トランプ関税で金融政策に「不透明感」…日銀・植田総裁、海外経済の不確実性「極めて高い」
2025年5月2日(金)0時21分 読売新聞
日銀が示した見通し
トランプ米政権の高関税政策が日本の経済成長に影を落としている。日本銀行は1日発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、2025年度の経済成長率見通しを0・5%に引き下げた。2%の物価安定目標の達成時期も先送りし、金融政策を巡る不透明感が増している。
「成長率は少し下振れし、物価上昇率もやや下振れする。伸び悩みの状態に入る」
植田和男総裁は1日の記者会見で、日本経済と物価の先行きに言及した。海外経済の不確実性が「極めて高い」と指摘し、企業の設備投資が伸び悩むことなどを想定。経済成長ペースの鈍化が物価の押し下げにつながるとの判断から、25年度の物価上昇率見通しも2・2%に引き下げた。
トランプ米政権の高関税政策による影響は、国際通貨基金(IMF)が4月に公表した世界経済見通しですでに表れていた。25年の世界成長率は0・5ポイント下げ2・8%に、日本は0・5ポイント下げて0・6%に下方修正。相互関税などの導入が大幅な成長減速をもたらすと指摘した。
さらに民間エコノミスト予測でも直近で、25年度の成長率について節目の1%を切るとの見方が大勢となった。内外の分析と歩調を合わせる形で、日銀は成長率の下方修正を余儀なくされた。
日銀は今回、米国と各国との関税交渉が一定程度進展し、世界のサプライチェーン(供給網)が大きくは寸断されないとの前提を置いたとしている。ただ「各国の政策や企業、家計の対応次第で見通しが大きく変化しうる」とも指摘し、今後の状況次第で見通しを修正する可能性もある。