KADOKAWA夏野剛社長よ、自分たちの責任に目をつぶっていないか 角川歴彦元会長が異例の「質問状」を送付していた!

2025年4月30日(水)7時0分 文春オンライン

 出版大手・KADOKAWAの角川歴彦元会長が、同社の夏野剛社長CEOら経営幹部に対して、社内のガバナンスや内部統制に大きな問題があるとして、経営責任を問う「質問状」を送付していたことがわかった。角川元会長が「 文藝春秋 」の取材に明かした。



KADOKAWAの夏野剛社長 ©時事通信社


 角川元会長は、KADOKAWAの前身、角川書店の創業家出身で、現在も約1%の株を保有している。同社会長を務めていた2022年、東京五輪のスポンサー選定をめぐって、五輪組織委員会元理事に賄賂を渡した罪に問われ、無罪を主張。起訴後、責務を果たせなくなると考え、会長職を辞任している。


 KADOKAWAをめぐっては、2024年に二つの大きな問題が起きた。一つ目は同年6月に発覚した、ハッカー集団による大規模サイバー攻撃だ。ランサムウェアによる攻撃を受けて、子会社「ドワンゴ」が運営するニコニコ動画などのサービスは停止を余儀なくされ、ロシア系のハッカー集団から多額の身代金を要求されたとも報道された。二つ目は、同年11月に、KADOKAWAと子会社が公正取引委員会から下請法違反(買いたたき)で勧告を受けた一件だ。下請け業者に対して、原稿料や撮影料を引き下げる旨を一方的に通告。引き下げ率が数十%に達したケースも複数あったという。


ガバナンスが効いているのか疑われる不祥事


 角川元会長が「質問状」で指摘したのは、この二つの問題に対する経営陣の対応だ。


「深刻だと私が感じたのは、企業としてしっかりとした説明を、対外的に行なっていないことです。KADOKAWAは出版社かつメディア企業としては珍しく、株式を上場しています。株主に対しても、社会に対しても説明責任を果たさなければならない立場なのです。また、ガバナンスが効いているのか疑われる不祥事が続きながら、ガバナンスや内部統制など組織の責任について、会社側は一切言及していない」


 角川元会長は、異例の質問状で、「(ハッカー集団に対する)身代金支払いの有無」「情報セキュリティに対する取り組みに問題はなかったのか」「下請法違反への具体的な再発防止策」などについて記述。ひと月以上が経った4月23日に夏野社長からようやく回答が来たが、内容はお粗末なものだったという。


「『身代金支払いの有無』については『回答は差し控えさせていただきます』。『情報セキュリティに対する取り組みに問題はなかったのか』という問いに対しては、『サイバー攻撃の事実のみをもって、当社における情報セキュリティ対策に不備があったとは評価し得ない』。『下請法違反への具体的な再発防止策』についても、『役職員に対する法令周知等をより徹底して行い、再発防止に努めております』と、何ら具体的な対策の記されていない答えだったのです。


 これは到底、回答と呼べるようなものではないだろう。彼らはこれで済ませるつもりなのだろうか。経営陣の姿勢を世に問うべきではないか——そう考え、今回、取材に答える形で、質問状を公開することにしたのです」(角川元会長)


「会社に復帰したいという思いから送ったわけではない」


「会社に復帰したいというような思いから、質問状を送ったわけではない」と語る角川元会長。夏野社長ら経営陣に、次のように問いかけた。


「昨年引き起こしてしまった二つの大きな問題について、いま一度考えてもらいたい。経営者が自分たちの責任に目をつぶってしまう企業に、未来はありません」


 月刊文藝春秋のウェブメディア「 文藝春秋PLUS 」では、 角川氏への独占インタビュー「KADOKAWA夏野剛社長は、説明責任を果たすべきだ」 を掲載。角川元会長の在任中にもあったランサムウェアへの被害対応、「下請けいじめ」を生んだ社内風土が作られた原因、KADOKAWAが2023年に公表したガバナンス検証委員会調査報告書の問題点などについて語っている。また 「質問状」の全文、夏野社長の回答書要旨も公開 している。


(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 電子版オリジナル)

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