中高年が「ゼロから語学学習」はメリットだらけ…50歳から8カ国語を身につけた男性が経験した人生の大転換
2025年4月25日(金)16時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mrPliskin
※本稿は、宮崎伸治『50歳から8か国語を身につけた翻訳家の独学法』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
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■大学に籍を置けば、中年ニートから逃れられる
学生時代、私は偏差値の高い学校に進学したいがためだけに、英語学習に励んでいました。英語学習の楽しみがわかっていなかったのです。
そんな私も21歳のときに翻訳家になる夢が芽生え、通信教育を3年受講し、27歳から企業内でビジネス文書の翻訳をするようになり、34歳のときに出版翻訳家デビューを果たしました。
しかし当時を思い返せば、翻訳家になった後も「お金儲けにつながるから」と英語を学んでいたにすぎません。
その後も英語力不足に悩まされ続け、ひたすら英語一本の道を歩みました。英語でさえまだまだなのに、他の言語に手を出すなんてもってのほか、という心境でした。
ところが出版翻訳家として働いているうち、私はさまざまなトラブルに巻き込まれ、何度か裁判沙汰になり、とうとう出版業界から逃げ出しました。
ただ、中年ニートになりたくなかった私は、通信教育課程を利用してさまざまな大学に籍を置いて学問に励むことにしました。ニートとは「学業も仕事もしない人」ですが、大学で学んでさえいればニートにはならないからです。
40代の10年間で大学の学位を5つ取得したので、相当な勉強家のように思われることもありますが、中年ニートになることから逃れるために大学に籍を置いていたというのが実情でした。
■40代最後に起こった、人生を変える出来事
そんな大学生活を送っていたある日、人生を変える出来事が起きました。図書館に籠(こも)ってロンドン大学の指定図書にのめり込んでいると、感電するかのような衝撃を受けたのです。
(外国語の本が読めるってすごいことだ。
19世紀に地球の裏側に住んでいた人が書いた本でも、ダイレクトに理解できる。
つまり外国語が読めれば、時空を超えることができる。
でも、外国語の本が難なく読めるには語彙力が必要だ。
逆に言えば、語彙力さえつけば外国語の本が読める。
そうだ、やってみよう。語彙力を徹底的に磨けば、ドイツ語もフランス語も読めるようになるはずだ。そうすれば過去に生きたドイツ人やフランス人とも“対話”ができるのだ)
当時すでに50歳まで残り数カ月でした。
その日以来12年にわたって、1日たりとて外国語学習を怠っていません。
写真=iStock.com/Jae Young Ju
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その間に作った単語カードは約900束。
ドイツ語は大学の第二外国語で履修してはいましたが、フランス語もイタリア語もスペイン語も中国語も韓国語もロシア語もまったくのゼロからスタートでした。
その私を根底から支えた信念は、
「外国語の書籍は語彙力を徹底的に磨けば読めるようになる。外国語が読めれば、過去に生きていた海外の偉人たちとも“対話”ができる」でした。
■50歳から独学で学習を開始しても驚くほど可能性が開ける
現在、保持している資格は、英語は、英検1級やオックスフォード大学英検上級など、20種類以上。
ドイツ語は、独検2級、オーストリア政府公認ドイツ語検定B1レベル。
フランス語は、仏検準2級、TCF・B1レベル。
イタリア語は、伊検3級。
スペイン語は、西検4級。
中国語は、HSK5級、中検3級。
韓国語は、ハングル能力検定5級、TOPIK(韓国語能力試験)1級。
ロシア語は、ロシア語能力検定4級。
各言語のプロから見れば、たいしたことのないレベルだと自認しています。
それでも自信をもって言えるのは、
「50歳から独学で学習を開始しても、中級レベルに到達できる」
ということです。
そして中級レベルに達すれば、驚くほど素晴らしい可能性が開けてきます。
「しゃべれなければ意味がない」と言う人もいますが、そんなことはありません。
普通に生活していたら(仕事で外国語を使う人、または身内に外国人がいる人を除いて)、しゃべらなくてはならない状況はほとんどありません。
学校やサークルに所属しない限り、しゃべる機会などほぼ作れません。東京のど真ん中に住んでいる私自身、英語を話す機会すら皆無に等しいのですから……。
一方、外国語を読んだり聴いたりできれば、いくらでも読んだり聴いたりする機会が簡単に作れます。それによってさまざまなメリットが享受できます。
たとえば、頭が良くなる、人間関係が良くなる、新しいビジネスチャンスが開けてくる……。私が読者に知ってほしいのはその点です。
■学ぶ楽しさは「中級レベル」から急増する
私自身の客観的指標を赤裸々に告白したのは、次の2つの理由からでした。
一つは、私の実力を客観視してもらいたいからです。
「多言語をマスターした」と豪語する人の著作は多いですが、そのほとんどは客観的な指標を示していません。「英検1級」などの検定名も書いていなければ、外国語で執筆した論文名も書いていません。
「この人の実力ってどの程度なのだろうか。何十かのフレーズを覚えて現地の人と会話した言語も含めているのでは?」と思ってしまいます。
そこで私は自分が合格した検定名を示したのです。たとえば「英検1級を取得しています」と、「私は英語ができます」とではワケが違ってくると思うからです。
宮崎伸治『50歳から8か国語を身につけた翻訳家の独学法』(青春出版社)
もう一つは、高齢になってからゼロから始めても、中級レベルに到達できると知ってもらいたいからです。もちろん若ければ若いほどより大きな可能性があります。
中級レベルに達すれば素晴らしい可能性が開けてきます。
実際、私が多言語学習を始めて8年がたつ頃には、多言語学習に関する講演、コラム連載、著書連載などの依頼が次々と入ってくるようになりました。
2014年春には、フランス語の学習参考書を出版できました。
実利を超えたメリットを感じたから始めた多言語学習でしたが、実利的メリットも享受できたのです。「いまさら私が新しい外国語に挑戦したところで……」と諦めなければ、可能性が開けることもある、という実例です。
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宮崎 伸治(みやざき・しんじ)
作家・翻訳家
1963年、広島県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。英シェフィールド大学大学院言語学研究科修了。大学職員、英会話講師、産業翻訳家を経て、34歳で出版翻訳家デビュー。50歳以降に英語だけでなくドイツ語、フランス語、中国語など計8カ国語を本格的に学び始め、現在は英語・翻訳関係の資格20種類以上を含む、137種類の資格保持。おもな語学系の資格は、英検1級、独検2級、仏検準2級、伊検3級、西検4級、中検3級、HSK5級、TOPIK1級、ハングル能力検定5級、ロシア語能力検定4級など。著書『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)、ベストセラーとなった訳書『7つの習慣 最優先事項』(キングベアー出版)をはじめ、著訳書は60冊以上。
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(作家・翻訳家 宮崎 伸治)