「店燃やしたる!」ホレた女性にフラレて逆ギレ→店にガソリンをまいて…人気スナックのママを焼き殺した男(35)の“身勝手すぎる犯行動機”(2012年の事件)
2025年5月10日(土)18時0分 文春オンライン
「徹底的にやったる。店燃やしたる。殺したるで!」
2012年に起きた「スナック放火事件」。男はなぜ、一度は愛した女性を焼死させたのか…。事件に至るまでの経緯をお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/ 後編を読む )

◆◆◆
人気スナックで起きた「不幸な出会い」
水商売をしていた母親に苦労して育てられた安井愛美さん(当時27)。中学卒業後にすぐに働きに出て、10代で結婚・出産。幼い息子を怒鳴り散らす夫に嫌気がさし、数年で離婚し実家に戻った。
実家には母親とワーキングプアの兄がいた。愛美さんの息子は病気がちで、その世話に追われながらも、一家を支えるために懸命に働き、「いつか一緒にスナックをやりたい」という母親の夢をかなえるため、資金をためて2009年にスナックを開業した。
人当たりのいい愛美さんがママになり、母親や友人らが従業員として働き、アットホームな雰囲気が受けて、たちまち人気スナックになった。そこへ客としてやってきたのが鈴村健(同35)だった。
鈴村は既婚者だったが、地元に妻子を残して、出稼ぎに来ている建設業の親方だった。愛美さんを一目見て気に入った鈴村は、妻帯者であることを隠して交際を迫り、毎日のように店に通い詰めた。愛美さんの息子が病気がちなことを知ると、見舞金として10万円をポンと渡したり、テレビや指輪、ネックレスなどを次々と買い与え、巧みに愛美さんの気を引いて、半年後には交際にこぎつけた。
「愛美ちゃん、オレはアンタと付き合うのが夢だったんだ」
「でも私、結婚は出来ないの。子どもが大きくなるまではガマンしてね」
「ああ、わかってるとも」
だが、そのことが妻にバレて、鈴村は離婚に追い込まれた。すると、ますます愛美さんに執着するようになった。愛美さんが他の客と話しているだけでも怒るのだ。
「お前、あの客に気があるのか。浮気してるんじゃねぇのか?」
「そんなわけないでしょう」
「仕事が終わったら、必ずメールで報告しろ。分かったか!」
「子どもの世話もあるから約束できない」
「オレと子どものどっちが大事なんだ。家族旅行する暇があるなら、オレと付き合え!」
ついには「子どもを殺すぞ!」と脅迫
次第に息苦しくなった愛美さんは鈴村に別れ話を切り出した。すると鈴村は〈子どもを殺すぞ!〉などと脅迫してきた。それに耐えかねた愛美さんがスナックへの出入り禁止を言い渡すと、〈それなら今までにやった金もプレゼントも全部返せ!〉というメールを送りつけてきた。
「もうこの際だから、全部返すわ。私が返すことなんかできないと思って、こんなメールで嫌がらせしているのよ」
愛美さんはプレゼントされたものに加え、鈴村から受け取った現金21万5000円を用意し、それを母親と兄の交際相手に託した。
「変なことをお願いして申し訳ないけど、これを鈴村のところに持っていってほしい。私が行くとまたモメるに決まってるから」
「店燃やしたる。殺したるで!」
母親と兄の交際相手は了承し、2人で鈴村のもとを訪れた。鈴村は自分が贈ったものを全部返しに来たと知って衝撃を受け、「本気にしたのか。そんなものを持ってこられても、オレの気が変になるだけだ。持って帰れ!」と拒否した。
だが、母親は「後から返せと言われても困るから」と押し切り、鈴村の胸に現金入りの封筒を叩きつけて一喝した。
「アンタねぇ、いい加減にしぃや。愛美が迷惑しとるんよ。息子にあげたオモチャまで返せなんて、どういう男や。私も長く水商売しとるけど、アンタみたいな男見たことないわ。もうこれで終わりにしてや!」
「何で母親のアンタが出てくるんだ。これはオレと愛美の問題だろう!」
「もうその域をとっくに超えとるやろ。こんなんタダの痴話ゲンカとちゃうわ。『殺す』とか『燃やす』とか、しつこくメール送ってきて、ここに警察を呼んでもええんやで。今日だって店を閉めなアカンようになった。営業妨害や!」
「何やと!」
「事実やないか!」
その場は周囲に人がいたので収まったが、後から愛美さんに怒り狂った鈴村からメールが送られてきた。
〈〈ゼニ返してもらうのに、何であんなボロクソ言われなアカンのや。あんなにバカにされたのは生まれて初めてや。いちいち母親を出すな、お前いくつや?〉〉
愛美さんがそれでも無視していると、彼女の裸の写真を添付してこんなメールを送りつけてきた。
〈〈もう頭おかしくなってきたわ。人間不信になった。徹底的にやったる。店燃やしたる。殺したるで!〉〉
スナックにガソリンをまいた犯人
それでも無視され、完全に愛想を尽かされたことを悟ると、鈴村は失恋の悲しみで悶々となった。
「離婚までして付き合っていたのに、この仕打ちは何なんだ。金の切れ目が縁の切れ目っちゅうんか。オレが本気で殺すわけがないと思ってるんだろう。あのアマ、ナメやがって……」
事件当日、鈴村は灯油とガソリンを混ぜ合わせた混合液体を20リットル用意し、スナックへ向かった。確実に逃げ場を失わせるため、まず店の周囲の外壁に混合液体をまいた。
〈 《懲役は…》「あんなに燃えるとは思いませんでした」自分を振った女性の働く店にガソリンをまいて殺害…誰もが死刑を望んだ『ストーカー男(35)の末路』(2012年の事件) 〉へ続く
(諸岡 宏樹)
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