日鉄買収承認へ 日米経済協力の象徴にしたい

2025年5月25日(日)5時0分 読売新聞

 日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画を巡って、トランプ米大統領が両社の計画的なパートナーシップ(提携)を承認する意向を表明した。

 最終決定に向け、詰めの作業を誤らぬようにしながら、日米の経済協力の重要性を象徴的に示す成功例へと発展させていきたい。

 トランプ氏は日本製鉄の買収計画について、「これは計画的な提携で、少なくとも7万人の雇用を創出し、米国経済に140億ドル(約2兆円)の効果をもたらす」とSNSに投稿した。

 日本製鉄による投資の大部分が今後14か月以内に行われ、USスチールの本社はペンシルベニア州ピッツバーグに維持されると説明した。トランプ氏は30日にピッツバーグを訪れるという。

 日本製鉄は、「トランプ氏の英断に心より敬意を表す」とのコメントを出した。中国の過剰生産と安値攻勢に世界の企業が苦しむ中、日米を代表する鉄鋼メーカーが組む意義は極めて大きい。

 トランプ氏は、米国の製造業復活を最も重要な政治課題に掲げている。日本製鉄の提案内容が、雇用増や競争力の強化につながる内容だと判断したのだとすれば、画期的な進展だと言える。

 日本製鉄は高性能な鉄鋼の生産技術をUSスチールに提供し、老朽化した生産設備の更新などに巨額の投資も計画する。USスチールの粗鋼生産量は世界で20位以下に沈んでいるが、再び成長軌道に乗ることも期待できよう。

 日本製鉄にとっても、日本の自動車メーカーが多く進出する米国内で生産力を増強し、新たな成長基盤を整えることができる。

 日本製鉄のUSスチール買収計画は、米国内の政治に翻弄ほんろうされてきた。かつて世界最大の鉄鋼会社だったUSスチールは米製造業を象徴する名門企業であるだけに、経済合理性よりも政治的な判断が優先される状況になっていた。

 日本製鉄は計画を2023年12月に発表したが、バイデン前大統領は今年1月、安全保障上の懸念を理由に買収禁止を命じた。

 買収阻止の理由は支持基盤である鉄鋼の労働組合への配慮が大きかったとみられている。

 一方、トランプ氏も大統領選では買収への反対を表明していた。だが今年4月、一転して買収計画の再審査を指示し、今月21日が審査期限となっていた。

 完全子会社化など具体的な枠組みは明らかになっていない。細部の調整は丁寧に進めてほしい。

ヨミドクター 中学受験サポート 読売新聞購読ボタン 読売新聞

「買収」をもっと詳しく

「買収」のニュース

「買収」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ