世界で初めて非直鎖状マグネトソームを有する新奇淡水性磁性球菌FCR-1株の分離・培養に成功

2025年4月21日(月)14時0分 Digital PR Platform


■ 本研究成果のポイント

淡水性磁性球菌*1は、主に淡水環境の堆積物中から最も多く検出または観察される培養困難な磁性細菌として知られていましたが、本研究において世界で初めて培養に成功しました。
培養に成功した新奇淡水性磁性球菌FCR-1株は、直鎖状に配置しないマグネトソーム*2 (非直鎖状マグネトソーム)を有する磁性細菌としても世界で初めての培養株となりました。
FCR-1株は、地磁気を感知するためにマグネトソームを直鎖状に配置する磁性細菌とは異なるため、マグネトソームの新たな機能の発見が期待できます。
また、本研究成果は、FCR-1株の分離源が地理的に隔離された父島であるため、地球上に生息分布する磁性細菌および地磁気を感知する全ての生物の進化の解明に役立つ可能性があります。


■ 本研究の概要
磁性細菌は、リン脂質二重膜で被覆された酸化鉄(Fe3O4)または硫化鉄(Fe3S4)から成る磁性ナノ粒子で構成された細胞内小器官(マグネトソーム)を有する細菌のグループです。多くの磁性細菌は、マグネトソームを直鎖状に配置することで微弱な地磁気を感知し得る磁気モーメントを獲得し、その地磁気に沿って泳ぐことで生育に適した環境に効率よく移動すると言われています(図1)。また、北半球の水環境に生息する多くの磁性球菌は、S極に向かって泳ぐ北指向性の菌であることが知られています。淡水環境に生息する磁性球菌は、主に堆積物中で最も多く検出または観察され、そのマグネトソームの形状、サイズ、数および配置が多種多様であることから多くの研究者から着目されてきました。しかしながら、淡水性磁性球菌は、約40年以上前に発見されたにもかかわらず、培養が非常に困難であったため、これまで培養成功例は皆無でした。本研究では、東京都小笠原村父島の島内にある連珠ダムの堆積物より非直鎖状マグネトソームを有する新奇淡水性磁性球菌FCR-1株を見出し、世界で初めて培養に成功しました(図2)。また、非直鎖状マグネトソームを有する磁性細菌の培養も本研究が世界初となりました。系統解析の結果、本菌はCa. Magnetococcia網Ca. Magnetaquicoccaceae科*3に属する新科相当の培養株でした。また、本菌は非直鎖状マグネトソームを有するため、微弱な地磁気を感知できるかどうか不明です(図2)。そのため、本菌はマグネトソームを他の生物学的な目的で利用している可能性があります。さらに、本菌は分離源が地理的に隔離された孤島であることから、地球上の様々な水環境中に生息分布する磁性細菌だけにとどまらず、地磁気を感知する全ての生物の進化を解明するための一助となることが期待されます。


[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2714/108466/450_188_202504191316196803239304d0f.jpg



[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2714/108466/450_188_2025041913162068032394d0659.jpg






■ 用語解説
*1 磁性球菌
 球状の磁性細菌。磁性細菌とは、酸化鉄または硫化鉄で構成されたナノメートル(nm)サイズ(nmは10-9 m)の磁性体(磁性ナノ粒子)を合成する細菌です。
*2 マグネトソーム
 直鎖状または非直鎖状のリン脂質二重膜で覆われた磁性ナノ粒子からなる細胞内小器官のことです。
*3 Ca. Magnetococcia網Ca. Magnetaquicoccaceae科
 細菌の分類で用いられる学名。Ca.はCandidatusの略称で正式に学名登録されていないことを示します。

■ 論文情報
論文名:
Isolation and cultivation of a novel freshwater magnetotactic coccus FCR-1 containing unchained magnetosomes

著者:
下重 裕一(東洋大学 バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター)
柳澤 圭一(東洋大学 バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター)
宮崎 征行(国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門)
高木 善弘(国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門)
島村 繁(国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門)
野牧 秀隆(国立研究開発法人海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門)
福井 深月(金沢大学大学院 自然科学研究科)
白川 拓輝(金沢大学大学院 自然科学研究科)
小林 英城(東洋大学 バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター)
田岡 東(金沢大学 理工研究域生命理工学系)
前川 透(東洋大学 バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター)

掲載誌:Communications Biology (Nature Portfolio, Springer Nature)
DOI: 10.1038/s42003-025-07981-5
URL: https://doi.org/10.1038/s42003-025-07981-5

■ 問い合わせ先
研究に対する問い合わせ:
東洋大学 バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター 下重裕一
Tel: 049-239-1375
E-mail: shimoshige552@toyo.jp

報道に関する問い合わせ:
東洋大学総務部広報課
Tel: 03-3945-7571
E-mail: mlkoho@toyo.jp

海洋研究開発機構 海洋科学技術戦略部報道室
Tel: 045-778-5690
E-mail: press@jamstec.go.jp

金沢大学理工系事務部総務課総務係
Tel: 076-234-6821
E-mail: s-somu@adm.kanazawa-u.ac.jp






本件に関するお問合わせ先
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