愛子さまは公務と仕事に「全力投球」、車中でぎりぎりまで資料読み込む…両陛下が手本
2025年5月3日(土)15時24分 読売新聞
北極域研究船「みらい2」の命名・進水式で、支え綱に慎重におのを振り下ろされる愛子さま(3月19日、横浜市磯子区で)=帖地洸平撮影
[令和の女性皇族]<上>
天皇陛下を支える皇族が減り、女性皇族が結婚後も皇室に残る案が与野党で議論されている。皇族として生まれた女性の活動や素顔から、その役割や令和の皇室のあり方を考える。
予習して
3月19日、横浜市磯子区で開かれた北極域研究船「みらい2」の命名・進水式。天皇、皇后両陛下の長女愛子さま(23)は、3回目の単独公務となったこの行事に、過去の式典の動画で予習をして臨まれた。船体につながれた綱をおので断ち切る角度にもこだわり、関係者から「成功」と聞いて
「公務と仕事の両立に努めていきたい」。昨春、学習院大卒業にあたり決意を明かされた。就職先の日本赤十字社(東京)では、常勤嘱託職員として青少年赤十字の普及に取り組まれる。「日赤の仕事は忙しいが、公務に向かう車中では、ぎりぎりまで資料を読み込み、全力投球で臨まれている」と宮内庁幹部は話す。
毎日忙しく
昨年8月の終戦の日や今年1月の阪神大震災の発生日には、午前中に日赤の仕事をお住まいの皇居・御所で行い、式典をテレビで視聴して黙とうをささげてから出勤された。
歴代天皇の崩御日などには、皇居・宮中三殿で行われる
愛子さまは、家族を愛する両陛下が国民に寄り添われる姿を見ながら成長された。幼い頃から戦争の歴史や日本文化を学び、中学校の卒業文集には「世界の平和を願って」と題した作文を寄せられた。日赤という福祉関係の仕事を選ばれたのは、皇室の役目が「国民と苦楽を共にしながら務めを果たすこと」と認識するに至ったからだ。
サポート役
昨年は地方での単独公務にも初めて臨まれた。「テレビで感じることができない足音まで聞こえ、感激でした」。昨年10月、佐賀市で国民スポーツ大会の陸上競技を観戦し、そう笑顔で語られた。佐賀陸上競技協会の末次康裕会長(82)は「言葉遣いや態度が優しく、はっきりした受け答えが印象的だった」と喜ぶ。丁寧で柔らかな物腰は、行く先々での両陛下の姿と重なる。
天皇陛下は今年2月の記者会見で、「3人で都内の行事や博物館に行っておりますので、私たちの様子も見ながら公務を行ったようです」と背景を説明された。ご一家での公的な外出は今年に入って4回に上る。
皇室に詳しい名古屋大の河西秀哉准教授(日本近現代史)は「愛子さまが加わることでさらに雰囲気がよくなり、公務の意義が世間に伝わりやすくなっている。皇后さまが療養されるなか、両陛下のサポート役を果たされている」と指摘する。
週末には友人や同僚らと映画や外食に出かけ、若者らしい一面もみせられる愛子さま。今年のバレンタインデーには、世話役の職員らに即席のみそ汁を配り、日頃の労をねぎらわれた。
「人を愛する者はいつも人に愛され、人を敬う者はいつも人に敬われる」。お名前と「
縮む皇室 公務は増…男性皇族からも引き継ぐ
秋篠宮家の次女佳子さま(30)が誕生された1994年、皇室は26人(男性8人、女性18人)で構成された。逝去や結婚で現在は16人(男性5人、女性11人)になったが、皇族方が担う総裁職は75から92に増えた。
令和への代替わりでは、皇太子夫妻の公務だった「献血運動推進全国大会」が秋篠宮妃紀子さま(58)に、「全国農業担い手サミット」が寛仁親王妃信子さま(70)にそれぞれ引き継がれた。
高円宮妃久子さま(71)は102年ぶりに皇族としてロシアを訪問するなど国内外で活躍されている。佳子さまは日本工芸会、三笠宮家の彬子さま(43)は日本・トルコ協会など、かつて男性皇族が担った総裁職のほか様々な行事を引き継がれている。
皇室制度に詳しい小田部雄次・静岡福祉大名誉教授は「皇室の公務は多く、見直しは必至だ。安定的な皇位継承や皇族数確保の議論を急ぐべきだ」と指摘する。