ウォーキングよりも効果的…骨密度をキープし認知症の予防に役立つ「思い立ったらすぐできる」運動の名前
2025年3月6日(木)7時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west
※本稿は、大武美保子『脳が長持ちする会話』(ウェッジ)の一部を再編集したものです。
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■広い世代におすすめなのはウォーキングだけど…
適度な運動習慣は、健康維持のためだけでなく、脳を長持ちさせるためにも欠かせない要素です。適度な運動により、代謝が促され、脳を含む全身の細胞の老廃物を身体の外に排出できます。無理なく続けられ、広い世代におすすめできるのがウォーキング。道具いらずで、すぐ実践できるのが、なんと言っても魅力です。
ただ、認知症予防を想定した場合、ウォーキングだけでは不十分なところがあります。それは、骨への負荷が足りず、骨密度を維持しづらい点です。
骨密度の低下は認知症の直接の原因になるわけではありませんが、骨粗しょう症になって骨がもろくなると骨折しやすくなります。高齢者が骨折すると外出への意欲が一気に減少し、行動範囲が狭まります。運動ができなくなり、場合によっては歩くことにも支障が出ます。その結果、人との交流が減り、認知機能を活用する機会も少なくなって、認知症を発症しやすくなるというわけです。
■骨密度を保つためのポイントは「骨への衝撃」
骨密度を保つための運動の重要なポイントは、骨への衝撃があること。おすすめは縄跳びです。以前、息子たちと公園へ行ったとき、砂遊びに夢中な二人を見守りながら手持ち無沙汰だったので、「エア縄跳び」をしてみました。跳び縄を持っていなかったので、縄を回す体でぴょんぴょんしてみたのです。
エアとはいえ縄跳びですから、全身の骨にしっかり衝撃が行き渡ります。リアル縄跳びではできないかもしれない二重跳びやあや跳びも自在で、達成感さえあります。
周囲への配慮は必要ですが、思い立ったらすぐでき、一階であれば室内でも可能です。ちなみに、縄がなくて持ち手だけがついていて、それを握って跳ぶと、跳んだ回数を計測できる「エア縄跳び」も販売しているようです。
爪先立って両足のかかとを床にストンと落とす「かかと落とし」は、骨粗しょう症予防としてよく知られています。横断歩道での信号待ちなど、待ち時間の運動に取り入れられます。ソファでゴロゴロする時間が多い人は、立っている時間を増やすだけで骨に負荷を与えられ、筋力を維持できると言います。スクワットも足腰を強くします。家やオフィスですぐできることを一つ持っておくと、継続しやすくなるでしょう。
■抗酸化作用がある食べ物は積極的に摂りたい
脳の健康と食事は、切っても切り離せない関係にあります。
そこで、積極的に摂りたいのが野菜、くだもの、青魚、ワインなど、抗酸化作用がある食べ物、飲み物です。抗酸化作用があるこれらの食べ物や飲み物は、体の中にできた活性酸素が悪さをして、体をサビつかせるのを防いでくれます。
写真=iStock.com/carlosgaw
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・野菜(カロテンが豊富なニンジン、カボチャなど)
・くだもの(ポリフェノールの一種であるアントシアニンが含まれるブドウ、ブルーベリーなど紫色の食べ物)
・青魚(不飽和脂肪酸であるDHAやEPAは、サバ、イワシなどに豊富)
・ワイン(ブドウから作られるのでアントシアニンが含まれる)
特にポリフェノールには、抗酸化作用、抗炎症作用、抗糖化作用があり、意識して摂りたいものです。
■「甘い物の食べ過ぎ」を予防するルール
中年以降は食べ過ぎを控えるだけでなく、特に糖質や塩分の摂り過ぎに留意すれば、加齢を遅らせることに役立ちます。食事の塩分には気を使えても、糖分を控えるのが難しいという場合は、自分の中でルールを作っておくと、改善しやすくなります。
私の場合は、「甘い物は人と会うときと、仕事が一山超えたときだけ」というルールを設けています。せっかくの会食やランチで、自分だけデザートを我慢するのはあまりにも酷です。会議や打ち合わせの際、先方が用意してくださったお菓子に全く手をつけないのも申し訳ない気がします。今日はよくがんばったなあと思えるイベントや締め切りの後に、カフェで一人打ち上げることもあります。
そのようなシチュエーションでは自分を許してあげ、その代わりに普段は、甘い物を身近に置かない、目に入れない、そもそも買わないことを心がけています。
以前は、クッキーや羊羹などを意識せず好きなだけ口に入れていましたが、ルールがあることで、それほどつらさを感じずに継続できることが身をもって実感できました。小さな生活の工夫で脳と身体にアプローチしていきましょう。
■質の良い睡眠のため、日中を活発に過ごす
脳内にある神経細胞だけでなくすべての細胞は、活動を通じて老廃物が発生します。神経細胞で発生し、溜まると有害なのがアミロイドβという物質で、アルツハイマー病を引き起こし、認知症発症リスクを上げる原因の一つであると言われています。この老廃物を脳内から除去する上で重要なのが、質の良い睡眠です。
大武美保子『脳が長持ちする会話』(ウェッジ)
寝付けない、眠りが浅い、夜中に何度も目覚める、常に睡眠不足。忙しい年代の多くが、睡眠の悩みを抱えているのではないでしょうか。良い睡眠とは、単に時間の長さを指すのではなく、眠りの深さも重要な目安です。起床時に「目覚めが良い」と感じられ、熟睡感があり、活力が湧いてくるようなら、たとえ時間は十分とは言えなくてもグッと深く眠れた証拠です。
毎日の睡眠の質を上げるには、起床・就寝・食事など一日のリズムを大切にすること。そして、日中を活発に過ごすことがカギになります。運動を習慣づけるのが難しい場合も、階段を使う、ひと駅歩くといった工夫はできますし、能動的に頭を使うことで日々良い睡眠を得ることができます。ひいてはその習慣が、脳を長持ちさせます。
睡眠不足は忙しい人の多くに共通の悩みであると思います。この解決法は筆者もまだ十分編み出せていないのですが、突き詰めると時間管理の問題なので、時間管理術を実践し、自分に合う方法を見つけるのがよいと思います。
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大武 美保子(おおたけ・みほこ)
理化学研究所ロボット工学博士、認知症予防研究者
理化学研究所 革新知能統合研究センター 目的指向基盤技術研究グループ 認知行動支援技術チーム チームリーダー。東京大学大学院博士課程修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院特任助手、助教授、准教授などを経て現職。祖母の認知症をきっかけに、会話支援AIによる認知行動支援技術の開発に従事。会話訓練法として編み出した「共想法」と会話支援ロボット「ぼのちゃん」を活用した認知症予防支援にも取り組む。
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(理化学研究所ロボット工学博士、認知症予防研究者 大武 美保子)