「しっかり準備したのに本番でできない人」はこれが足りない…プレゼンの達人が準備より時間をかけること

2024年3月15日(金)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

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プレゼン本番に強い人は何をしているのか。緊張しいから話し方のプロになった丸山久美子さんは「プレゼン資料を作ることに一生懸命になりすぎて『資料を使って話すのは本番が初めて』という人はだいたい失敗する。緊張しても話せるようになるためには『準備<練習』で過ごす習慣をつけることだ。その際に本番での自分や周りの人の様子をイメージしながら、台本に書いてある言葉を声に出して読むと、本番で緊張しても練習の成果を発揮できる」という――。

※本稿は、丸山久美子『緊張しても「うまく話せる人」と「話せない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。


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■頭で考えている5分と、声を出して話してみる5分はあまりにも違う


「絶対に緊張するとわかっていたからこそ、事前に時間を作って準備したのに……全然うまく話せなかった……」


こうなってしまうのは、練習の時間を確保していないことが原因です。


例えば、30分間のプレゼンを任されたとしましょう。


当日を迎えるまで、あなたならどう過ごしますか?


話の内容や構成を考え、パワーポイントで資料を作り、台本も作るかもしれません。


ココからココまでを5分、ココからココまでを10分……と時間配分を決める人もいるかもしれません。人前に出るなら……と、服を選ぶこともあるでしょう。


そうこうしている内に当日が迫ってきます。


「パワーポイントを仕上げなきゃ!」と、夜な夜な資料作成に没頭したり、当日は、プレゼン直前まで台本や資料をチェックしているかもしれません。


ズバリ、聞きます。


練習はしないんですか?


準備をする時間はあったのにうまく話せなかった原因は、このように、練習の時間が取れていないことにあるのです。


仮に、「ココからココまでを5分」と決めて台本準備をしていても、本当に5分で話せるかどうかはやってみないとわかりません。


頭で考えている5分と、声を出して話してみる5分はあまりにも違います。


早く話し終えてしまうかもしれないし、時間が足りないかもしれません。


■仕事の結果が劇的に変わる配分とは


どのくらいのペースで話せば5分になるのかは、実際に声を出して時間を計ってみないとわからないのです。


もし、パワーポイントにアニメーションをたくさんつけるなら、アニメーションの数の分、操作しながら話す練習が必要です。


資料を作ることに一生懸命になりすぎて「資料を使って話すのは本番が初めて」という人はだいたい失敗します。


事前に練習すれば気づけるはずです。


30分話すためのパワーポイントのアニメーションのタイミングをすべて暗記することが、いかに至難の業であるか……! 緊張する本番では、さらに難易度が上がることも予想できるでしょう。


内容、構成、時間配分、資料作成、服装などなど、たしかに準備をすることは大切です。


しかし、これらの準備は練習がセットになって初めて意味があることを忘れないでください。


そして、緊張しても話せるようになるためには「準備<練習」で過ごす習慣をつけましょう。


頭で考えて手を動かす準備に時間を費やすのではなく、声に出して練習する時間を多くしてください。


スポーツ選手をイメージするとわかりやすいと思います。


いくらバットやボールを磨いてピカピカにしても、いくら新しいユニフォームに身を包んでも、準備をするだけでは試合で活躍することはできません。実際に体を動かして、汗をかいて、やってみて、そして初めて試合で活躍できるのです。


「準備<練習」


この配分で過ごせるかどうかで、結果は劇的に変わりますよ!


■スラスラ噛まずにただ読み上げていく練習は、本番で逆効果


練習時間を確保する大切さについて紹介しましたが、練習は「ただすればいい」というものではありません。


よくやってしまいがちな練習方法が、ひたすら台本を読むという方法です。


台本を声に出して読み上げる練習をすることを、私は略して「読み練」と言っています。読み練は、必ずした方がいいです。


しかし、読み練の仕方には注意をしてください。


読み練をする際、最初から最後まで駆け抜けるように、ただただ読んでいく人がいます。間もなければ、抑揚もありません。ただ、スラスラと噛まずに早口で読んでいくのです。


これは、現実とかけ離れた読み方なので、効果的な練習にはなりません。


練習中はスラスラ噛まずに読めて達成感があるかもしれませんが、いざ本番で緊張するとそうはいきません。スラスラ早口で読むクセがついてしまうため、本番でも早口になります。さらに、緊張と早口が重なると噛みやすくなるので、練習では言えていたはずの言葉でも、本番で噛んでしまうことが多々あるでしょう。


このように、スラスラ噛まずにただ読み上げていく練習は、本番で逆効果なのでオススメできません。


写真=iStock.com/VASYL MYKHAILENKO
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/VASYL MYKHAILENKO

■本番で誰がどんな風に動いているかまでイメージする


本番で緊張しても、練習通りに話せるようになりたいのなら、スラスラ噛まずに読もうとするのではなく、本番に近い状態で練習をしてください。


「本番ではきっとこのくらいだろうな……」とイメージしながら、その通りのスピード、間、抑揚で台本を声に出して読んでいくのです。


例えば、台本にこう書いてあったとします。


「当てはまる方は、手を挙げて教えてください。ありがとうございます」


このセリフを、本番をイメージしながら練習してみましょう。


あなたは立って話していて、目の前には10名ほどの社員がコの字に座って聞いています。そして、あなたから全員に尋ねます。


「当てはまる方は、手を挙げて教えてください」


約半分の人が手を挙げてくれました。それを確認したあなたは、手を挙げてくれた人に向けてこう伝えます。


「ありがとうございます」


このように、自分や周りの人の様子をイメージしながら、台本に書いてある言葉を声に出して読むのが、正しい読み練のやり方です。


リアルにイメージすればするほど、頭の中には動きも思い浮かぶはずです。


何人くらいが手を挙げてくれるか、どんな風に手を挙げてくれるか、それを確認する自分の様子はどんな風か……。


このように、誰がどんな風に動いているかまでイメージできると、本番に近い状態の練習になります。


「当てはまる方は手を挙げて教えてくださいありがとうございます」


とただスラスラ読むのではなく、


「当てはまる方は、手を挙げて教えてください。……(確認する間)ありがとうございます」


このように読み練ができていれば、本番で緊張しても練習の成果を発揮できます。


緊張しいな人であれば必ずと言っていいほど「噛まずに読む練習」をすると思います。


そこに、本番の様子をイメージすることもプラスしてみてください。


練習の精度がグッと高まりますよ!


写真=iStock.com/kasto80
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kasto80

■人前で話すときは、99.999%何かしらのイレギュラーが起こる


「人生は思った通りになる」と言われることもあれば「人生は予想外の連続だ」と言われることもあります。


この2つは矛盾していますが、どちらも正解だと思います。


人前で話すときは、99.999%何かしらのイレギュラーが起こります。


どれほど念入りに準備をしても、その通りに進むことなどほぼありえません。


なぜなら、外的要因が関係するからです。


聞き手から思わぬ質問をされたり、予定していた人が来なかったり、逆に、予定していなかった人まで来ることもあります。他人が何を考えどう動くかは、フタを開けてみないとわかりません。他にも、電車が遅れる、プロジェクターが故障する、パワーポイントを操作するためのリモコンの電池が切れるなどなど……。


別の場所での出来事はコントロールできませんし、物の劣化に気づけないことも多々あります。


あなた以外の外的要因から起こるイレギュラーは、予想すること自体難しいものです。


しかし、あなた自身が起こしそうなイレギュラーはどうでしょう?


緊張することは、絶対に予想できますよね。


もっと具体的にイメージを膨らませてみましょう。


そのイメージの中で、あなたはどんな状態になっていますか?


■バインダーを持って、立った状態で話してみる


もし資料を持ちながら立って話すシーンで、手が震えて資料まで揺れて困っているようなイメージが浮かぶなら……。手の震えへの対処方法を用意すればいいのです。


例えば、資料はバインダーに挟んで持つようにします。


ただ資料を紙に印刷して持っている状態だと、震えが目立つからです。


紙は柔らかいので、手の震えが伝わりやすくユラユラと揺れて目立ちます。手の震えに気づくだけならまだ耐えられるかもしれませんが、手が震えている上に持っている紙まで揺れてしまったら……不安と恐怖で頭がいっぱいになって話すどころではなくなります。


だから、手が震えても影響を受けにくい硬いバインダーを使うのです。


ただし、必ず事前に練習してくださいね!


私は、バインダーを持って話す練習をしていなかったがために、「本番で挟んでいる資料がうまくめくれず大パニックになった!」なんてことがありました。


バインダーを持って、立った状態で話してみましょう。声を出しながら、資料をめくるタイミングも練習してください。


こうして、練習をしているうちに、イメージする姿が変わってくるはずです。


■「自分のことだけは、自分で何とかできる」が基本姿勢


最初は、手が震えて困ってうまく話せない自分の姿をイメージしていましたが、対策を決めて練習を重ねていくと、緊張しても堂々と話せている自分の姿が浮かぶようになります。この状態になるまで練習するのが、成功への秘訣(ひけつ)です。



丸山久美子『緊張しても「うまく話せる人」と「話せない人」の習慣』(明日香出版社)

外的要因から起こるイレギュラーは、予想もできませんし防ぐことも難しいです。


しかし、自分のことなら話は別です。


ましてや、私たちは「緊張するとだいたいいつもこうなる」と予測できるはずです。事前に対策を考えて練習もできます。


自分で起こしそうなイレギュラーは、予想もできるし防ぐことができます。


こうした自分のイレギュラーは、準備の段階でイメージしてみてください。


もし、よくない状態しか思い浮かばなかったら、ただちに練習に取りかかりましょう。


自分のことだけは、自分で何とかできるのですから。


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丸山 久美子(まるやま・くみこ)
株式会社シャベリーズ代表取締役
18歳から展示会を中心としたイベント業界で従事。もともと緊張しやすい性格だが「人前で話せるようになりたい」と思いMCとして活動するも、ステージ上で頭が真っ白になったり、手が震えてマイクを落とすなど数々の失敗を経験。緊張を克服しようと試みたが、逆にストレス過多となり心身症を発症。緊張を克服するのではなく、独学で緊張と上手く付き合う方法や話し方を身につけ、年間385本の仕事をこなすMCに成長。企業のプレゼン代行、イベントや結婚式での司会進行、ラジオパーソナリティ、生放送通販番組のMCなど、人前で話す仕事を3000回以上経験する。2020年に株式会社シャベリーズを設立。現在は、人前で話せるようになりたいと願う人々へ、オンラインスクールや企業研修、行政や商工会議所でのセミナーを通じて、緊張との付き合い方や話し方のトレーニングを提供している。著書に『』(同文舘出版)がある。
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(株式会社シャベリーズ代表取締役 丸山 久美子)

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