備蓄米どこ?店に届いたのは1.4%だけ...原因を探ると 中小の卸売業者が入札できない「壁」があった

2025年5月3日(土)18時25分 J-CASTニュース

コメの値上がりが止まらない。さらには茨城県・新潟県をはじめ、米どころでは米泥棒も多発しているという。頼みの備蓄米は、放出されたうち市場に出回ったのは全体のわずか1.4%と、機能しているとは言えない。

この令和の米騒動は、いつ収まるのだろうか。

21万2000トンの備蓄米を放出しているが

コメが品薄となったのは昨年(2024年)夏のことだった。

農林水産省によれば、2024年産米の相対取引価格は前年比57%増と、過去最大の値上がりとなった。

こうしたことから政府は、今年2月14日に備蓄米を放出する決定を発表。すでに2回、合計21万2000トンの備蓄米を放出している。

しかし、コメの価格は安定するどころか、16週連続で値上がりをしている。4月28日に農水省が発表したコメの全国平均価格は、4月20日までの1週間で5キロ(kg)あたり4220円と前週比0.3%増、前年同時期と比較すると2倍以上の価格となっている。

なぜか。備蓄米は放出されたものの、市場に流通していないのである。

それもそのはず、4月30日に農水省が流通状況を公表したところ、小売店に届いたのはわずか1.4%という驚きの数字だったのだ。

JA全農が19万トン落札も出荷したのは29%

備蓄米は農水省が「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(需給安定法)に基づいて、毎年20万トン程度を買い入れて、最大5年にわたって保管している玄米だ。

それを卸売業者が手に入れるには、法律に基づいた厳しい入札要件がある。

そのひとつが、年間の仕入量が5000トン以上の大手の集荷業者でなければ入札・落札できない、というものだ。

さらに農水省は備蓄米が転売によって価格のつり上げが行われることを恐れ、今回2回目まで備蓄米を仕入れた卸売業者が別の業者に販売させないような施策をとっていた。

中小の卸売業者は手が出せず、2回目に放出された備蓄米は94%がJA全農(全国農業協同組合連合会)が落札する結果となった。

この結果を見た農水省は、4月の入札から卸売業者同士の販売を認めることにした。

ところで、このJA全農が2回目までに落札した備蓄米約19万トンのうち、契約先に出荷したのはわずか29%(5月1日の時点で)と、流通が停滞していることが明らかになっている。

減反政策や従事者不足、生産コスト上昇で供給力低下

ゴールデンウィークは多くの米どころで、田植えのシーズンでもある。これから育てられるコメが収穫される秋には価格も下がるのではないか......という望みは、どうやら厳しそうだ。

実は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の影響で小麦価格が高騰して以降、麺・パン類の価格が上がってコメの需要が増加傾向を見せていた。

だがそれに反して、減反政策や従事者不足に加えて資材価格高騰による生産コストの上昇も加わり、コメの供給力が低下してきたという、日本が長年抱えてきた問題が横たわっている。

そのうえ備蓄米には、政府が売り渡した業者から1年以内に同じ量・品質のコメを買い戻すというルールがある。

そうなれば、さらにコメの市場供給量が減ることも考えられる。

こうしたことから、今年から来年にかけても、コメの需給がひっ迫する確率は高いと言わざるを得ない。ひっ迫する状況が続けば、消費者の不安は高まり、パニック的に価格高騰が起こる可能性すらある。

遅きに失した米騒動対策。これから政府がどれだけ迅速な対応をとれるかが、収束のカギとなるだろう。

J-CASTニュース

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