群れに拒絶された牛が、孤独を乗り越え他の動物たちと友情を育むまでの物語

2025年5月7日(水)12時0分 カラパイア


SASHA Farm Animal Sanctuary


 アメリカ、ミシガン州の動物保護施設にいる巨大な雄牛「ビーマ」は、その大きさゆえに仲間の牛から拒絶され、仲間外れになってしまった。


 彼の唯一の兄弟であるダーマを亡くした後、ひとりぼっちで孤独を抱えていたビーマは誰かを愛し、愛されたかった。


 だが、施設の人間たちはもちろん、ヤギや羊、ポニーがビーマを受け入れてくれ、種を超えた友情を育み始めた。


 これは仲間外れにされた牛が、人や動物とのふれあいの中で心を癒し、自分の居場所を取り戻すまでの物語である。


ビーマがたどり着いた場所で迎える最初の試練


 ミシガン州マンチェスターにある動物保護施設「ジョージ・サーシャ・ファーム動物保護区(SASHA)[https://www.sashafarm.org/]」は、虐待を受けたり、飼い主に捨てられたりした動物を保護するための施設だ。


 ここにやってきた牛のビーマは、体重がなんと約1134kgもある巨大な雄牛だが、とても穏やかで、やさしい性格の持ち主だ。


 ビーマはもともと、兄弟のダーマと共にミシガン州の都市農園で農作業の手伝いをする予定だったが、その計画は許可が下りず白紙となり、行き場を失くした2頭は、SASHAに引き取られた。


 だが、到着後まもなくダーマは肺炎で死亡してしまう。


 ビーマ自身も大きな角が感染症を起こしてしまい、ミシガン州立大学の獣医師たちにより角を安全に除去することに成功し、ビーマは健康を取り戻した。



SASHA Farm Animal Sanctuary[https://www.instagram.com/p/DJNYC-cJKho/]


群れから拒絶され、仲間外れにされてしまったビーマ


 更なる試練がビーマを襲った。その巨大な体から、保護区にいた牛たちに受け入れてもらえず、仲間外れにされてしまったのだ。


 ビーマは大きいけれどとても温厚で、やさしい心の持ち主だ。人間たちにはそれがわかっていたのだが、牛たちにはわかってもらえなかったようだ。やがてビーマは、牛たちと同じ柵にいることができなくなってしまった。


 誰かを愛したい、そして愛されたい。そんなビーマの気持ちを察したスタッフたちは、彼に目をかけ、思う存分甘えさせた。


 それでもビーマの表情は寂しさがにじみ出ている。



SASHA Farm Animal Sanctuary[https://www.instagram.com/p/DJNYC-cJKho/]


ビーマを受け入れてくれたヤギ、羊、ポニーたち


 そんなビーマに転機が訪れた。ビーマは、ヤギや羊、ポニーたちがいるエリアに移されたのだが、小さな動物たちはすぐにビーマを受け入れた。


 誰も彼を拒むことはなく、むしろ仲間として接してくれたのだ。


 今では彼らとともに穏やかに日々を過ごしている。


 また人間のことも大好きで、訪れる人々に大型犬のようにすり寄って「撫でて」とアピールするという。


 お腹を撫でられるとゴロンと横になり、甘えるように寄り添ってくる姿に、訪問者は皆驚きつつも、癒されていく。



SASHA Farm Animal Sanctuary[https://www.instagram.com/p/DJNYC-cJKho/]


柵越しから、牛たちとの小さな絆


 ビーマが他の動物たちと仲良くやっている姿は、彼を排除した牛たちも見ていた。


 「こいつは怖れるべき存在ではなかったのかもしれない」そう認識した一部の牛は、ビーマのいる柵のそばまでやって来るようになったという。



SASHA Farm Animal Sanctuary[https://www.instagram.com/p/DJNYC-cJKho/]


 SASHAファームのスタッフであるシャラ・ジョーンズさんは、「まるで放課後に井戸端会議でもしているかのよう」だと語っている。


拒絶と孤立を経験したビーマだったが、今では種を超えた仲間と新たな絆を育みながら、同族である牛たちとも、柵越しの小さな友情を築き始めているという。



牛は愛情深く、絆を大切にする動物


 牛は非常に社会性が高く、感情豊かな動物である。牛は友達が必要なのだ。


 イギリス・ノーサンプトン大学のクリスタ・マクレナン博士の研究では、牛は特定の仲間と深い絆を築き[https://pure.northampton.ac.uk/en/studentTheses/social-bonds-in-dairy-cattle-the-effect-of-dynamic-group-systems--2]、その相手と一緒にいることで、心拍数が落ち着き、ストレスが軽減されることが明らかになっている。


 また、フランスの研究チームは、牛が30頭以上の顔を識別し、1年以上にわたって記憶する能力を持つ[https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0004441]ことを発見した。


 仲間の顔を覚え、識別し、親しみを感じる。これは人間に近い個体識別と感情的認識の能力といえる。


 さらに、牛たちはお互いを舐め合う「社会的グルーミング」を通じて、信頼関係を築き、群れ内の調和を保っている[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168159108002050?utm_source=chatgpt.com]。この行動は、単なる衛生のためではなく、心の絆を確かめ合う儀式のような意味を持つという。


 そんな牛にとって「仲間外れ」は深刻な心理的ストレスとなる。兄弟に先立たれた直後だったことからも、ビーマが感じた孤独は相当なものだったろう。


 ジョーンズさんはこう語る。「ビーマのおかげで、牛がどれほど個性豊かで、感情にあふれた動物なのかを、多くの人に伝えられるようになった」。


一度は仲間に拒絶されたものの、ビーマのやさしさは今やすべての動物とこの施設を訪れる人々に伝わっている。


 もう寂しい思いをすることはなくなった。みんながビーマに愛情を注いでくれるようになったんだ。よかったね、ビーマ。


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