日銀の追加利上げ、植田総裁「後ずれ」明言避ける…時期巡る市場の見方分かれる

2025年5月2日(金)8時44分 読売新聞

【一覧】日米の主な政治・経済関連の日程

 日本銀行の植田和男総裁は1日の記者会見で、日銀の経済・物価の見通しが実現していくと判断できる場合には、利上げを検討していく考えを改めて示した。ただ、経済・物価情勢の先行きを左右する米国の高関税政策は不確実性が高く、金融市場では、追加利上げの時期を巡って見方が分かれている。(池田晋一、大塚健太郎)

不確実性

 日銀が1日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価上昇率の見通しは2025年度が2・2%、26年度が1・7%、27年度は1・9%となった。25、26年度は1月の前回の展望リポートから下方修正となる。植田氏は会見で、2%の物価安定目標の達成時期について「やや後ずれする」と指摘し、時期は26年度後半〜27年度末になるとの認識を示した。

 一方、追加利上げの時期が後ずれするかどうかについて、植田氏は明言しなかった。米国の高関税政策を巡る不確実性が高く、今後、経済・物価の見通しを大幅に変更する可能性が残っているためだ。

 この点について、植田氏は「(経済・物価の)見通しの確度がやや低い中で、関税を含む諸条件の変化で見通しの変更を迫られるケースも、かなりの確率である」と指摘した。その上で、「(利上げのタイミングは)大きく前後する」と強調し、早期に利上げを検討する可能性も排除しなかった。

 日米間では関税を巡る交渉が続いており、7月上旬には「相互関税」上乗せ分の90日停止の期限を迎える。今後、日銀が経済・物価の見通しを変更する可能性もあり、植田氏は「記者会見などで見通しの変化を丁寧に説明したい」と述べた。

分かれる見方

 日銀は24年春闘以降の高水準の賃上げの実現によって物価安定目標の実現が高まってきていると判断し、これまで段階的に政策金利である短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を引き上げてきた。

 今回の決定会合でも、コメの値上がりなど一時的な要因を除いた「基調的な物価上昇率」が2%に近づけば、それに応じて政策金利を引き上げる考えは維持した。ただ、市場では、今後の利上げペースは緩やかになるとの見方が出ているほか、一部から「今年中の利上げはない」との予想も出ている。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「年内の利上げ可能性は、ほぼなくなった」とみる。米国と各国の関税交渉が妥結しても景気の減速は避けられないとし、「日銀の利上げ時期は、早くても来年の年明けではないか。26年の春闘の賃上げが引き続き高水準になると見込まれれば、利上げの可能性が出てくる」と指摘する。

 一方、農林中金総合研究所の南武志氏は「今後、物価上昇が鈍化するリスクがある」と指摘。日銀が秋頃に利上げを検討する可能性があると見ている。

ヨミドクター 中学受験サポート 読売新聞購読ボタン 読売新聞

「日銀」をもっと詳しく

「日銀」のニュース

「日銀」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ