「ヒートアイランド」の熱1割削減、局地豪雨の雨量が2割軽減…京大チームがシミュレーション
2025年5月12日(月)19時21分 読売新聞
京都大学
都市部の「ヒートアイランド現象」で発生する熱を1割削減できれば、局地豪雨の雨量を2割減らせるとするシミュレーションの結果を、京都大チームがまとめた。都市の排熱を抑える新技術は開催中の大阪・関西万博でも披露されており、豪雨対策にも役立つことが示された。論文が12日、国際科学誌に掲載された。
夏場は道路のアスファルトやビルのコンクリートが太陽光を浴びて熱くなり、空調機器からも大量の熱が排出される。このため都市部は周辺地域より気温が高くなり、局地的な集中豪雨が起きやすいとされる。
京都大防災研究所の竹見哲也教授(気象学)らは、大阪市を中心とした20キロ四方の範囲で気温が上昇して積乱雲が作られる様子を、スーパーコンピューターで再現。2年前の8月に発生した局地豪雨の雨量データを基に計算したところ、排熱量を1割削減すれば全体の雨量は18%、ピーク時の雨の強さも9%、抑えられることがわかった。大気の状態が安定し、積乱雲の急な発達が抑制されたという。
大阪・関西万博では、太陽光を受けても熱くならない特殊な建築素材や、水を使うことで放熱量を抑えた空調システムなどがパビリオンに導入されている。竹見教授は「計算結果をいかし、気象の制御技術の開発につなげたい」としている。
国立環境研究所の高根雄也主任研究員(都市気候学)の話「排熱対策の有用性をわかりやすく示した研究成果だ。一つの対策のみで排熱を大きく減らすことは難しく、産業界だけでなく、各家庭の空調の効率化など個人レベルでの取り組みも必要になるだろう」