「得た金は全部クスリに消えた」「14歳のときから、だいたいキマっていた」売春詐欺や車上荒らしを繰り返しては、覚醒剤に溺れていた“ヤクザの子”がたどり着いた「意外な天職」
2025年5月25日(日)18時0分 文春オンライン
〈 「私はヤっちゃう方だった」「もう別次元の快楽」“14歳の少女”は、覚醒剤に狂う母の後を追って自身も薬物の沼に溺れていった…「ヤクザの子」が振り返る怒涛の半生 〉から続く
国家から「反社会的組織」と定義されている暴力団。その構成員や準構成員の家族、とりわけ子どもはどのような人生を過ごし、大人になっていくのか。『 ヤクザの子 』(石井 光太著、新潮社)から一部抜粋し、小学生時代に母が覚醒剤の密売で逮捕され、自身も14歳から覚醒剤に溺れた一恵のケースをお届けする。なお、登場する証言者やその関係者は、身に危険が及ぶことを考慮して全て仮名にしている。(全3回の3回目/ 1回目を読む / 2回目を読む )

◆◆◆
次女は実家で暮らすと言ったが、一恵は祖父母と住んで自由を奪われることを嫌い、一人暮らしをすることにした。彼女は言った。
「私、高校を辞めて家を出て独りで生きていく」
「金は?」
「自分でどうにかするよ。母さんの名義でアパートだけ借りて」
一恵は、母親にアパートを借りてもらうと、高校を中退し、荷物の配送のアシスタントの仕事に就いた。給料は25万円ほどで、一人で生活していくには十分なはずだった。しかし、覚醒剤の常用者となっていた彼女には、それだけではまったく足りない。覚醒剤だけで月に30万〜40万円分をつかっていたのである。
そこで一恵は配送の仕事をする一方で、夜に中学時代の仲間とともに車上荒らしと売春詐欺をはじめた。
男たちの劣情に付け込んだ「売春詐欺」の手法とは
車上荒らしは、近所の有名な心霊スポットで行った。夏の夜には、車を駐車場に停めて、大学生や会社員のカップルたちが幽霊の出ると言われる暗がりに出かけていた。一恵たちは原付で駐車場を回って、荷物が置きっぱなしになっている車を探した。
ターゲットの車を見つけると、フロントガラスにタオルケットを押しつけてから金槌で割り、素早く車内の荷物を持って逃げる。駐車場には防犯カメラがなく、フロントガラスが割れる音もしないので、捕まることはなかった。
売春詐欺の方は、流行っていた「出会い系サイト」を利用した。一恵が女子高生と称して嘘のプロフィールと写真を載せると、一晩で何百通という男性からのメールが届いた。一恵はその中からだましやすそうな会社員を選んで、駅前で待ち合わせ、近くのラブホテルへ入る。
彼女は「先にシャワーを浴びて来て」と言い、男性がバスルームにいる間に、財布を奪って逃げる。会社員たちは、買春をしている後ろめたさから、誰一人として警察に名乗り出る者はいなかった。
「仕事の時以外はキマってない時がなかった」
一恵は言う。
「こうして手に入れた金は、ほとんどっていうか、全部クスリにつかってたね。金を手にすればするだけ、クスリを買っちゃうの。仕事の時以外はキマってない時がなかったくらいだった。14歳の時からそうだったし、お母さんも含めて周りの人がみんなそうだったから、当たり前って感じだった」
覚醒剤づけの日々から一恵が脱したのは、17歳の時だった。1歳年上の男性との間に、子供ができたのだ。妊娠が判明した当初から、つわりが激しく何日も寝たきりになっているうちに、覚醒剤をやりたいという衝動が消え失せた。
その後、長男を出産、1年後には次男を妊娠した。この時も妊娠中のつわりや、育児の忙しさが重なって、自然と覚醒剤から距離を置いた。
図らずも、一恵は3年にわたって覚醒剤を止めることになったのだが、家庭が円満というわけではなかった。第2子の妊娠がわかった頃から、夫婦のいさかいが絶えなくなり、出産前には別居をしていた。産後も関係は修復できず、2歳児とゼロ歳児を抱えたまま離婚を決めた。
一恵は独力で2人の子供を育てるのは難しいと思い、母親の美奈子を頼った。以前には同居を拒まれていたが、他に頼る人がいなかったのだ。美奈子も再婚相手の文明も戸惑ったが、子連れの一恵を追い返すわけにもいかず受け入れた。
「警察に追われることもある」義父との“グレーな商売”が意外な天職に
この頃、義父の文明は軽トラックを走らせて古紙回収業をして生計を立てていた。以前は、暴力団一本で生きていたが、70歳を迎えて代紋だけでは食べていけなくなったため、街で雑誌や新聞を集めて売る仕事をしていたのだ。文明の話では、年老いた構成員はシノギができなくなり、何かしらの仕事を持つのが普通なのだそうだ。
一恵は仕事に困っていたことから、文明の仕事を手伝って小遣い稼ぎをした。軽トラックの助手席にすわり、道端に置いてある古紙を片っ端から荷台に乗せていくのだ。キロ単位で買ってもらえるため、集めれば集めるだけ金になった。彼女はこの仕事を次のように説明する。
「古紙回収業って、食えないヤクザがやることも結構あるみたい。やってみて知ったんだけど、結構グレーな商売なんだよね。普通、新聞は正規の業者が回収に来るし、雑誌とかは資源ごみの日に回収って決まっているじゃん。だから、ヤクザが古紙回収業をやる場合って、正規の業者やごみ回収車が来る前に街を回ってそれを盗んで売るの。
同じようなことをしている業者って結構いるから、その日は真夜中から軽トラを走らせて集める。同業者と奪い合いになることもあれば、警察に見つかって追われることもある。結構スリルあるんだよね。でも、やればやるだけ儲かるっていうのは夢がある仕事だと思ったよ」
とはいえ、70歳の構成員と19歳のシングルマザーが手を組んでやったところで、大した額になるわけではない。子供たちが大きくなれば、今以上にお金がかかるのも明らかだ。
「あなた、暴力団組員の家に住んでいますね」
一恵は古紙回収業を気に入っていたものの、美奈子と文明に迷惑をかけたくないという思いから、生活保護を受けることにした。そうすれば、最低限の収入だけは手に入れられる。
ネットで調べてから、一恵は市役所へ行って、生活保護の申請をした。すると、担当職員から意外なことを言われた。
「あなたは、暴力団組員の家に住んでいますね。今のままでは、生活保護は受けられません」
「別にヤクザに養ってもらってるわけじゃありませんよ」
「同居している限りは認められないのです。生活保護を受給したいなら、別々に暮らす必要があります」
出て行けと言われても、いきなり1人で2児の世話ができる自信はなかった。
(石井 光太/Webオリジナル(外部転載))
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