「性加害で訴えられる男性」には共通点がある…弁護士が解説「特に性犯罪トラブルに巻き込まれやすい職業」

2025年3月24日(月)17時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

性犯罪が厳罰化されたにもかかわらず、毎日のように性加害のニュースが報道されている。トラブルに巻き込まれないためにはどうすればいいのか。弁護士・加藤博太郎さんの著書『セックス コンプライアンス』(扶桑社新書)より、一部を紹介する——。
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■女性に訴えられる男性の3つの共通点


私は、数多くの不同意性交等・わいせつ事案に携わるうち、悪意がなかったにもかかわらず、思いがけず女性から被害を訴えられたという男性の行動パターンに、3つの共通点があることに気がつきました。それは以下です。


・コンドームなど避妊具を使用しない
・行為の後、すぐに女性と離れる(現地解散や女性を帰す行為)
・行為の後、女性からの連絡に返事をしない

順番に説明しましょう。


まず1つ目は、文字通りコンドームを使用せずに性行為に及んでいるケースです。「そのほうが気持ちいいから」や「ゴムがなかった」など、軽い気持ちで生セックスに及んだ経験のある男性もいると思います。一方の女性も、男性の要求に根負けしたり、一時的な感情の盛り上がりなどでそれに応じることもあるでしょう。


しかし、男女で異なるのは「行為後」です。男性にとっては、コンドームなしで性行為をしたことは「いい思い出」になるか、気にもしなくなるでしょう。


■女性は不安だらけの日々を送ることに


ところが女性はそうはいきません。行為の後に数日経ち、性感染症や妊娠の不安が頭をよぎります。一方で相手の男性は行為後、そうした不安を気遣う様子も見せません。すると女性は、「なぜ私だけが不安を抱えて過ごさなければならないのか?」と不満に思い始めます。


「相手はヤリたかっただけで、私のことなんて全く考えてなかったのだ」と幻滅にも似たに感情もよぎり始めるかもしれません。


そして最終的には、「そういえば私は明確には性行為に同意していない」、「これってもしかして性被害?」と認識するようになることもあるのです。


事後に女性にとっての不安の種を残さないためにも、配偶者やよほどの信頼関係で結ばれた相手以外との性行為においてはコンドームを必ず使用しましょう。


■海外では違法となる「ステルシング」


相手に求められたにもかかわらずコンドームを使用しないことは言語道断です。その場合、相手の女性により強い不安や屈辱感を与えることとなり、性被害を受けたという認識を与える可能性が高まります。


相手に気づかれないようにコンドームを外して性行為を行うことは、海外では「ステルシング」と呼ばれ、カナダやスイス、ドイツ、イギリスなどでは「性的強要」などとして扱われ、刑事処罰の対象となっています。


ただ、日本では現在のところ、ステルシングを罰する法律はありません。ところが、自らが性感染症に感染していることを知りながら避妊具を使用せずに行為に及び、相手を性感染症に感染させてしまった場合は、傷害罪に問われる恐れがあります。


また、女性がコンドームの使用を条件に性行為に同意しているにもかかわらず、強引に生で挿入した場合には、不同意性交等罪に該当する可能性もあります。さらにその結果、性感染症に感染させた場合は、不同意性交等致傷罪に問われることもあり得るでしょう。


■セーフ・セックスすべきこれだけの理由


加えて、コンドームを使用したという事実が、警察の捜査や起訴後の裁判において、男性側の潔白を証明する証拠となることもあります。もちろんコンドームを使用していても不同意性交で逮捕・起訴された事例はありますが、そうしたケースは私の知る限り、少数です。


例えば、被害を訴える女性による「無理やり押さえつけられて逃げられなかった」という主張に、「抵抗する女性を押さえつけながらコンドームを装着することは不可能」と反証することができる場合があります。


さらにコンドームを女性に装着してもらったり、包装から取り出してもらったりすることで、さらに有力な「同意の証拠」を残すこともできます。


性感染症防止の観点からも、法的リスクの観点からもコンドームを使った「セーフ・セックス」を心がけるようにしましょう。


■「遊ばれた」から湧き上がる被害意識


2つ目の「行為の後、すぐに女性と離れる」についても説明しましょう。特にワンナイトでの性行為において、事後にすぐラブホテルを出て解散したり、自宅から追い返したりするケースのことです。こうした行動は、女性に「性欲の捌け口としていいように利用された」と感じさせ、被害感情を芽吹かせることが多々あるようです。


なかでも最悪なのが、ラブホテルなどで性行為の後、眠った女性を残して帰宅してしまうことです。帰りが遅くなると浮気を疑われてしまう既婚者に多いのですが、ラブホテルで独りぼっちで目覚めた女性は、どう思うことでしょう。


反対に、性行為の後にラブホテルを出て最寄り駅まで一緒に歩いたり、車で女性を家に送り届けていたりする場合には、女性から訴えられるケースは稀です。それが一夜限りの情事だったとしても、一定の誠意や配慮を見せることで、女性が事後に不満や幻滅を覚えるリスクは低くなります。


ちなみにこうした行動は、女性の心情にとってだけでなく、警察の捜査や公判でも重要なポイントになってきます。


ラブホテルから仲睦まじく手をつないで出てきたり、朝まで過ごし、一緒にファミレスで朝食を食べたりする行動が、周辺の防犯カメラなどで明らかになれば、女性が不同意だったと主張していても、警察は懐疑的になるでしょう。


写真=iStock.com/PeopleImages
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■いきなり音信不通になるのは危険


最後の「行為の後、女性からの連絡に返事をしない」は、性行為を行った日を最後に、没交渉になっているケースです。


特に初回の性行為の後に男性側から連絡が途絶えた場合、女性は屈辱感や不満を感じて被害意識を芽吹かせることが多いようです。


例えば、交際がスタートする期待を抱いて行為に応じていた女性の場合、「騙された」という思いが湧き上がってくることもあるでしょう。その結果、「もしかして性被害?」と思い始めるケースも少なくないのです。


マッチングアプリで、会うまでは熱心にメッセージを送っていたのに、実際に会って性交渉を持った途端、相手に返信しなくなったという経験をお持ちの読者もいるでしょう。また、性行為の前には下心から甘い言葉を連発していたにもかかわらず、行為後には相手への関心が薄れてしまい、連絡をおろそかにしてしまうという人もいるでしょう。


いずれにせよ、事後に態度を急変させるのはかなり危険です。


■「罰したいという感情」を抱かせない行動


ある会社員の女性は、音信不通になる男性の行為についてこう言いました。


「示談金目当てでもないし、恐喝めいたことをするつもりは一切ないけど、性交渉後にいきなり連絡がおろそかになる男性を感情的に許せない女性は私を含めて多い。どこかで“罰したい”という感情が湧き上がり、抗議の意味を込めて『不同意性交だったよね』と私も男性にメッセージを送ってしまうかもしれない」


女性の心理をそう分析してくれましたが、逆に言えば、最初の性交渉があった後も連絡を絶やさず、デートをすれば女性が怒る可能性は低くなります。


また、2回以上肉体関係を持っていたり、初回の性行為から何度もデートを重ねていたりする場合は、たとえ女性が不同意性交だと訴えても、警察は事件として取り扱うことに慎重にならざるを得ないでしょう。


■誠意ある態度を見せれば、女性も変わる


以前、私はある男性からこんな相談を受けました。「一夜限りの関係を結んだ女性から突然、『私は(性行為の)同意をしてなかったよね?』というメッセージが来た」と言うのです。


その男性はテレビ番組に出演している著名人でした。前夜、女性と性行為をした直後、朝の番組出演のため明け方に自分だけホテルを後にして去っていったそうです。


女性はそれまで男性が著名人であることを知らなかったようですが、朝、起きてテレビを見ると、さっきまで一緒にいた男性が映っているのを見て驚き、連絡をしたとのことです。


私はこの男性に、こうアドバイスしました。


「すぐに2回目のデートの約束をしてください」


彼は私の進言通り、その場で女性を食事に誘い、その後も継続的に食事デートを重ねました。このように、男性が事後にも誠意ある態度を見せたことで、女性が被害を主張することはなくなりました。


実際に会う時間が取れなくても、LINEや電話で連絡をマメにして、返信もきちんとすることで、女性の被害感情が膨らむことを防ぐことができます。


同時に、女性が性被害を訴えた場合にも、男性の潔白を証明するための材料になります。


性加害の被疑事件としてガサが入ったり逮捕されたりした際には、警察にスマホなどの通信機器を押収され、メッセージのやりとりをチェックされます。その際に、女性との円満なメッセージの履歴が残っていれば、潔白を証明するうえで有利に働くはずです。


とにかく肝に銘じてほしいのは、女性をぞんざいに扱うと、法的リスクが一気に高まるという点です。


■芸能人やスポーツ選手は巻き込まれやすい


さらに、罪の認識がないにもかかわらず、性犯罪トラブルに巻き込まれてしまう男性の属性にも、一種の傾向が存在することに気づきました。


職業で言えばまず、芸能人やインフルエンサー、スポーツ選手などの有名人がそうです。女性が被害を訴えた際、加害者の名前や所在がはっきりしているほうが、警察は捜査に着手する可能性が高いからです。一般人でも、ネットやSNSで検索して名前や顔が出てくるような男性は、同様の理由で訴えられるリスクが比較的高いと言えます。


また、有名人を逮捕できれば、社会的にもインパクトを与えるため、被害の訴えがあれば警察も積極的に捜査を行うというのも一つの理由だと思います。


次に社長や経営者、医師や教員、そして弁護士など、社会的地位があり、「社長」、「先生」と呼ばれているような人たちも、性犯罪の嫌疑をかけられることが少なくありません。私の実感では、特に一定以上の規模の会社の経営者が、性加害の容疑をかけられるケースが多いように思います。


これらの職種には、比較的お金に余裕があるためか、派手な夜遊びを好む人も多く、異性との接触が比較的多いということも理由の一つかもしれません。


しかしそれ以上に、ふだん周囲から持ち上げられていることで、「自分はモテる」と調子に乗ってしまっている人も多く、さらに相手の本当の気持ちを察することを怠ってしまいがちであるということが、その背景にあるような気もします。


■公務員や銀行員もリスクが高い


また、富裕層特有のケースが、債務者から性犯罪で訴えられるリスクです。私が知るところでも、200万円を貸した相手の女性とその後、体の関係となった結果、性被害を主張され、慰謝料500万円を求められたという事案がありました。



加藤博太郎『セックス コンプライアンス』(扶桑社新書)

女性は、不同意性交の成立要件の一つである「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益の憂慮」の状況にあったと主張していましたが、男性が弁護士をつけたところ、要求を取り下げたようです。


加えて、学校の教員や警察官、自衛隊員などをはじめとする公務員や銀行員など、オカタイ職業の人も、性犯罪トラブルに巻き込まれやすいと言えます。これはあくまで想像ですが、旧態依然とした組織で働いているせいか、女性との接し方や性交渉に対する考え方もアップデートできていない人が多いのかもしれません。


さらに付け加えれば、これらの職種は全て美人局や虚偽告訴のターゲットとなりやすいということも指摘できると思います。


それぞれ守らなければならない社会的地位もありますし、収入も高い場合が多いので、簡単に示談金を取ることができるとみられているのでしょう。


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加藤 博太郎(かとう・ひろたろう)
弁護士
1986年生まれ。慶應義塾大学法学部(3年時まで法学部首席、飛び級のため単位取得退学)・同法科大学院を卒業後、大手監査法人勤務弁護士などを経て、加藤・轟木法律事務所代表弁護士。「かぼちゃの馬車」「スルガ銀行不正融資」「アルヒ・アプラス不正融資」など不動産投資や仮想通貨など数々の投資詐欺事件の集団訴訟(原告側)を担当し有名に。最近ではサッカー選手・伊東純也氏の性加害疑惑で伊東氏側の弁護を担当。メディア出演も多数。ソムリエの資格も持つ。著書に『セックス コンプライアンス』(扶桑社新書)。
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(弁護士 加藤 博太郎)

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