19歳の“陽キャ”女子大生を惨殺した元バンドマン(33)のカメラから復元された「残酷すぎる」57枚の写真の中身――2024年読まれた記事

2025年5月1日(木)18時10分 文春オンライン


2024年、文春オンラインで反響の大きかった記事を発表します。事件部門の第1位は、こちら!(初公開日 2024/12/01)。



*  *  *


 2009年に島根の女子大生Mさんが遺体で発見された事件は、捜査特別報奨金制度が適用されたものの、犯人に繋がる情報が得られないまま7年が経過してしまった。被害者のMさんを殺害して臥龍山に遺体を遺棄した犯人はどこに潜んでいるのか。


 事件から7年後の2016年12月20日、警察は被疑者を特定したと発表した。


 性犯罪の前歴のある人物を洗い直したところ、島根県益田市に住んでいた男が捜査線上に浮上した。益田市は、Mさんが入居していた女子寮のある浜田市の隣の市である。



Mさんの遺影に献花する当時の安藤警察庁長官©時事通信社


 被疑者は矢野富栄(よしはる)。事件当時33歳の会社員だった。


 福岡県北九州市や東京都杉並区などで、面識のない女性に刃物を突きつけ猥褻な行為をしようとして怪我をさせるなど3件の事件を起こし、懲役3年6カ月の実刑判決を受けていた。矢野を担当したことのある弁護士は、メディアの取材に対して「非常に神経質な人に見えたんですよ。逆上して何をやるかわからないというタイプの人でしたね」と答えている。


「最近まであきらめモードに入っておりましたが…」


 刑期を終えた矢野は、2009年に山口県下関市の実家に戻り、アルバイト生活を送っていた。この時期に矢野はmixiに次のように記している。


 「Dr.よしゆき 2009年04月15日 05:23


 はじめまして。7年前から左手にジストニアを患っています。書痙と診断されておりましたが、こちらのコミュを見て、フォーカルジストニアって言うんだなと思いました。症状はドラムを叩くとき、ピアノを弾くときなどに現れ、左手を使う楽器全般の演奏が困難な状態です。最近まであきらめモードに入っておりましたが、思うところがあり、治療(まずは病院探しから)を再開しようかなと考えております。よろしくお願いします。」


 ハンドルネームの「Dr.よしゆき」とは、バンドをやっていたときの「ドラム担当(ドラマー)」を意味する。バンド活動を病気で断念したあとに上京し、性犯罪を犯して懲役刑に服し、出所して実家に戻った……という来歴が見えてくる。


 その直後の4月末から5月にかけての時期に、ハローワークの紹介で地元の住宅設備会社に就職し、ソーラーパネルを販売する営業職として益田市に派遣された。彼の営業範囲には、被害者Mさんの勤める「ゆめタウン」があった。


 また、矢野が益田市で住んでいたのは、会社が借り上げた二階建ての一軒家の社宅。この家の風呂場で、Mさんの遺体を解体していた。


 事件発生日(10月26日)以降も、矢野は普段と変わらず出勤していた。矢野によるmixiへの書き込みは、11月1日19時28分のものが最後となる。


「一般家庭の消費電力の実態について調べています」との見出しで、外出中に各家庭のソーラーパネルの設置状況を自然と見るようになったと、当時の仕事をするようになってから身についた習慣についてしか書かれていない。だがこの頃、勤め先に「営業先を変えて欲しい」との連絡を入れていたようだ。


「用事があるので、明日から2日間、代休がほしい」


 11月2日には警察が公開捜査に踏み切り、遺体が発見される前日(11月5日)、矢野は故郷の山口を訪れて知人に「大変なことをしてしまった」「交際している女性の関係で暴力団に追われている」と漏らしていたとの証言もある。性犯罪を繰り返してきた、卑劣で小心な犯人像が浮かぶ。


 なお、11月4日未明には、臥龍山の山頂付近を見渡せる場所に住む女性が、午前1時から午前4時頃にかけて、長々とヘッドライトを灯していた車があったのを目撃したと証言している(証言の公開は2014年10月26日)。


 そしてMさんの遺体が発見された11月6日の夜、住宅設備会社の社長のもとに「用事があるので、明日から2日間、代休がほしい」と矢野から電話があった。この社長によると、矢野は勤務態度が真面目で、休みの申請はこれが初めてだったそうだ。


 また、2016年の容疑者洗い直しの際、Mさんの遺体に付着していたビニール片が、1995年にNTTが電話帳を配布するために用意した取っ手付きのビニール袋であることが判明し、同じものが広島県だけでなく山口県にも流通していることがわかり、捜査範囲を拡大してNシステムの映像も調べ直していた。


 Nシステムとは「自動車ナンバー自動読取装置」のことで、走行車両のナンバーを記録したり、車種や同乗者の顔まで映像で確認できたりする装置のことを指す。Nシステムの映像を確認した際に不審な動きをしていた車両を見つけ、それが矢野のものであったとされる。


カメラには解体に用いたであろう文化包丁や自宅風呂場の写真が…


 これらの情報を元に、警察は2016年の夏頃から矢野の実家や勤務先本社に捜査員を派遣し、同年10月には益田市で矢野が住んでいた一軒家を家宅捜索する。同10月28日には関係先から矢野が所持していたUSBメモリを押収し、さらに11月22日には同じくデジタルカメラを押収した。


 USBメモリとデジタルカメラはデータが消去されていたが、警察は合計57枚もの写真のデータの復元に成功。そこには被害者の遺体や、解体に用いたであろう文化包丁、益田市内の自宅風呂場、自室などを写した写真が確認された。


 だがこれだけの証拠を得ても、警察は矢野を逮捕することはできなかった。


 なぜなら、矢野はすでに死亡していたからだ。



2024年 読まれた記事「事件部門」結果一覧


1位:19歳の“陽キャ”女子大生を惨殺した元バンドマン(33)のカメラから復元された「残酷すぎる」57枚の写真の中身
https://bunshun.jp/articles/-/78620
2位:犯人は「和菓子屋」でも「教師」でも「学生」でもない…大福を食べて44人が死亡した「史上最悪の食中毒事件」調査チームが突き止めた“真犯人”の正体(1936年の事件)
https://bunshun.jp/articles/-/78619
3位:「お母さん。私、膝がどこにあるのか分からない」レイプ男から逃げようとしてマンションから転落→下半身不随に…24歳女性を“車椅子生活”にした犯人男「驚愕のその後」(2017年の事件)
https://bunshun.jp/articles/-/78618
4位:バクチに負けて“スケベ屋敷”のすぐ裏で妻を抱かせることも…「一種の文化だったわけよ」《津山三十人殺し》が起きた時代の“性に開放的すぎる風習”
https://bunshun.jp/articles/-/78617
5位:足立区の女性教師(29)が夏休みに失踪…26年間手がかりゼロだった「元・未解決事件」が動き出した“驚きの展開”
https://bunshun.jp/articles/-/78616



(加山 竜司)

文春オンライン

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