「上司の前であくびをする部下」がいたら要注意…「やる気がないから」ではない、ストレスを抱えやすい人の特徴

2025年5月1日(木)7時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

口数が少ない相手の真意を汲み取る方法はあるのか。コミュニケーションの専門家であるパトリック・キング氏は「実は相手の『しぐさ』には、言葉からはわからないメッセージがたくさん詰まっている」という——。

※本稿は、パトリック・キング著、浦谷計子訳『本を読むように人を読む 心理解読大全』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。


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■「なでる」「さする」は自分を落ち着かせようとするサイン


額を触る、首をさする、髪の毛をいじる、手を揉(も)むというのは、すべて、ストレスを和らげるための行動だ。


首は身体の中の弱い部分でありながら、比較的、外部にさらされている。弱い部分はとかくねらわれやすいから、のどや首を急所のように感じるのは無理もない。だから、その弱い部分を無意識に隠したり撫でたりするのは、内面に抱えている葛藤や感情的苦痛、不安の表れだと理解できる。このしぐさは女性よりも男性に多く見られる。


男性はネクタイをいじったり、首の上部を圧迫したりするが、女性は頸切痕(けいせっこん)(首の根元の鎖骨の間にあるくぼみ)に指を当てたり、そわそわとネックレスを触ったりする。


相手のこうした振る舞いに目を向けると、その人が今まさに感じている恐怖や不安が明らかになる。あなたがちょっと攻撃的なことを言ったとしよう。すると相手は少しふんぞり返って、腕組みをし、片手を喉に当てた。そういう場合、あなたの発言が相手にある種の恐怖や不安を引き起こしたと考えられる。


同様に、額やこめかみをさすったり、触ったりするしぐさは、感情的な苦痛や苦悩を表す。指先で何かを軽くコツコツと叩くのは、一時的なストレスの表現かもしれないが、両手で頭を抱えたままでいるのは、極度の苦悩を意味する可能性がある。


抱える、撫でる、さするといった動きは、自分を落ち着かせようとしているサインだと思っていい。たとえば、緊張や驚きを感じると、人は頬を触る、唇をこすったりなめたりする、耳たぶを揉む、髪やヒゲをいじるといったしぐさを見せる。


■あくびもストレス発散反応のひとつ


だが、撫でたりさすったりするだけが鎮静化行動ではない。頬を膨らませてから息を盛大に吐き出すというのも、深刻なストレスを発散しようとするときのしぐさだ。悪い知らせを受けた人や間一髪で難を逃れた人に、よく見られる。


そして、意外なことに、あくびもストレス発散反応のひとつだ。退屈を表すというより、むしろ、ストレスを受けた身体がより多くの酸素をとり込もうとして見せる突然の反応なのだ。動物にもよく見られるだろう。


また、「脚の浄化」と呼ばれるストレス発散反応もある。脚の汚れを洗い流すかのような、ほこりをはらうかのようなしぐさのことだ。テーブルに隠れて見逃しやすいが、もし相手がこのしぐさをしていたら、ストレスを和らげようとしていると考えていい。


「換気」も気づきにくいしぐさのひとつかもしれない。暑さを和らげるようにシャツの襟を引っ張って首回りの通気をよくしたり、肩にかかった髪をはらったりするのがそうだ。不快感や緊張感の表れと考えられる。文字どおり、不快な環境のせいという場合もあるが、内面の緊張やストレスがそうさせている可能性が高い。


■身振り手振りは、身体を守ろうとする無意識の試み


最も分かりやすい鎮静化行動は、ちょうど母親が子どもを落ち着かせるときに見せる行動によく似ている。身体を抱きしめて揺らしたり、寒気を和らげるために肩をさすったりするしぐさは、脅威や不安を感じたり、圧倒されたりしていることを表す。そうやって無意識のうちに自分の身体を守ろうとするのだ。


これはボディランゲージ理論のすべてに共通する重要な原理だが、手足の向きや身振り手振りは、身体を守ろうとする無意識の試みを表している可能性がある。考えてみれば、胴体には生命維持に必要な器官がすべて収まっているのだから、大脳辺縁系が脅威を感じたとき、反射的に胴体を守ろうとするのは当然だろう。たとえ、その脅威が感情的な性質のものであっても、同じ反応が起こる。


相手の要請に応じたくない人や、その要請を攻撃や批判と感じている人は、「うせろ!」とでも言わんばかりに腕を組む。口論の間じゅう両腕を胸の前に掲げているのは、典型的な遮断のしぐさとされる。相手から言葉を投げつけられているように感じて、反射的に身体を守ろうとするのだ。一方、両腕を力なく垂らしているのは、敗北感、失望、絶望の表れだ。「もうだめだ。どうすればいいのか分からない。あきらめた」という内面の感情を身体で物理的に表しているわけだ。


■自信や自己主張を表すしぐさ「とんがり屋根」


デスクを覆うように両腕を広げている人は、なわばりを主張する動物を連想させる。身体を大きく開くしぐさは、自信、自己主張、優越感を表す。両手を腰に当てひじを張って立つ人は、胴体をさらけ出していることになる。つまり、その場を支配しているという自信や、少しも脅威や不安を感じていないことを強烈に示しているのだ。


自信や自己主張を表すしぐさには、世界じゅうの政治家やビジネスパーソンに人気の「とんがり屋根」がある。両手の指先を合わせ、とがった屋根の形をつくるポーズだ。交渉ごとによく見られる典型的なしぐさで、自信、落ち着き、自分の権力や地位への確信を表している。まるで両手を休ませ、静かに次の一手に思いを巡らせているかのように見える。


一方、手を揉んだりこすったりするしぐさは、落ち着きのなさや自分の能力への疑念を表す可能性が高い。それもやはり、緊張を和らげようとする鎮静化行動のひとつとされる。手は変化をもたらしたり、行動を起こしたりするためのツールだが、その手をそわそわ動かす、揉み合わせる、拳を固める、というのは、落ち着きや自信がないか、自信をもって行動できずにいるときのしぐさだ。


■意外に感情が表れる「脚と足」


では、脚と足はどうか。机の下に隠れていることが多いとはいえ、脚と足もやはり強力な指標になる。


幸せなとき、人は軽快な「足取り」を見せる。だが「脚」をそわそわさせながら、他にも神経質な動きや鎮静化行動を見せるのは、過度の緊張とエネルギー、または、いらいらを表している可能性がある。さもなければ、コーヒーの飲みすぎかもしれない。つま先を上に向けると、足が「微笑んでいる」と言われ、前向きで楽観的な気持ちを表す。


生理学的に言って、脚と足は、当然ながら動きに関係している。せわしない脚は、文字どおりの意味か比喩的な意味かは別として、先に進みたいという無言の願望の表れかもしれないのだ!


また、足は、その人が無意識に行きたいと感じている方向に向けられるとされる。両方のつま先を会話の相手に向けるのは、「わたしはあなたと向き合っています。ちゃんと会話しています」というシグナルだが、足を出口に向けるのは、その場を離れたいという気持ちを表す場合がある。


他にも、動きたい、立ち去りたい、逃げ出したいという気持ちを表すしぐさには、膝を抱える、足の母指球(親指の付け根の足裏側にあるふくらみ)に体重を乗せてかかとを上げ下げする、その場で軽く足踏みをする、などがある。


写真=iStock.com/gremlin
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■脚を交差させるのは、身体を守りたいという気持ちの表れ?


いずれの場合も、「もうエンジンをかけた」のだから、あとは走り出すだけ、という無意識の感情を表している。未来の可能性に胸を躍らせていて、できるだけ早く行動を起こしたいという場合もあれば、現状に強い嫌悪感を抱いていて、文字どおり「逃げ出したい」という場合もあるだろう。判断するには、やはり文脈が重要なのだ!


脚と足はネガティブな感情を語る場合もある。腕組みと同じく、脚を交差させるのは、脅威や不快感を遮断して身体を守りたいという気持ちの表れかもしれない。組んだ脚は、好意と信頼を寄せている人物の側に傾きやすく、そうでない人物からは遠ざけられる。脚をバリアのように使って、相手を追い払ったり、歓迎したりしているわけだ。


女性は、相手に気があるとき、つま先に靴をひっかけてぶらぶらさせたり、また履いたりを繰り返しやすい。あまりにフロイト的な解釈は抜きにしても、脚や足を見せるのは、安心感や親密さを表している場合がある。一方、足を組み合わせるのは、ある状況や人物を「心から」嫌っているときの凍結反応のひとつと考えられる。


■相手の動きが「拡大」か「収縮」かを注視しよう


ここまでは顔、手足、胴体をとり上げたが、じつは、まだまだ触れていない部分がある。身体全体の向きや構え、相手との距離のとり方など、注目すべきポイントは山ほどあるのだ。次にあなたが初対面の人と会うときは、少し前のめりの姿勢で握手してみてほしい。さて、相手は全身でどんな動きをするだろう。


写真=iStock.com/seb_ra
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相手が「その場に踏みとどまって」動かないとすれば、現状にもあなたにも安心していて、くつろいでいることを意味する。一歩下がったり、身体と足を横に向けたりする人は、あなたとの距離が近すぎて安心できないのだろう。その逆に、一歩前に出る人は、あなたとの接触を喜んでいて、場合によっては、もっと近づきたいとすら感じているかもしれない。


一般原則はすこぶる明白だ。すなわち、快適なとき、幸せなとき、優越感に浸っているとき、身体は広がり、不幸せなとき、不安なとき、脅威を感じているとき、身体は縮こまる。好きなものには近づき、嫌いなものからは遠ざかる。


相手の側に傾いた身体は、同意、安堵、戯れ、気楽さ、関心を表す。同様に、腕組みをして、顔をそむけ、身体をのけぞらせ、脚を組んでバリアをつくるのは、好ましくないものから逃げ出したいとか、自分を守りたいという無意識の表れだ。


■手足を広げて場所を占領するポーズは、優越感の表れ


ときおり、公共交通機関の中で手足を大きく広げて座っている人を見かけるが、そういう人はリラックスして、安心して、自信たっぷりなのだろう(はた迷惑な行為だが)。その反対に、できるだけ縮こまって、なるべく場所をとらないようにしている人は、自信や確信がなさそうだ。


胸を突き出し、両手でファイティングポーズをとる人は、相手に「どうだ、俺様はでかいんだぞ!」と言っているようなものだ。一方、両肩を上げて亀のように首をすくめている人は、「わたしを傷つけないで! ほらこんなに小さいんですから」と身体で訴えている。


人間は激しい言い争いの最中に自分の胸を叩くことがあるが、だからといってジャングルのゴリラには見えない。だが、注意深く観察していると、わたしたちのそんな原始的な行動にも、それなりに意味があることが見えてくる。


たとえば、先述の手足を広げて場所を占領するポーズは、すべて優越感、自己主張、権威と関係している。腰に手を当てる、背中の側でゆったり手を組む(まるで、威厳のある王や敵の攻撃をものともしない兵士のようだ)、両手を首の後ろに回して椅子の背にもたれるのは、安楽さと優越感を表す姿勢だ。


■「収縮」と「拡大」どちらに属すかを考えてみる


相手のボディランゲージに気づいたら、まず、その行動、しぐさ、姿勢が、収縮と拡大のどちらに属すかを考えてみよう。


顔は開いているか閉じているか。手や腕は大きくゆったりと広がり、身体から離れているか、それとも、身体に引き寄せられて、固く締まっているか。顔の表情は力んでいるか緩んでいるか。顎は上向き(自信あり)か、下向きか(自信なし)か。



パトリック・キング著、浦谷計子訳『本を読むように人を読む 心理解読大全』(KADOKAWA)

目に映るものをどう言葉で表現すればいいか分からないときは、ひたすら観察しよう。目の前の身体は安心したようにくつろいでいるだろうか。それとも、手足に力みや緊張、窮屈さが見られるだろうか。


ボディランゲージを読みとる技は、言われてみれば、むしろ直観的なものだ。じつのところ、わたしたちはみな、もともとボディランゲージに堪能なのだ。言語にばかり向けている意識をしばらく緩めてみると、人と人の間につねに大量の非言語的な情報が流れていることに気づくだろう。


それらの情報は、じつはひとつも隠されていない。わたしたちが、そちらのチャンネルからやってくるデータに注意を向けるよう教わっていないだけなのだ。


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パトリック・キング(パトリック・キング)
会話コーチ
カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするソーシャル・インタラクション・スペシャリスト兼会話コーチ。著書累計は100万部を超え、ソーシャル・スキル、社会心理学、人間行動学に関して世界有数の権威である。GQ Magazine、TEDx、Forbes、NBC News、Huffington Post、Business Insiderなどで著作が取り上げられている。2020年に刊行された『本を読むように人を読む 心理解読大全』(KADOKAWA)は、自費出版ながら29カ国で翻訳が進んでいる。
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(会話コーチ パトリック・キング)

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