積水化学×トラスコ中山がDXの共創で生み出すサプライチェーンの未来

2024年1月11日(木)10時0分 PR TIMES STORY

不確実な経済社会の中で、1社だけでは解決できない課題は増え続けている。大手企業もこれまでの自前主義から脱却し、各社の強みで相乗効果を生み出そうという動きも増えてきた。今回取り上げるトラスコ中山と積水化学もDX(デジタルトランスフォーメーション)協業を通じて未来のサプライチェーンを生み出そうとしている。

DXのメリットを工場などの現場に「見える化」したい

2000年代からIT活用で改革を進めてきた工場用の各種工具や消耗品の卸売り大手のトラスコ中山。DXの先進企業を選ぶ「DX銘柄」に3年連続で選出され、さらに「DXプラチナ企業2023-2025」にも選定されており、DXの成功例として知られている。

同社の“置き工具”「MROストッカー」は、置き薬のビジネスモデルにITの力を掛け合わせ、在庫補充の自動化や最適化などで在庫管理コストの削減を可能にしている。具体的には工場などにトラスコ中山がMROストッカーを設置、そこに同社の資産として工具なども並べる。工場の作業者は使いたい時にそのストッカーから工具を取り出し、スマホをかざせば、そこで購入が完了するというものだ。これなら、注文から配送、受け取りといった時間が不要となる。必要なだけ、欲しい時に手に入る「究極の短納期」を実現させた。

置き薬ならぬ置き工具「MROストッカー」

積水化学では、このMROストッカーにいちはやく注目し、新しい取り組みをスタートさせている。

「私たちの部署は積水化学のグループ全体におけるデジタル変革推進を担っています。その一つがグローバルも含めた基幹システムの統一化プロジェクトです。これから業容倍増を目指していくにあたり、基幹システムの統一はコスト効率を高める手段と考えています」

積水化学工業 デジタル変革推進部長 池本陽一

そう話すのは積水化学のデジタル変革推進部長の池本陽一だ。積水化学では長期ビジョン「Vision 2030」を打ち出し、ESG経営を中心に据え、2030年の業容倍増を目指している。池本らは業容倍増や海外事業拡大に備え、現在の個別に最適化された基幹システムの全社統一化を進めているのだ。

積水化学グループのDX全体像

同席した同部デジタルソリューション推進室の松田勝行が続ける。

「基幹システムを変えていくにあたり、購買プロセスの改革も必要となると私たちは考えました。これまで当社の工場などでは、現場の購買課長が地元の会社を通じて調達するということがほとんどでした。しかし、それだと同じ商品なのに仕入れ値にばらつきがあることも多々あります。そこで、情報を一元管理することでコストリダクション(CR)が大きくなると考えたのです」

積水化学工業 デジタル変革推進部デジタルソリューション推進室 松田勝行

購買プロセスを管理するにあたり、同社が導入したのはCoupaだ。Coupaは発注から支払いまでのプロセスをすべて電子化し、ビジネスパートナーとの支払い完了までの取引状況を随時ポータル上で確認できるSaaSだ。Coupaを経由して工場などが購入してくれることで、情報の見える化が進む。データもこれまで工場ごとだったものが、一元化されていく。

「集約することで、スケールメリットによる購買時のコストダウンにもつながるかもしれません。そのような思いで導入を決めたのですが、現場は簡単には納得しないことも分かっていました」

そう話す池本は、元は工場のマネジメントをしていたキャリアを持つ。デジタル変革推進部の部長ではあるが、同時に現場がデジタルを導入しても簡単には納得できないことも分かっていた。

「現場には現場の見方があります。彼らにしてみると手軽に買っていたものを、毎回Coupaを通さなければいけないと思うと面倒に感じられてしまう。だから、その面倒だと感じられる以上のメリットを目に見える形で提供しなければいけない。そこで思いついたのがトラスコ中山さんのMROストッカーです」

MROストッカーでは、スマホの専用アプリで商品をスキャンし、決済を行う

大手企業の二つのサービス。「つなぐ難しさ」を乗り越えた先にあるもの

「今でこそ1000件を超えるところに置いていただいているMROストッカーですが、積水化学さん、というより池本さんからご相談を受けた時はMROストッカーの普及が進まず悩んでいた時でした」

トラスコ中山の営業企画部長兼eビジネス営業部長の山本雅史氏は振り返る。

トラスコ中山株式会社 営業企画部長兼eビジネス営業部長 山本雅史氏

「MROストッカーは2020年にリリースしましたが、初めての試みなので1年で40件くらいしか設置できませんでした。置き薬みたいに簡単に置いてもらえるかと思っていたのですが、現場の購買プロセスなどを変える必要があり、手軽なものではありませんでした。私たちは卸売業なので実際に工具を使っている工場の方々の声を直接聞くことはあまりなかったのですが、MROストッカーを通じて多くの学びを得ていた時に、積水化学さんからもお声がけいただきました」

トラスコ中山株式会社 営業企画部MROストッカー推進課長 上園宏一氏

そう話すのは、トラスコ中山の営業企画部MROストッカー推進課長の上園宏一氏だ。上園氏はMROストッカーをゼロから立ち上げ育ててきた。池本がうなずき、トラスコ中山に相談した背景を語る。

「MROストッカーは工場の人たちにしてみると、必要な時に必要なものがすぐ手に入るメリットがあります。これいいでしょ? と言いやすい。これを入れるためには、私たちが進めている基幹システムの統一や購買プロセスの変革もいるんですよと話し、現場に理解をしてもらえないかと考えたのです」

しかし、その道のりは平たんなものではなかった。積水化学の松田が話す。

「まず、CoupaとMROストッカーがつながるのか? という大きな問題がありました。上園さんに話しても、やったことはないといいます。もちろん、私もです。MROストッカーもCoupaもサービスとして完成していましたし、既存の状態で連結できるのかという検討を何度もさせていただきました」

上園氏も「最初はできるかな、と思っていたのですがMROストッカーにはMROストッカーのルールがあり、CoupaにもCoupaのルールがある。さらに、積水化学さん側(がわ)のシステムのルールもあり、複数ルールの中で共通化できるところを見いだし、実際に連結していく業務は本当に大変でした」と打ち明ける。

共に苦労をしたという上園氏と松田

現場を担当する松田と上園氏の苦労は2年程度続いた。苦闘する中で光明が見えたのは2023年になってからという。連結の目途が立ち、テスト運用を経て現在は実際に一部の工場で本導入されている。各工場への導入は着々と進んでいるという。松田は現状を次のように話す。

「MROストッカー単体だと棚から取り出し、スマホで読み取ると、購入が完了してしまう仕様でした。しかし、積水化学の工場を管理する側(がわ)にしてみると、不要なものまで作業員に購入されてしまうのでは? という懸念があります。そこでCoupaと連携し、月次の利用金額、明細を全てCoupa上で管理できるようにしました。そうすることで、工場側も受け入れようという気持ちが高まったように思えます」

2社の協業の先に見据える未来のサプライチェーン

「実際にやってみて、現場の方々が喜んでくれているのはうれしい」と松田は話し、上園氏は「MROストッカーを通じて、工場の方々からもっとこういうものを置いてほしいなどの話がでてくることで、私たちの学びにもなります。MROストッカーは一つのサービスではありますが、単独のサービスとして考えてはいません。サプライチェーン全体を効率化していくための打ち手の一つです」と続ける。未来のサプライチェーンを描く中でMROストッカーがあるというのだ。

2社の協業は始まったばかりだが、未来のサプライチェーンを生み出すために、すでに新しい取り組みの検討にも入っている。

「MROストッカーには、よく使う工具とかが置かれるのですが、普段はそれほど使わないけれども、工場の操業保全や予防保全につながるようなものを置いてもらえないかと思っています。そうすることで、何か工場に不測の事態が起きた時に迅速に対応できるでしょう」

積水化学の池本はそう話す。一方で、トラスコ中山にするといつ売れるかわからない商品を棚にずっと置いておくリスクが発生する。双方がWin-Winであるためには、料金プランも含めて見直しが必要となってくるだろう。しかし、実際に運用してみなければ見えてこなかった話でもある。松田が続ける。

「さらに、トラスコ中山さんのカタログの中には積水化学の商品もかなりあります。MROストッカーの補充便は定期的にくるので、例えばその時に積水化学の商品を載せて帰ってもらう。そうすると帰りは空の状態で車を走らせなくて済みます」

松田はMROストッカーを通じてCO2削減にもつながると話す

これまで1社だけで扱っていた便を2社で取り扱い、無駄を減らす。この取り組みは2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に上限制限がかかる「物流2024年問題」に対しても有効な打ち手になりそうだ。

「そもそもMROストッカーは現地に事前に置いておくことで配送の回数を減らし、CO2の削減につながるメリットもあります。荷台の配送も片道だけでなく往復で無駄を減らせば、さらにCO2の削減につながるでしょう。検討は始まったばかりで、仕組みを変える上でハードルはありますが前向きに進めていきたいですね」

トラスコ中山の山本氏はそう話し、上園氏もうなずく。池本は「積水化学では複数のDX関連の取り組みを走らせ、その成果をDXによる貢献度として可視化しています。そのスコアでいうとまだこの取り組みは道半ば。取り組みを進めることで成果をだしていきたい」と今後の進捗(しんちょく)に対する意気込みを語った。

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