個性を生かして皇室支える彬子さま・瑶子さま・承子さま…3人の女王に重なる父の姿
2025年5月5日(月)12時40分 読売新聞
全日本中学生水の作文コンクールの受賞者らと歓談される瑶子さま(2024年8月1日、東京都千代田区で)=佐藤俊和撮影
[令和の女性皇族]<下>
三笠宮家、高円宮家の3人の女王も、それぞれの個性を生かして令和の皇室を支えられている。
◆女王=天皇のひ孫以降にあたる女子。皇室の基本法「皇室典範」で定められている。彬子さま、瑶子さま、承子さまは大正天皇のひ孫。天皇の子、孫の女子は「内親王」という。
留学記がベストセラー「とても気さく」な彬子さま
三笠宮家の彬子さま(43)は日本美術の専門家として大学で教べんを執る傍ら、エッセーの書き手としても知られる。昨年は、英オックスフォード大で博士号を取るまでの6年間をつづられた留学記「赤と青のガウン」が文庫化され、38万部発行のベストセラーになった。月刊誌で留学記の連載を担当したPHP研究所の永田貴之さん(52)は「とても気さくな方。原稿の完成度の高さに驚いた」と振り返る。
彬子さまは普段、京都で暮らし、日本文化を次世代に伝える団体を運営して、伝統工芸や農業などの体験会に自ら携わる。3月に京都市で開かれた書評大会では、会場の中学生らに「海外に行くと日本の代表として扱われる。本を読んで自分の国の歴史や文化を知って」と思いを伝えられた。
公務では、父の
瑶子さまはモータースポーツで冠杯、障害者にも寄り添われ
寛仁さまの影響を受けられているのは、妹の瑶子さま(41)も同じだ。「ヒゲの殿下」で知られた寛仁さまは障害者福祉やスポーツ振興などに尽くされた。
瑶子さまは2022年6月、宮内庁の記者会に寄せた直筆の手紙で「父であれば、どう思うか」と考え公務に臨んでいるとつづられた。そして、自身が感音性難聴であることも明かされた。
同年秋に訪れた石川県小松市の「ホームホスピス」では、スタッフの子どもが耳が不自由と知ると「私もそうなの」と語りかけられた。運営する榊原千秋さん(63)は、「耳の不調を肯定的に受け止め、周囲に優しく振る舞われる姿に励まされた」と話す。
昨年7月には、国内最高峰の自動車レース「全日本スーパーフォーミュラ選手権」に瑶子女王杯を贈られた。4月6日に開かれたF1日本グランプリは、彬子さま、瑶子さまがそれぞれ観戦に訪れ、モータースポーツの振興を後押しされた。
承子さまは公務と仕事を両立、平和への強い思いも
高円宮家の長女承子さま(39)は公務と日本ユニセフ協会(東京)の仕事との両立を10年以上続けられている。その姿は国際交流基金(同)で働き、「サラリーマン生活」を送られた父・高円宮さまの姿と重なる。協会では世界の貧困地域でのユニセフによる支援活動の啓発を担当し、国内を忙しく回られる。
平和に対する思いは強い。昨年8月7日、被爆地・長崎市で行われた全国高校総体アーチェリー競技の閉会式。承子さまはあいさつで「今も、世界中で争いが続いている」と述べ、「世界にはスポーツを楽しむことすらできない子どもがいる。平和のためにできることはないか考えてほしい」と訴えられた。
その後の原爆被爆者らとの面会では、しゃがみこんで話に耳を傾けられた。長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(84)は、「各地への『慰霊の旅』を続け、平和を願われた平成の天皇陛下の思いが、現在の皇室にも継承されていることが実感できた」と話した。
課題を先送り、皇族の減少続く
現在行われている安定的な皇位継承に関する与野党協議では、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案はおおむね賛同を得ているが、夫と子どもに皇族の身分を与えるかどうかで各党の意見が割れている。
小泉内閣で2005年1月に議論が始まって以降、課題は長年先送りされてきた。この間、上皇ご夫妻の長女・黒田清子さん(56)、高円宮家の次女・千家典子さん(36)、三女・守谷絢子さん(34)、秋篠宮家の長女・小室眞子さん(33)の4人が結婚で皇室を離れた。05年末に22人で構成された皇室は現在16人で、全員が成年を迎えている。
宮内庁幹部は「女性皇族の人生の制度設計に大きく関わる話で、早く結論を出してほしい」と話す。(この連載は、水野祥、坂場香織、大塚美智子が担当しました)