですね」。昔は甘いカクテルだったんですね。意外です。

 シンプルなマティーニは、バリエーションも豊富。ジンの代わりにウォッカで作る「ウオッカ・マティーニ」やベルモットの代わりにウイスキーで作る「スモーキー・マティーニ」、オリーブの漬け汁が入る「ダーティ・マティーニ」などが存在するほか、中には日本酒で作る「サケ・マティーニ」や、007シリーズにちなんだ「ボンド・マティーニ」も。その種類は300種近くあると言われています。

「マティーニ」と「マルティネス」を飲み比べて、昔と今の味の違いを楽しんでみるのも楽しそうですね。

●SHOP INFO

店名:bar cafca. (バー カフカ)

住:東京都港区南青山3-5-3 ブルーム南青山 B1F
TEL:03-3470-1446
営:15:00〜24:00
休:火曜

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